きゅうりの味付けも人生相談も本質ズバリ 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。認知症があっても人生の先輩である母は偉大ですね。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
母と食卓を挟んで向かい合わせに座っていたので、話題に困ったときは、洋服についてコメントしていた。「髪が短いからシャツが似合うわ」「緑のTシャツは元気そうに見える」「水玉が素敵!」などと明るい声で話しかける。
母は決まって「洋服は持っていないのよ、着た切り雀で困っている」と言うので、「大丈夫、フッションショーができるくらい洋服はあるよ」と洋服ダンスを指差し、安心してもらう。
この会話をくり返しているうちに、母も私の服装を気にかけるようになった。
ある日、白いシャツに水色のスカートを着ている私が大学生に見えたようで、「白いシャツが似合うわ、大学でどんな勉強をしているの?」と聞く。
「日本文学を学んでいます。これからの人生、私はどのように生きていったらいいでしょうか?」と、瞬時に大学生になりきって相談した。
「できるだけ早く好きなことを見つけることよ」。これはいかにも母らしい言葉だった。
認知症があっても人生の先輩。生き方について相談すると本質を突いた答えが返ってくる。
「お母さんは、好きなこと見つけられた?」と聞くと、
「好きなこと? 食べることよ」と答えて笑っていた。
「食べることが好きなら味つけをみてくれる?」と頼むと、気持ちが穏やかなときは、「薄味がいい」と言っていた。きゅうりの和え物は、ほんの数滴のしょうゆで。
きゅうりのじゃこ和え
きゅうりは「板ずり」をすることで表面のイボがとれ、皮もやわらかくなります。小さめの乱切りにすると、ポリポリ、カリカリと音がして食べ応えが出て、食事のアクセントになります。しょうがと大葉の香りと、ちりめんじゃこの塩気だけでおいしい! ポリ袋で和えれば、後片づけが省力化。余ったらそのまま冷蔵庫で保存できます。
材料 作りやすい分量
きゅうり 2本
ちりめんじゃこ 大さじ2(15g)
大葉 3枚
しょうが(薄切り) 3枚
白いりごま 小さじ1/2
しょうゆ 2〜3滴
作り方
- きゅうりはまな板にのせ、全体的に塩をふり、手のひらで転がす(板ずり)
- きゅうりの塩をさっと洗い流して小さめの乱切りにする。大葉としょうがはせん切りにする
- ポリ袋に2とちりめんじゃこ、白ごま、しょうゆ入れて振り混ぜ、10分ほどおいてなじませる