“あと少し”を支えあう さいたま市の「チームおれんじ」が目指す共生社会
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認知症の人が感じている、さまざまな困りごとや不安。介護をする家族が抱えている、つらい気持ちや悩み。それらを軽減し、認知症の人とその家族がともに充実した生活を送るために大切なことは何かを考える市民公開講座「認知症の人とその家族がおだやかな毎日を過ごすために」が、7月6日、浜離宮朝日ホール(東京・築地)で開催されました。
さいたま市認知症フレンドリーまちづくりセンターでコーディネーターを務める黒川愛さんによる講演をご紹介します。
講演3「認知症とともに生きる支えあいのまちづくり ~さいたま市認知症フレンドリーまちづくりセンターの活動を通じて~」
さいたま市認知症フレンドリーまちづくりセンター
黒川愛さん(コーディネーター)
「新しい認知症観」で共生社会を目指す
2024年1月1日に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、12月3日には「認知症施策推進基本計画」が閣議決定されました。
認知症になると「何もわからなくなる」「普通の生活を送れなくなる」という誤ったイメージが根強く残っていますが、この計画には「認知症になってからも、一人一人が個人として出来ること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望をもって暮らし続けることができる」という「新しい認知症観」が示されています。
また、最初の5年間の重点目標の一つに「新しい認知症観の理解促進」が挙げられています。さいたま市でも国の方針にのっとり、「チームおれんじ」「認知症フレンドリー企業・団体」の二つの登録制度を設けています。
認知症の人にも、社会での「役割」を
さいたま市の「チームおれんじ」は、認知症の人と家族、地域のボランティアがチームをつくり、ご本人のやりたいことをもとに皆で活動内容を考え実践していきます。生活すべてを支えるのではなく、“あと少し”を支えあうといったイメージです。
チームの活動内容は、認知症カフェなどの居場所づくり、外出の付き添い・見守り・話し相手などの支援、学習・運動・趣味活動、支援サービスへの案内・調整など、多岐にわたります。いずれも「本人のためのチーム」「本人はお客様ではなく、何らかの役割を持つメンバーの1人となる」という点がポイントです。
現在、市内では28チームが活動しています。例えば、40年以上美容師をしていた認知症の人の「経験を生かしたい」という思いを受けて発足したチームもあります。月に2回、近隣のデイサービスで利用者のために入浴後の支援をおこなっています。活動の行き帰りには、家族を含むチームおれんじのメンバーが付き添い、一緒にランチも楽しんでいます。
約700団体を巻き込んだ、先進的な取り組み

もう一つの登録制度「認知症フレンドリー企業・団体」は、 認知症への理解・支援、認知症の人が利用しやすいサービス・製品開発、環境整備などを実践している企業・団体が対象です。活動内容は認知症フレンドリーまちづくりセンターのホームページで発信しており、団体などにとっては、「地域貢献できる」「団体としての価値が高まる」「従業員からの信頼が得られる」などがメリットとなります。
具体的な活動内容としては、認知症サポーター養成講座などで従業員に正しい理解や行動を促す、認知症カフェや徘徊SOSネットワークなど地域活動を支援する、認知症の人や家族が働き続けられる社内制度を設けるなどがあります。
現在の登録数は、医療機関や薬局、小中学校、交通や通信系の企業など約700団体で、今後も増やしていきたいと考えています。このように企業を巻き込んでの取り組みは、全国的に珍しく、先進的と言われています。
本人の「やりたい」思いに寄り添って
2024年7月1日、さいたま市認知症フレンドリーまちづくりセンターが開設されました。「情報発信」「人材育成」「活動支援」「交流促進」の四つの機能を担っており、チームおれんじの拠点となっています。「認知症希望大使」となった人から当事者としての経験談を聞いたり、認知症VRを体験したりする講座、ケアマネジャーを対象とする勉強会などを開催したりしています。
チームおれんじのパートナーの1人は「自分が困ったときに助けてもらいたいから、今やってるんだ、順番だよ」と話してくれました。まさに「情けは人のためならず」です。「誰かと話したい」「趣味を続けたい」「でも、約束を忘れてしまう」といった声に寄り添い、この取り組みがもっと広がるように活動していきたいと思います。

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