あの手この手でMCI・認知症の人を支える

記憶は脳でなく「外付け」でいい 認知症の人に便利な道具を考案

大阪工業大学情報科学部客員教授の安田清さん

ローテクもハイテクも、あらゆるテクノロジーをいかして認知症の人の暮らしを便利にしたいと、日々、研究を重ねている言語聴覚士で大阪工業大学情報科学部客員教授で、京都府立医科大学精神医学教室特任講師の安田清さん。認知症や軽度認知障害(MCI)になって、必要な情報が覚えづらくなったしても、「記憶は必ずしも頭の中になくていい。パソコンにDVDやUSBメモリーをつけるのと同じように、外付けでもいい」と話します。9月に東京で開かれたイベント「認知症フレンドリーイベント」(朝日新聞社主催)では、AI(人工知能)から手作り革小物まで、多岐にわたるアイデアを紹介しました。

記憶をサポート MCI向けの日記帳

安田さんが最初に紹介したのは、手作りでできる「ローテク」な道具です。まずは、MCI向けの日記帳「新記憶サポート帳」。特徴は、ページ一面に欄が設けられていて、「今日やること」「食事とメニュー」「服薬と時間」など、記入することが決められていることです。安田さんは、「真っ白なところに書くのではなく、最初から書くべき項目を分けているんですね。そうすると後で見たときに分かりやすいんです」と説明します

安田さん自身の経験も交えながら講演
安田さん自身の経験も交えながら講演

日記帳には、「覚えておくこと」の欄もあります。「1回書いて安心しちゃいけない。毎日書くんです」と安田さん。そして日記を使うときに一番大事なことは、いつも広げておくことだと言います。「しまうと忘れてしまう。常に開けておいて、その都度書くことが大事です」とアドバイスしました。

次に紹介したのは、壁掛けカレンダー。ぱっと見たところ、日付の下に予定を書く欄がある、普通のカレンダーのように見えます。「そもそもカレンダーは予定を書くところ。やったことまで書くにはどうしたらいいかというと…」と言いながら安田さんがカレンダーを止めていたクリップを外すと、予定を書く欄の下に「実施」を書き込む欄が現れました。使いやすいコンパクトな大きさを保ちながら、その日にやったことも書き込める仕組みです。

忘れる前に書き込む 身につけるメモ帳

素早く情報が見られて、忘れる前に書き込める。そんな狙いで、身に付けられるメモも考案しました。まずは腕時計型。腕時計のバンドにメモ用紙が付けてあり、さっと書くことができます。首からさげる「首下げメモ帳」は、「ゴミを出すとか、布団を干すとか、やったことをチェックしておくと忘れないですね」。定期入れに穴を開けてアレンジしたメモ帳も紹介しました。

最後に紹介した「ローテク」な道具は、「メモリーベスト」です。メモ帳やめがねなど、必要な小物を忘れて出かけてしまう失敗はよくあることです。このメモリーベストには表側にも裏側にもポケットがついていて、様々な道具類を身につけて出歩くことができます。

メモリーベストにはポケットがたくさん
メモリーベストにはポケットがたくさん

この日、自らメモリーベストを身につけていた安田さんは、「裏側はこんな感じです」言って、ベストをめくって見せました。ベストの裏側はメッシュ仕様で、中に入れているものが透けて見えます。「裏返しにして着れば、ポケットに入れたものが常に目に入りますね」と安田さん。メモリーベストの作り方は、安田さんのホームページに掲載されています。

「『徘徊』防止でGPSや玄関施錠をする前に ICレコーダーに秘策あり」に続きます)

MCI・認知症のリハビリテーション
MCI・認知症のリハビリテーション:Assistive Technology による生活支援
講師を務めた安田清さんの研究の集大成が本になります。「今までになかった対処法満載」と安田さん。記事でも紹介されている機器やグッズの、より詳細な活用法が分かります。11月発刊予定。問い合わせはエスコアール出版部(電話:0438-30-3090)へ。

【注目の記事】

「生きてるのが嫌」から、自分取り戻した ~認知症当事者のしゃべり場1
「認知症は嫌」、それって知ったかぶり? ~認知症フレンドリーを目指して1
阿川佐和子さん 認知症の母と過ごす日々からの気づきを語る

関連するキーワード

この記事をシェアする

この連載について

あわせて読みたい