誰でも居酒屋

飲み仲間とギャグで大爆笑。認知症になっても変わらぬ、宴の盛り上げ役

「誰でも居酒屋」で飲み仲間と談笑するかずひこさん
「誰でも居酒屋」で飲み仲間と談笑するかずひこさん(写真左から2人目)=清川卓史撮影

認知症の人も、そうでない人も、飲み仲間として語り合える。そんな飲み会が「誰でも居酒屋」だ。東京・池袋周辺で月1回。会費は3千円、お酒は2~3杯まで。小ぶりの飲食店を貸し切りで、という日が多い。いろんな人が顔をだして、結構繁盛している。今回は、飲み会のムードメーカー、かずひこさん(67)のことを書きたい。

家族思いのムードメーカー

「うまい、最高っ」
ジョッキのビールを手にした一声で、飲み会の雰囲気がパッと明るくなる。
かずひこさんは「誰でも居酒屋」の欠かせぬムードメーカーだ。

少しお酒がまわって調子がでてくると「ギャグ」も飛び出す。
ときには「認知症? もう治った。完全完治のカンチくんだよ。おだゆーじっ」と、びっくりするような(かつ、ある世代以上にしか意味がわからない)冗談を言うときも。そして、同じ認知症の飲み仲間から「治らないでしょ」と突っ込まれている。

これって笑っていい場面なのか、ダメなのか。一瞬戸惑うが、豪快なかずひこさんの笑いにつられて、私も一緒に笑っている。

かずひこさんは現役時代、大手化粧品会社の第一線で働いていた。ご家族によると、当時からお酒の席では豪快で、自ら3枚目を演じて場を盛り上げる役回りだったそうだ。

認知症になっても、飲み会でのかずひこさんは変わらない。

「気の合う人としか飲まない」が信条だ。「ここはユーモアのわかる人が集まっている。いろいろ騒ぐのがやっぱり楽しい。気楽に明るくしていたほうが認知症にもいいことじゃないかと思うし」

RUN伴(ランとも)の打ち上げで乾杯するかずひこさん
RUN伴(ランとも)の打ち上げで乾杯するかずひこさん(写真左奥)=水野隆史さん提供

1人で温泉地に旅行に出かけたり、趣味の切手コインの収集のために都内のあちこちをまわったり。普段からマイペースで暮らしを楽しむ。

ただ3年前に発症した直後は状況が違った。
ひとりで病院に行けず、お風呂にも入れないような時期があった。かずひこさんの病名は「ピック病」(前頭側頭型認知症の一つ)と呼ばれている。病気の症状のために本人や家族が苦しんだ、いくつかの出来事もあった。

そんな時を越えて、飲み会での陽気なかずひこさんがいる。
「昔の彼に戻ってくれて、奇跡のようなありがたい時間。このままの状態を維持してくれたらなと思います」。ご家族はそう話してくれた。

かずひこさんに、今後の希望や目標は、とたずねてみたことがある。
答えは、どちらも家族とその暮らしへの思いから出た願いだった。

「自分が生きていれば会社から年金がでる。だから、きちんと生きる。それがひとつ」
「(調子が悪かった時期に)ひげそってもらったりして、ずいぶん家族に迷惑をかけた。もう、そういう思いをさせないように心がけたい」

ご家族によると、かずひこさんは家ではあまりお酒を飲まず、体調管理に気を遣っているそうだ。

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