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『サマー学童』@品川~BLGの活動報告

一緒にランチ
一緒にランチ

認知症の人と「ともに生きる拠点づくり」を進める100BLGは、同じ思いを持つ全国各地の事業所とともに「学び合いのプラットフォーム」となるネットワークをつくっています。各事業所は、それぞれの土地柄や文化に合わせたかたちで運営されています。今回は、東京都品川区にあるBLG品川(けめともの家・カンタキ西大井 看護小規模多機能型居宅介護)からの報告です。

BLG品川の竹内です。
メンバーさん同士が互いに気にかけ合う、そこに集う者たちが素でいられる居場所。
相手のためにできることを探し続ける仲間が集う場所。
想いをカタチにできる場所。
そんな場所がBLG。

看護小規模多機能ホーム、保育園が一体となった「けめともの家」では、地域の方々も交えて、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもたち、多世代が集う日常があります。
今回は、暑さが記憶に残るこの夏に、メンバーさんと取り組んだ「サマー学童」をご紹介します。
BLG品川では、駄菓子屋さんをやっています。
地域の子どもたち、子どもと一緒にお父さん、お母さん、おばあちゃんたちも駄菓子を買いに来てくれます。

そして、時には、メンバーさんたちとカードゲームをしたり一緒におやつを作って食べたり、掃除を手伝ったりといったことも(笑)。
多世代が関わる機会につながっています。

そんな地域交流の中で、去年の夏休み、1人のお子さんを預かったことがありました。
ご両親はお仕事。娘さんを1日中1人で家に留守番させるのは心配だから、BLG品川でボランティアをさせてほしいというお話があって、小3の女の子が通ってきていたんです。

そんな経験から、夏休みは困っている親御さんがおられるだろうなと、考えました。
もちろんメンバーさんに相談です。
「いいんじゃないの」

そこで、今年は「サマー学童」とネーミングして子どもたちを募ってみました。
夏休みに子どもたちだけになることで心配なご家庭や、社会勉強させたい親御さんなど、2週間で18人の応募がありました。
多い時には、1日に4人のお子さんたちが、やって来ました。
メンバーさんと翌日に来る子の名前や年齢を確認して、昼食の献立を決めたり、スケジュールを組んだりして準備しました。
実際には、当日になるとほとんど別のメニューになっていましたけど(笑)。

園児のお兄さん、お姉さん的な役割として、ビニールプールに入るのを一緒に手伝ったり、
おじいちゃん、おばあちゃんとお昼ご飯を作って食べたり、
宿題をしたり、お昼寝したり(笑)。

一緒に電車を作ろうよ!
一緒に電車を作ろうよ!

サマー学童の一日は、こんな感じでした。
「〇〇くんお昼何にする?」
「マックポテト、家では食べられないから」

マックポテトを買ってきても良かったのですが、そんな時は、ジャガイモでフライドポテトを作ります。
揚げたてアツアツのポテトは最高、みんなでつまみ食いが止まらず、メンバーさんもランチ前におなかいっぱい、なんてことも。

園児とプール遊びの後は、メンバーさんと競ってお風呂へ。
女子3人で仲良く湯船につかる様子をメンバーさんとほほえましく眺めます。
ご自宅に帰りたいとおっしゃることが多いメンバーさんも、この日は、子どもにせがまれて工作づくりをされていました。
すっかり意気投合して、帰りたいことを忘れておられました。

答えあっている?
答えあっている?

駄菓子屋さんのお会計担当メンバーさんが「どれっ」と子どもの計算宿題プリントに丸つけしていると、
昔のおもちゃを引っ張り出して、メンバーさん対小学生のけん玉対決が始まりました。
子どもたちが高齢者にもたらす影響は絶大です。
認知症のある方も子どもの前では、おじいちゃん、おばあちゃんになります。
おじいちゃん、おばあちゃんとしての役割ができます。
存在の役割。それは対象である子どもがいてのことです。

子どもたちが帰ったあとは、「疲れたわー」と、お茶を一服。
メンバーさん、頑張ったんですね。

互いに互いを気にかけ合う地域社会をつくるために多世代をつなぐことが大事だと思っています。
子ども、保護者、いろいろな世代のスタッフ、高齢者と、多様な世代から学ぶべきことがあります。
個人は家庭の中で生活し、地域の中で生きています。そして、地域が社会をつくります。
人は1人では生きてはいけません。影響し合っています。

生きることを共にする、生きるために共にいる、それが「共生」であると思います。
メンバーさん同士が、気にかけ合って、手をとって移動の手伝いをしたり、
介助が必要なメンバーさんの食事を口に運んであげたり、
トイレを教えてあげたり。
認知症のメンバーさん同士が困っていることを助け合っています。
認知症を互いに理解しています。
互いが互いの社会資源になっています。

認知症であっても、障害があっても、どんな性格であっても、価値観が違っても、その多様性を認め合う人を増やしていく。
そのためにメンバーさんたちと、いろんな地域の人たちとつながって、彩りのある生活を楽しみたいと思います。
メンバーさんのおじいちゃん、おばあちゃんの役目は今日も続きます。

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