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『お料理帖』試写報告 & 特別一般試写会ご招待!【8/29締め切り】

今回は、なかまぁるセレクト拡大版。一足お先に同映画を見てきた編集スタッフが、その感想をしたためました! 後半に特別一般試写会ご招待のお知らせがあります。

お料理帖〜息子に遺す記憶のレシピ〜
『お料理帖〜息子に遺す記憶のレシピ〜』

認知症の母親を主人公に、彼女が遺した料理帖を通して家族の物語を描く韓国映画『お料理帖~息子に遺す記憶のレシピ~』が、いよいよ9月13日(金)より、東京・アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかで全国順次公開されます。第22回釜山国際映画祭、第37回ハワイ国際映画祭で上映され、第3回ソウル国際料理映画祭ではオープニング作品に選定され話題を呼んだこの作品、主人公の母親役を演じるのは、50年以上のキャリアを誇る韓国の大女優、イ・ジュシルさんです。個人的に「食べ物」がテーマの映画が大好きな筆者、タイトルを見ただけで心惹かれます。お隣の韓国で「認知症」というテーマがどのように描かれるのかも興味深いところ。ということで、一足お先に見てきました!

韓国のとある町。イ・ジュシルさん演じるエランは、女手ひとつで30年間小さな惣菜店を守り続けてきました。おいしく体にもいいと評判の惣菜は、がん患者やアトピー患者も買い求めにやってくるほど。二人の子どもを育て上げた今も、エランは手伝いの女性と二人で楽しくきびきびとこの惣菜店を切り盛りしています。

母エランが営む総菜店。味だけでなく体にもよいと評判を呼び、さまざまな客がやってくる
母エランが営む総菜店。味だけでなく体にもよいと評判を呼び、さまざまな客がやってくる

そんなエランですが、頭が痛いのは息子のギュヒョンのこと。独立して妻と二人の子どもを持ちながらも、万年非常勤講師で生活力に乏しく、家計は妻に頼りっぱなし。エランは息子を情けなく思いながらも、酔って夜中に訪ねてくれば夜食を出し、孫たちにも手作りの料理を食べさせるなど、あれやこれやと世話をやく日々。小さな気がかりはありながらも、ささやかな幸せを大切にして暮らしているエランに、次第に認知症の症状が現れ始めます。そしてとうとう、自身が大事にしてきた、レシピを書き留めたノートの存在まで忘れてしまうのでした。

見始めると、ファーストシーンからぐいぐい引き込まれて、あっという間に物語の世界の人間になって、登場人物と一喜一憂している自分に気づきました。なぜなのだろうと思うに、あまりにすべてが自然に描かれているからなんですね。これまでの映画は認知症に限らず、家族が病気になるとか、何か家族に突然の災難がふりかかるといったような話の場合、その「出来事」に力点が置かれ、それを巡って周りがどうするか……という展開になることが多いと思うのですが、これはあくまでも、どこまでも「家族」の物語。家族が舞台で、家族同士の気持ちのやりとり、愛憎、屈折、葛藤といった心の機微に重きが置かれている。認知症は確かに簡単な問題ではありませんが、そうした家族を巡るひとつのできごととして描かれているのです。それがかえって非常にリアリティを感じさせるのですね。

本当の親子にしか見えなくなってくる主演の二人。その繊細な演技に注目
本当の親子にしか見えなくなってくる主演の二人。その繊細な演技に注目

そう言えば最近、日本ではいわゆる「ホームドラマ」というものを見なくなりました。作品に家族は登場しますが、それは設定としての構えであって、家族間の人間関係を腰を据えてじっくり描くといった作品はあまり見られません。でも、家族って最小単位の社会であって、そこにはさまざまな人間関係が凝縮して存在しています。身内だからこその理屈では割り切れない複雑な感情もあれこれ生じるわけで。こうした作品を見ると、懐かしいような気がするとともに、きちんとしたドラマを見せていただきました、という充実感に満たされるのです。
聞けば、エピソードの多くは、キム・ソンホ監督と監督自身の家族の実体験に基づいて描かれているのだとか。どうりで一つひとつの場面、一人ひとりの台詞に思わず膝を打ちたくなるような共感を覚えます。そして特筆すべきは、母親役を演じるイ・ジュシルさんと息子のギュヒョンを演じるイ・ジョンヒョクさんの演技。その台詞、その表情、いつしか実の母子にしか見えなくなってきます。
もちろん脇を固める人もそれぞれに名演です。素晴らしいのは、家族それぞれの立場が細やかにきちんと描かれていること。だから「このお嫁さん、ちょっとお義母さんに対してきついんじゃないの?」と一瞬思っても、「ああ、でも彼女の立場だったら、そう思うのも当たり前だよね」と納得できたりする。イ・ジョンヒョクさんの演技を見て、「あ、認知症って、完全に何もかもが失われるわけではないのだ」ということも、自然に心に沁みてきます。
ネタバレになるので明かせませんが、息子のギュヒョンにグループホームの職員の女性がかける言葉は、これまで認知症に縁のなかった人にも、きっと何か大切なものを気づかせてくれるに違いありません。

酔って夜中にやってくる息子のためにエランが作る「夜食にピッタリの味噌カルグクス」
酔って夜中にやってくる息子のためにエランが作る「夜食にピッタリの味噌カルグクス」

映画のタイトルが「料理帖」ですから、もちろん「オンマー(お母さん)」の作る、おいしそうなレシピの数々も登場します。「ギョヒュンが飛び起きる粥」「へウォンが笑う餅」「ソユルのおにぎり」「憎い夫のサバのキムチ煮」と、そのネーミングもユニーク。家で真似したくなること必至です。
見終わった後に、家族の顔が思わず心に浮かぶ、そんな映画。初秋のひととき、じっくり味わっていただければと思います。

この映画の特別一般試写会に、10組20名様をご招待!

・日程 : 9月9日(月)
・時間 : 18時30分~
・場所 : 韓国文化院(東京メトロ丸の内線「四谷三丁目」駅徒歩3分
・応募方法 :下記応募フォームからご応募ください(当選ハガキの発送をもって発表にかえさせていただきます)
 映画『お料理帖』特別一般試写会のお申し込みはこちらをクリック
・締め切り : 8月29日(木)

「お料理帖~息子に遺す記憶のレシピ~」

『お料理帖』公式サイト
・タイトル:『お料理帖~息子に遺す記憶のレシピ~』
・監督 : キム・ソンホ
・脚本 : キム・ミンスク
・制作 : (株)映画社チョア
・出演 : イ・ジュシル、イ・ジョンヒョク
・原題 : Notebook from Mother
・配給 : アーク・フィルムズ、シネマスコーレ〈2018/韓国/16:9/104分〉

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2019年9月13日(金)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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