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「いまから話そう、認知症」

認知症の両親ダブル介護 岩佐まりさんが考える前向きになるための「備え」

若年性アルツハイマーの母親を介護するフリーアナウンサーの岩佐まりさんが、桜が大好きな母親を連れて公園にお花見に訪れたときの様子=2015年4月撮影、提供写真 
桜が大好きな母親を連れて公園にお花見に訪れたときの様子=2015年4月撮影、提供写真 

フリーアナウンサーの岩佐まりさん(37)の介護生活は、8年目に入りました。50代でMCI(軽度認知障害)と診断された母親に加え、昨年、父親も認知症と診断され、ダブル介護が始まりました。認知症介助士などの資格を持ち、介護の日常をつづる人気ブロガーの岩佐さんに、MCIにどう気づいたのか、どのような「備え」が必要なのか聞きました。

MCIになかなか気づけなかった

――お母様が50代のときに、もの忘れ症状が始まったそうですね。

おかしいなと気づいたのは母が55歳のときでした。仲が良かったので、大阪の母には当時住んでいた神奈川から毎日電話をしていました。ある日、同じことを繰り返したり、電話を切った5分後にまたかけてきて「元気にしている?」といってきたりするようになって、同居する父に電話してみました。やっぱり「何かおかしいんだ」と。大阪に戻って母と話すと、「何がおかしいの?」という感じでしたが、その後の様子を思い返すと鍋を焦がすなど失敗が続いて母も内心では混乱しているようでした。

――医師からはどのような診断を受けたのですか。

私も知識がなくて認知症とは思わなかったし、インターネットで毎晩のように症状から可能性がある病気を検索していました。受診ももの忘れ外来の医師にたどり着くまでに2年ぐらいかかり、そこで初めて「MCI(軽度認知障害)」と診断を受けました。帰り道、母はショックで泣き崩れましたが、私はショックでしたが病名がわかり安心できた面もありました。治療にしても今後の対応にしても、方法があるだろうなと前向きになることができました。当時の私はMCIについてまったく知りませんでした。でも、いまの私ならMCIでもサポートがあれば仕事もできるし、新しいことにチャレンジもできると考えられます。

――岩佐さんやお母様、ご家族はどのようにして、MCIや認知症を受け入れていったのでしょうか。

怒ったりイライラしたりしてけんかすることもありました。でも母がすごく悲しい顔をするんです。その顔を見て、こんなことをしていたらだめだ、と。母を悲しませるんじゃなく、母のために何ができるんだろうと考えるようになりました。それで色々な場所に出かけました。旅行にも行きました。病気の進行は人それぞれですし、できないことも人それぞれなんです。いまできることを見て、できなくなったことをサポートしてあげればいいと思っています。

若年性アルツハイマーの母親を介護するフリーアナウンサーの岩佐まりさんは母親がMCIと診断を受けた後も、これまで通りショッピングに出掛けていたという。写真はその際に撮影したプリクラ写真=2007年頃撮影、提供写真
母親がMCIと診断を受けた後も、これまで通りショッピングに出掛けていたという。写真はその際に撮影したプリクラ写真=2007年頃撮影、提供写真

母のもしものときの「備え」。しかし……

――ご両親は、病気などにどのような「備え」をされていましたか。

生命保険と医療保険は、母も父も四つくらい加入していましたが、MCIや認知症の保険ではありませんでした。認知症保険というものができたと知ったときはひっくり返るぐらいびっくりしましたし、うれしかったですね。現実の問題として、認知症になれば医療にも介護にもお金がかかりますから。

――MCIと診断された当時、お母様はお仕事をされていたのですか。

母は事務の仕事をしていました。しかし、MCIのためか、ミスが増えるようになり退職してしまいました。収入が減ったことから私が毎月仕送りをしていましたし、認知症と診断されてから介護する生活が始まると、私自身も仕事が制約されるようになりました。

若年性アルツハイマーの母親を介護するフリーアナウンサーの岩佐まりさんが母親と昼食をとる様子。一緒にたこ焼きを楽しみました=2015年6月撮影、提供写真
母親との昼食の様子。一緒にたこ焼きを楽しみました=2015年6月撮影、提供写真

