亡き母を思い、インドネシアから取り組む認知症フレンドリー。知識を力に

2019年5月、インドネシアからDY・スハルヤさんが来日しました。2013年にインドネシア・アルツハイマー病協会(ALZI)を設立し、2016年11月からは国際アルツハイマー病協会(ADI)のアジア太平洋地域ディレクターに就任した女性です。
オーストラリアやアメリカの大学で学び、公衆衛生の専門家として世界中を飛び回っていたそうですが、現在は認知症対策にテーマを移し、グローバルに活動しています。活動を始めた経緯や思いをお聞きしました。

――認知症に関わり始めたきっかけを教えてください。

「母が血管性認知症になったからです。そう診断される20年前から症状が出始めていましたが、私はそのうちの15年間海外に住んでいました」
「帰国して母と、あるお店に行ったとき、母がお金を出すのにとても時間がかかっていたので、見かねた私は財布をバッと取って支払い、母に『なぜそんなに時間がかかるの?』と言ってしまったんです。母はものすごく混乱していました。私は母の認知症のことを十分に理解できていませんでした」

生涯をかけて、認知症をより理解してもらうために活動していくと語るDY・スハルヤさん
生涯をかけて、認知症をより理解してもらうために活動していくと語るDY・スハルヤさん

――個人的な経験を出発点に、活動を広げられたのですね。

「世界で約5000万人が認知症を抱えています。そのうち、日本も含めて約2300万人がアジア太平洋地域にいます。3秒に一人が認知症だと診断されているんです。私の母は2017年7月に亡くなりました。とてもつらい経験だったので、この複雑な病気について、まずインドネシアの人たちにより理解してもらうため、生涯をかけて活動しようと誓いました」

――どのような活動をしているのですか?

「ALZIでは、啓発キャンペーン、アルツハイマー・カフェでの介護者ミーティング、介護ケアのスキルトレーニングやセミナーなどを開催し、認知症の人や家族、介護スタッフの支援をしています。また、早期発見や早期診断のためのさまざまな啓発活動として、アルツハイマー型認知症の10の前兆を分かりやすく解説したパンフレット『Identify 10 Warning Signs of Dementia Alzheimers』を作りました」

「またインドネシアでは、国内で人気のダンス『ポチョポチョ(Poco Poco)ダンス』を週に3回、30分行えば37.5%脳の活性化につながるという研究結果が出ました。こうした情報の普及も行っています」

「3年間ほど活動してから、インドネシアだけではなくてアジア太平洋地域で活動するためADIの活動も始めました。ADIは1984年にアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアが始めた組織で、2019年時点では94か国が加盟しています。加盟国は、公衆衛生など7つの分野について行動計画を作らなくてはいけません。1か国につき1組織がメンバーになる仕組みで、日本では「公益社団法人 認知症の人と家族の会(AAJ)」が、それに当たります」

アルツハイマー型認知症の前兆を分かりやすく解説したパンフレットについて話すDY・スハルヤさん
アルツハイマー型認知症の前兆を分かりやすく解説したパンフレットについて話すDY・スハルヤさん

――ADIは、日本を含めたアジア太平洋地域で活動しているのですね。

「はい。2005年に日本でスタートした『認知症フレンドリーコミュニティ(Dementia Friendly Community:認知症の人にやさしいまちづくり)』にも関わっています。なぜこのDFCの活動が重要なのか、理由は二つあります。一つは偏見などを取り払って、認知症についてもっと啓蒙し、意識を高めてもらうこと。もう一つは、認知症の人たちが力を得て、自らの暮らしについて意思決定をできるようにしていくためです」

――偏見を取り払うために大事にしていることはどんなことですか。

「最も重要なのは、知識です。インドネシアにも偏見はあります。かつての私も、母の認知症に対して十分な理解がありませんでした。先ほど話した母との買い物では、私は手伝ってあげるべきだったのに、知識がなかったのでできませんでした。知識があれば、もっと違うことができたはずです。もしお店のマネージャーらが研修を受けていて、『認知症の症状によっては時間がかかる人もいる』と分かっていたら、手伝ったり待ったりできると思うんですね。知識が力になります。認知症の人にやさしい環境をつくることは、とても大事だと思います」

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