解決!お金の困りごと

\新連載/親も自分も高齢になってからでは遅い?お金に関する備えとは

ライフプランニング

自らも、親も、年齢を重ね、生活にも様々な変化が訪れる中高年世代。大きな心配ごとの一つが、「お金」にまつわることではないでしょうか。「親が急に入院したら……」「老後の住まいはどうしたらいいのだろうか」など、今から、考え、備えておきたい、お金に関する困りごとについて、解決策を探る新企画を始めます。初回となる今回は、高齢になっても安心、安全に財産管理や契約など経済活動を円滑に行える社会の実現に向けて取り組む一般社団法人「日本意思決定支援推進機構」の成本迅・代表理事(京都府立医大教授)にお話をうかがいました。

――高齢になったり認知機能が落ちてきたりすると、お金に関してどのような困りごとが増えてくるのでしょうか?

税金や年金、保険といったお金に関する手続きは、現役で働いているときは勤務先がやってくれることが多いですが、退職後はたちまち全部自分でやらなければならなくなって大変です。さらに加齢とともに認知症も含めてさまざまな病気にかかりやすくなりますから、治療や住まいをどうするかなど重要な決断をする機会もおのずと増えますよね。中でもお金関連の意思決定は、認知症が進行すると難しくなるというところが最大の問題と言えるかもしれません。また、認知症などで理解力や判断力が低下すると、それまでに自分で用意してきたお金や金融商品があったとしてもうまく使いこなせないということも起きてきます。

――そうなったときのために、どのような備えをしておくべきですか。

お金にかかわる備えでは、「知識」が力になります。まずは介護保険や医療保険といった「公的なサービス」の仕組みをよく知っておくこと。介護保険であれば、必要となったときには、どのような手続きが必要で、役所のどこの部署に申請するのかといった道筋を、シミュレーションしておきましょう。
民間のサービスは営利目的の面もあります。「公的なサービスでどうしてもできないことが出てきた時に民間を使う」といった順序で考えればいいと思います。

――さまざまな支払い、とくに突然の入院など急にお金が必要になった時には、慌ててしまいがちです。

入院に関してはそれこそ公的な制度を知っておくことが大事で、「高額療養費制度」(ひと月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度)を使えばいきなり数百万円の請求が来るということはないので そこまで焦る必要はありません。
とはいえ、大きな出費が必要になった時に親が払うのか、あるいは子が払うのか、子どもたちの中で誰が払うのかといったことを、親とできれば子どもたち全員で事前に話し合っておいたほうがいいでしょう。
親には金融資産をできるだけシンプルにしておいてもらうといいですね。口座数を減らしたうえで、通帳の場所を把握しておく。子どもでも預金を引き落とすことができるように、代理人カード(金融機関が、口座名義人本人と生計を共にする親族を使用者として発行するキャッシュカード)を作っておくというのも一つの方法です。

【ポイント】
・保険にかかわる公的サービスの仕組みをシミュレーションしておく
・まずは公的サービスを利用する。足りないところを民間サービスで補う

――高齢者の中には資産を増やしたいあまり、投資詐欺に引っかかったり、ハイリスクな金融商品に手を出してかえって資産を減らしてしまったりする方も少なくありません。

「お金を増やしたい」という思いは高齢になろうとずっと続くものですし、資産形成のことは子どもに知られたくない、とやかく言われたくないという方も少なくありません。「生活に影響が及ばない範囲で」という投資の基本が大事で、それを守ってやるのであれば、投資をしても良いのではないでしょうか。
また、お金を増やすことに関しては「それまでの経験」が重要です。社会的なスキルや対応能力は50歳をピークに下がっていくと言われていて、50歳の段階である程度運用の経験があるなら余力でやっていけるかもしれませんが、50歳を過ぎてから新たに始めるのは難しい。リスクが高いことは避けた方が賢明でしょうね。

貯金箱

――高齢期の「住まい」に関して、考えておいた方がいいことはありますか?

将来どの病気になるかによって生活が大きく変わるので、それに合わせて住まいも変える必要が出てきます。たとえば脳梗塞(こうそく)で半身まひになったら暮らしやすいように住宅を改修したり、頻回の透析が必要になれば透析を受けられる病院の近くに転居しなければならなくなるかもしれません。
とくに人生の最終局面において、ほとんどの人は施設入所も含めて住み替えが必要になるのが現実です。突然死とか、あるいはがんのように予後のはっきりしている病気であれば「自宅で最期まで」という可能性はありますが、腎不全や心不全、認知症のようにゆっくりと体の機能が低下していく慢性の病気の場合、住み慣れた家での在宅生活はどこかで限界がくる可能性が高いです。

――将来のお金や住まいなどについて、事前に親子で話し合っておく必要がありますね。

そうですね。まずは、ふだんから親子間の関係性を良い状態に保っておくことが大事です。親は「なにかあったときは、ここに、このように整理してあるから」ということを子どもたちに話しておく。子どもは定期的に親の顔を見に行くなどつながりを保ちましょう。良い関係は、いざというときに一番の助けになります。

子どもから親にお金や住まいの話を切り出すのは難しいものですが、身近な親戚の事例や芸能人の話題に絡めて、「Aさんのところでは親子のコミュニケーション不足で骨肉の争いになっちゃって大変だよね」などと切り出すと、案外スムーズに話が進むことがあります。「認知症」という言葉に抵抗を感じる高齢者は多いので、「将来、認知症で判断ができなくなったら……」と話すよりも、「脳梗塞になって意識がない状態で運ばれたら……」というほうが、受け入れてもらいやすいかもしれません。

高齢の親を抱える子にとっては「なにかあったときの相談先」を確保したりしておくことも安心につながります。風邪をひいた時に診てもらっているかかりつけ医でもいいので、「実は、この前、親が認知症と診断されて…」などとちょっとした相談ができる医療関係者の知り合いがいると心強いですよね。地域の相談窓口となる「地域包括支援センター」を調べておくとか、何かの手続きで役所に行ったときに介護保険などを担当する課の場所を確認しておくのもお勧めです。

【ポイント】
・資産運用は経験値が重要。50歳過ぎから新たに始めるのはリスクが高い
・ほとんどの人が、人生の最終局面で住み替えが必要になる。元気なうちに家族に意思を伝えておく

成本迅先生

成本迅(なるもと・じん)
1971年奈良県生まれ。95年京都府立医科大学医学部卒業。現在、京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学教授。専門は老年精神医学。主な著書に『実践! 認知症の人にやさしい金融ガイド―多職種連携から高齢者への対応を学ぶ』(クリエイツかもがわ)『認知症の人の医療選択と意思決定支援』(クリエイツかもがわ)など。

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