お餅をのどに詰まらせた!急性アル中!?そばにいる人ができる対応策
お正月というと、毎年、どうしても起こってしまうのが、高齢者がお餅を詰まらせて救急搬送される事案です。ときには、命を失うことになってしまうこともあります。また、久しぶりに会った人々との会食で、ついついお酒を飲み過ぎてしまい、急性アルコール中毒になって救急搬送されるといったことも後を絶ちません。こうしたことを防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。救急医療に詳しい志賀隆・国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)に教えていただきます。
お餅をのどに詰まらせたときや急性アルコール中毒になったときの対処法について執筆してくださるのは……
- 志賀隆(しが・たかし)医師
- 1975年、埼玉県生まれ。千葉大学卒、米ハーバード大学大学院卒、医学博士、公衆衛生修士、日本救急医学会救急科専門医・指導医。米メイヨー・クリニック、同ハーバード大学マサチューセッツ総合病院、東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て21年4月から国際医療福祉大学医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)。救急や医学教育関連の著書・論文多数。
お餅をどのに詰まらせないようにするには
お正月といえば、餅つきにお雑煮。みんなでお餅を味わいたいというかたが多いかと思います。ただ、毎年、お餅を食べてのどに詰まらせたことで窒息をして救急車で運ばれるご高齢の方がいらっしゃいます。こうしたことを防ぐため、どうやったら安全にお餅を食べることができるかについて考えてみたいと思います。
主なポイントは3つです。
- 1cm角など小さく切って食べる
- 水分と一緒に食べる
- 1人で食べない
1cm角など小さく切って食べる
お餅は粘り気があり、もともとのサイズは数cmはあります。息の通り道である気管は、大人で直径2cmほどとされています。つまり、それより大きなものが通ろうとすると、息が詰まってしまうことになります。通常であれば、詰まりそうになると人は吐き出すのですが、お餅は粘り気があるため、より大きな力が必要となります。特に、高齢者や小さな子どもは、その力が小さく、うまく吐き出せないといったことが生じてしまうのです。ですので、お餅を1㎝角ほどに切っておくと、詰まりにくくなります。
また、救急医が気道確保の際に使っている気管挿管の際のチューブは大人では内側が7~8mmとなっています。それから考えると1cm程度に切って食べれば、たとえ詰まったとしても、気管の残りのスペースに気管挿管のチューブを挿入することができるため、気道を確保することができ、窒息する可能性を下げることができます。
水分と一緒に食べる
お餅は柔らかくて粘り気があることが魅力だと思います。ただ、その粘り気が医療関係者にとっては「恐怖」となります。サイズが大きくて粘り気があるものが気道の入り口に詰まってしまうと「窒息へ直結」となってしまいます。ですので、小さく切ったものをお茶やお汁と一緒に食べていただけると詰まったお餅が「動きやすい」状態にすることにつながります。
1人で食べない
お餅はおいしいし、朝起きたときに1人でも食べたくなるかと思います。しかし、窒息の危険性が極めて高いものです。
詰まってしまったときには、助けてくれる人が、苦しんでいる人のオヘソの上に両手を当てて「後ろ側・上側」に圧迫する『ハイムリック法』と背中の肩甲骨と肩甲骨の間を手でたたく『背部叩打法』で対応します。ただし、ハイムリック法は、妊婦や高度な肥満の方、小児では内蔵を損傷する可能性があるため避けてください。
いずれの方法も、1人ではできません。そのため、はやる気持ちを抑えて1人で食べることはやめていただけたらと思います。
ハイムリック法
- 1:患者の後ろに回り、ウエスト付近に手を回す
2:一方の手で「へそ」の位置を確認する
3:もう一方の手で握り拳を作って、親指側を患者のへその上方、みぞおちより十分下方に当てる
4:へそを確認した手で拳を握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる
※ハイムリック法を行った場合には、腹部の内臓を傷める可能性がある。救急隊にその旨を伝え、すみやかに医師の診察を受ける
背部叩打法
- 患者の後ろから、手のひらで、左右の肩甲骨の中間辺りを力強く何度もたたく
掃除機については?
