認知症の人もエプロン姿で楽しく料理 こんなデイサービスが人気上昇中
取材/大久保朱夏 撮影/小鷹拓郎
デイサービス(通所介護)といえば、昼食や入浴などの介護サービスを受けたり、レクリエーションをしたりして過ごすのが一般的です。東京・自由が丘には、プロのシェフがいる料理教室のようなデイサービスがあると聞き、早速おじゃましました。
「なないろクッキングスタジオ」は、午前と午後の2部制。午前の部はみんなで作った料理をみんなで昼食として食べ、午後の部は自宅に持ち帰って夕食として食べます。この日、午前の部の利用者は14人。ほとんどが認知症のある人で、自立した生活を支えるための個別の目標があります。
テーマは料理を通じて旅行気分を味わう「クッキングツアー」で、行き先は“冬の北海道”でした。午前の部の献立は「噴火湾産帆立貝のコキーユ」「道産たらこのパスタ」「じゃが芋とマッシュルームのチーズ焼き」「北海道名物!海鮮丼」「鮭と野菜のバター風味のみそ汁」と北海道尽くしの5品。
調理前に、管理栄養士らが食材の豆知識や料理の手順を伝えていました。個別に立てられた目標に沿ってスタッフがあらかじめ担当する料理を振り分けます。他の人と協力して作業を行う、1人で1品作り上げるなど、さまざまな目標があるそうです。スタッフは調理が始まると、こまめな声かけでサポートします。
食事量が増え、文字も書けるように
男性2人がソース作りを任されていました。「自分ではやらないけど、みんなで食べるから責任があるね」と言い、塩加減に気を配っています。五感をフル稼働して調理に集中するので、料理ができあがって配膳する頃には空腹になり、自宅で過ごす日よりも食事量がぐんと増えるそうです。
「(認知症があることで)長らく家の台所から遠ざかってしまった人も自信を取り戻せる」と話すのは、このクッキングスタジオの事業部の神永美佐子さん。表情が明るくなり、会話の数が増えるといった変化が利用者に顕著に表れると言います。
食後に料理名や感想などを自ら「紙に書く」機会も多いためか、名前や文字がきれいに書けなくなってしまった人も、半年でしっかり書けるまで改善するエピソードもあるそうです。
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