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【編集長オススメ】『家族でそなえる防災・被災ハンドブック』

『イラスト・図解でまるっとわかる!家族でそなえる防災・被災ハンドブック』 /編集長オススメ
『イラスト・図解でまるっとわかる!家族でそなえる防災・被災ハンドブック』 /編集長オススメ

今年もまた、東日本大震災が発生した3月11日が近づいてきました。そして、世界に目を転じれば、2月6日にはトルコ・シリアを大地震が襲い、救援活動が続けられています。改めて、「災害対策しなくちゃ」「備蓄品は大丈夫かな」などと考えをめぐらしているかたも多いのではないでしょうか。そんなときに大いに役立つであろう本「イラスト・図解でまるっとわかる!家族でそなえる防災・被災ハンドブック」が出版されました。著者は、なかまぁるで好評の松本一生先生による連載「認知症が心配なあなたへ」のイラストを描いて下さっている天野勢津子さんです。

天野さんは兵庫県在住で、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災を経験されています。
発災当時、家の中にいてタンスが倒れてきましたが、対面にあった机がタンスを支えてくれたおかげで命拾いをしたとのこと。そうした経験から、防災について強く関心をもつようになり、2017年には防災士の資格を取得され、イラストレーターとして活躍される一方で、防災に関する記事もWebサイトや情報誌などで執筆されてきました。

新たに出版された本では、しっかり者の会社員の真守かなめさん(31)、その姉でのんびり屋の日々のどかさん(37)とその夫、子どもを登場人物に、備えておくと良いことや災害発生直後の対応、被災後の暮らしやお金で知っておくべきことなどが、ふんだんなイラストともに6章でまとめられています。なんとなく防災について意識はしていて、防災袋も用意しているものの、なかなか自分ごととして災害を考えられていない、のどかさんに対して、かなめさんが“突っ込み”をいれていくことで重要なポイントをチェックしていきます。

離れて暮らす家族のために、帰省中にできること
離れて暮らす家族のために、帰省中にできること

事前の備えについては、防災の観点からだけでなく、被災することも想定し、その後の生活を見据えた内容になっています。被災経験がある天野さんならではの「非常用トイレは、価格だけで選んでは絶対ダメ。防臭性や処理のしやすさが選ぶポイント」「備蓄食料は、食欲が落ちているときでも食べやすいように食べなれている“ふだんの味”がおすすめ」といったアドバイスも随所にあります。また、離れた所に暮らす高齢の親を守るために、帰省をした際にできる支援策についてや、高齢者だけでなく妊婦や乳幼児、障がいを持つ人などの要支援者(要配慮者)がいる家庭向けの注意点もまとめられています。

発災直後、どのように行動すれば良いかを記した章では、避難するときの服装や避難所に避難できないときの対処法、車中泊・テント泊を快適に暮らす方法なども紹介されています。
さらに、被災生活での「からだとこころの健康管理」や「お金」に関する情報も充実しています。そこに込めた思いについて、天野さんは「被災直後は、緊張感などもあって乗り越えられても、その後に長い被災生活が続きます。日々、お金は必要になるし、心がしんどくなっていく人もいるはずです。自分を守ってあげられるのは自分です。そのために役立ちそうなストレス対策としてのストレッチ法やツボについても盛り込みました」と話してくださいました。
最後には、京都大学防災研究所の矢守克也教授の協力を得て、ゲーム型の防災教材「クロスロード」の紹介や、防災・被災時に役立つウェブサイトがQRコード付きの一覧表としてまとめられています。

「災害に立ち向かうには、命を守る備えは絶対に必要。それだけではダメで、被災後、非日常が日常になっていく中で、なるべく快適に暮らすためのノウハウを知っておくことが大切」と、天野さんは自らの経験を踏まえて強調されます。そして「とにかく、災害にあっても無事に生きのびて、元気に暮らし続けて欲しい。この本がその一助になってくれれば」とメッセージを寄せてくださいました。

災害時に一人で避難したり、避難生活を送ったりするのが難しい要支援者(要配慮者)への対応も考えておく必要があります
災害時に一人で避難したり、避難生活を送ったりするのが難しい要支援者(要配慮者)への対応も考えておく必要があります

【著者は…】

天野勢津子さん似顔絵
天野勢津子(あまの・せつこ)
防災士・イラストライター
イラストレーターとして多様なタッチで挿絵からグッズデザインまで手掛ける一方、ウェブや雑誌で連載を持つライターとしても活躍。イラストレーターとしてのキャリアは20年に及び、作画、装画の近作に「変わるもの 変わらないもの」(ルアナパブリッシング)、「じいちゃん、出発進行!」(クリエイツかもがわ)、著作に絵本「兵庫と東北、つながってんねん」(兵庫県立男女共同参画センター)、絵本「カリンのあたらしいおうち」(明石市コミュニティ推進部)がある。
矢守 克也(やもり・かつや)
京都大学防災研究所教授
主な著書・共著書に、『防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション』(ナカニシヤ出版、2005)、『〈生活防災〉のすすめ』(ナカニシヤ出版、2005)、『防災人間科学』(東京大学出版会、2009)、『アクションリサーチ』(新曜社、2010)、『ワードマップ:防災・減災の人間科学』(新曜社、2011)など。災害体験の聞き取りやゲームを道具として防災の知恵を伝えるなど、アクションリサーチ(実践研究)を通じて、防災人間科学の確立に向けた研究を行っている。

【書籍データ】

  • タイトル:『イラスト・図解でまるっとわかる!家族でそなえる防災・被災ハンドブック』
  • 作・絵:天野勢津子(あまの・せつこ) 協力:矢守克也(やもり・かつや)
  • 判型:四六判
  • 頁数:168頁
  • 価格:1400円+税
  • 発売日:2023年1月13日
  • ISBN:978-4781621579
  • 発行:イースト・プレス

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この連載について

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