家族が豊かな生活を続けるには余裕が必要

――サポートする家族の働き方も変化せざるを得ないのですね。

介護サービスには自己負担があります。母の年金だけでは払っていけません。病気の心配に加えてお金の心配があると、本当に過酷です。

――家族で話し合っておくことも、大事な「備え」と言えそうです。

MCIの早期発見のメリットは、ライフプランを考える準備期間にできることです。あらたまって家族会議を開かなくてもいいんです。介護が必要になったときのプランを少しずつ立てていく。施設に入りたいのか、自宅にいたいと思うのか。保険や銀行口座の情報も共有しておくことが大切です。

若年性アルツハイマーの母親を介護するフリーアナウンサーの岩佐まりさんとお母さんの箱根旅行での記念写真。認知症になっても旅行を楽しんでいた=2014年5月撮影、提供写真
箱根旅行での記念写真。認知症になっても旅行を楽しんでいた=2014年5月撮影、提供写真

――そうした話を日頃からするためには、家族で話しやすい関係作りが大切ですね。

親の病気や死についての話は、子どもからは話しかけづらいです。できれば親のほうから「子どもに伝えておかないといけないことがある」という意識を持っていただけたらと思います。

――他にどのような「備え」が必要だと思いますか。

元気なうちからの仲間づくりが大切です。情報を得るためにも、生きがいを作るためにも。異変が起きたときに気づいてくれるのも仲間です。昨年、父も認知症と診断されましたが、最初に気づいたのは人工透析のために通っていた病院の看護師でした。いまは家族だけで介護する世の中ではありません。私も自分自身のライフプランを優先しながら、社会のリソースもたくさん使っています。知識や情報があれば状況に応じて選択ができます。決して家族だけで抱え込まないで、と伝えたいです。

若年性アルツハイマーの母親を介護するフリーアナウンサーの岩佐まりさんによると母親が車いす生活になってからも外出は欠かさなかったという。写真は深大寺におそばを食べにいったときの様子=2019年8月撮影、提供写真
車いす生活になってからも外出は欠かさなかったという。写真は深大寺におそばを食べにいったときの様子=2019年8月撮影、提供写真

「いまから備える」のはなぜ?

介護の担い手として「同居の家族」を希望するという人は5割を超えています。また「自宅で介護を希望する」という人も7割を超えています。一方で介護には様々な家族の負担が生じます。(*1)

※明治安田生命「いまから認知症保険 MCIプラス」のコンセプトパンフレットをもとに作成

「もの忘れドック」(認知機能テスト、画像診断などの検査)の費用は、医療機関にもよりますが毎年5万円ほどかかるとされています。国や自治体の一部補助、医療保険の一部適用となることがありますが、10年間で約50万円になります。

明治安田生命の「いまから認知症保険 MCIプラス」なら認知症の予防・早期発見をサポートするサービスがあり、軽度認知障害の診断時の保険金も、10万円~100万円の範囲で選ぶことができます。保険金はMCIの症状改善、認知症への進行予防にも使えます。家族の負担軽減やご自身のライフプランなどにも活用することができます。

認知症に対する備えを、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか?

「いまから認知症保険 MCIプラス」詳しくはこちら

「いまから認知症保険 MCIプラス」は、「軽度認知障害終身保険特約」を付加した場合の「いまから認知症保険」をいいます。

*1 出典:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」、内閣府「平成30年度高齢社会白書」

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岩佐まり(いわさ・まり)
大阪府出身。37歳。フリーアナウンサー。2009年、介護の日々をつづったブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」を開始。同じ介護で苦しむ方々の間で共感を呼び、月間総アクセス数300万PVを超える人気ブログとなる。2015年には「若年性アルツハイマーの母と生きる」を出版。数々のテレビ番組で特集される。現在、72歳になる要介護5の母親を在宅介護中。2020年、独居を続けてきた79歳の父親も認知症と診断される。

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