お餅が詰まった際に吸い出すために掃除機の先細(隅用)ノズルが有用であったという報告もあります。また、通常の掃除機の先に装着して異物除去に使用できる救命救急用のノズルも市販されています。通常の掃除機のノズルでは大き過ぎて、先をあてても効果はあまりないと思われますが、専用の製品であれば効果が期待できると考えられます。嚥下(えんげ:飲み込む力)に心配のある方がいらっしゃるご家庭や嚥下障害のかたが多くいる高齢者施設では、こうしたノズルを常備しておくこともご検討されてはいかがでしょうか。
急性アルコール中毒を防ぐには
年末年始で、家族や親族などが集まってお酒を飲むのは楽しいことです。ただ、お酒の量が多いと、お酒自体で体調が悪くなってしまうことや、転んでけがをしてしまうこと、声が大きくなって新型コロナウイルスなどに感染してしまうといったことが考えられます。そのため飲酒の量については考えていただければと思います。
どれくらいなら適量なのか?
アルコールの量が多いと、血中のアルコール濃度が高まります。すると、脳の中で本能や情緒活動などをつかさどっている部分の働きが活発になり、感情があらわになってきます。そうしたことから、通常ならばしないような対応や行動をし、ケンカなどのトラブルになって年末年始に病院にお越しになる方は多いです。それが、社会的にも、その人にとっても取り返しのつかないような事態になることもあります。トラブルを避けるためにも、「お酒は3杯程度までとすること」とするのはいかがでしょうか。
特に、お酒をいつも飲まない方は注意です。米国のNational Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism(国立保健研究所傘下のアルコール乱用と依存症に関する研究所)では、1回の飲酒時に5杯(女性は4杯)以上の飲酒をしてしまうと急性アルコール中毒になるとしています。急に血中アルコール濃度が上がると意識がなくなったり、呼吸がとまってしまったりして危険です。一度に5杯以上というのはこの危険な量にあたるのです。日本人の身長も体重もアメリカの方々より少ないのが一般的です。そのため救急医の私は、日本のみなさんならアルコールは4杯を目安にしたほうがいいとオススメしています。
同じお酒だって濃度が違うから1杯の効果が違うのではと思う人も多いかもしれません。ただ、実際には大体1杯に15~18ml程度のエタノール(アルコール)が含まれようにそれぞれのグラスが工夫されているものなのです。ビール350mlには17ml、ワイン150mlには16.5mlのアルコールが含まれているといった具合です。
参照(英文): 米国のNational Institute on Alcohol Abuse and AlcoholismのHP
こうなったら急いで救急車を呼んで欲しい
- ・呼びかけても反応しない、痛みの刺激にも反応しない場合
・顔色や手足の色が悪くなっている場合
・吐いてしまって、呼吸の際にヒューヒューなど音がしている場合
・体が冷たくて体温が非常に低下していることが疑われる場合
こうした場合には、呼吸を補助する処置や保温の必要性などがあると考えられるため、急いで救急車を呼んで下さい。
救急車が来るまでですが、「回復体位」という体位をとるようにしてください。
具体的には、倒れている人(傷病者)の下になる腕を前に伸ばし、上になる腕を曲げ、その手の甲に傷病者の顔を乗せるようにします。
参照:消防庁「一般市民向け 応急手当WEB講習」の「回復体位」の説明(動画有り)
救急隊員が到着したときに、伝えるとよい事柄としては、以下のようなものがあります。
- ・意識はどのよう感じか?呼びかけに反応するか?
・呼吸は弱くなったり、ヒューヒュー音を立てたりしていないか?
・変ないびきはしていないか?
・飲酒はどれくらい飲んだのか?普段から飲む人か、そうではないのか?
・ころんだりしていないか?血が出ているところはないか?
二日酔い予防にはどうするか?
急性アルコールにはならなくても、二日酔いに苦しむ人は多くいます。その予防法もお伝えしておきます。
1:睡眠をしっかりとる
お酒を飲んで寝てしまうとお酒自体の作用に加えて、いびきをかいて睡眠の質が下がるといったことがあり、十分な睡眠がとれません。普段どおりの睡眠時間だと頭痛であったり、疲れが残ってしまう可能性が高いです。睡眠不足は体調不良や頭痛の原因となるため、普段以上に睡眠時間を確保することをおすすめします。
2:朝食をしっかりとる
アルコールは作用として血糖値を低めることが知られています。肝臓が糖をエネルギー源とし、アルコールを処理しているのがその一因です。また、アルコールの分解にも糖が必要です。低血糖そのものは頭痛や気分不快の原因になります。
3:抗炎症薬を服用する
抗炎症薬そのものがアルコールの分解に関係するわけではないのですが、二日酔いの頭痛や気分不快が抗炎症作用のあるお薬で減ることは分かっています。成分でいうとイブプロフェンなどで、NASIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)と呼ばれる一般的な頭痛や鎮痛剤お薬で大丈夫です。飲酒前と就寝前に服薬するとよいでしょう。活用してみてください。
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