助かる?と母が聞く 二人三脚の皿洗い 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。できなくなったことを憂うより、できることを楽しむ生活は、素敵ですね。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
こだわって使い続けていた二層式洗濯機の操作がわからなくなり、食べ終わった食器は水をかけるだけになった。母ができる家事は、少しずつ消えていった。
お願いできることといえば、食器ふきだ。
「私が洗う人をするから、ふく人をお願い」と頼むと、気持ちよく引き受けてくれる。
私が食器を洗いカゴに置くと、次から次へとふいていく。
時折、「(食器をふいてくれて)助かる〜?」と私に聞いてくる。
このとき「助かるなんてもんじゃないよ、有難や、ありがたやだよ」と、まず感情を伝え、「ごはんを作って、食器を洗ってふいて、食器棚にしまうまで全部ひとりでやったらとっても時間がかかる。ふいてくれたら時間短縮になるよ」と理屈をプラスする。
私が話している間に、母は頭の中を整理しているのだろう。
「買い物をしてごはんを作る人の方がたいへんよね」と、私への気遣いの言葉が出る。
さらに私は「洗う人あれば、ふく人あり。二人三脚だね、昔の人は二人三脚なんてうまいこと言うよね」と続けていく。
そうすると母は「昔の人はえらいよね、物がなくて苦労したのに」と、必ず言う。
これは台所で数えきれないほど繰り返したやりとりだ。
この会話から「物資に困っていた時代の人を尊敬する」という、母が持っている価値観を共有することができた。
子どもの頃、食器は洗う前にトイレットペーパーで汚れをぬぐうようにしつけられた。
皿にあぶらがほとんど残らない豚しゃぶは、ぬぐう汚れも少なく、効率よく食器が洗え、節水もできる。
豚しゃぶ みょうがとトマトのソース
豚しゃぶにはバラ肉よりたんぱく質量の多いロース肉を選びます。沸騰した湯でゆでると固くなるので、80度くらいの温度でゆでて口当たりよく。冷たい食べ物は好まなかったので、ゆでた肉は氷水にさらさず常温で出していました。
材料 2人分
豚ロース肉(しゃぶしゃぶ用) 160g
トマト 1個
みょうが 1〜2本
ぽん酢 小さじ2
オリーブオイル 小さじ2
作り方
- 豚肉は80度くらいの温度で数枚ずつゆでて火を通し、ざるに上げて湯をきる
- トマトはへたと種を除いて角切りにする。みょうがはせん切りにする
- ボウルにオリーブオイル、ぽん酢、トマトを入れて混ぜる
- 器に1の豚肉を盛り、3をかけてみょうがをのせる。