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山田悟医師がアドバイス(3) 変わる更年期のカラダ 極端なライフスタイルはNG

糖質過多によって食後高血糖が起きるようになると、負の連鎖である「メタボリックドミノ」が起こり、いろいろな病気を発症していきます。医師の山田悟さん(北里研究所病院副院長・糖尿病センター長、一般社団法人食・楽・健康協会理事長)に、アラフィフや50代の人たちにとってWell-Beingな食生活についてインタビューしました。2月12日には、山田さんを迎えてセミナーも開催します。そのセミナーのプロローグについて、インタビューを4回に分けて掲載します。3回目は「変わる更年期のカラダ 極端なライフスタイルはNG」です。

更年期に注意すべきこと

――アラフィフや50代になると、ホルモンバランスが変わってきます。

山田悟さん(以下、山田さん):一般的に、閉経前の女性は動脈硬化症に対して男性より抵抗性があります。これは女性ホルモンが血管を守っているからだと考えられています。しかし、閉経すると女性ホルモンが減少します。女性も血圧が上がってきたり、コレステロールが上がってきたりして、男性と同様に動脈硬化症が進みやすくなるのです。このときに内臓脂肪がつきやすくもなります。変に「腹八分目」や「カロリー制限」を意識してしまうと、ここから骨密度が急激に落ちてくる世代でもあるので、将来の骨折や寝たきりを招くことになるかもしれません。骨密度の低下を防ぐには、外出や運動も大切ですし、何よりもきちんとした食事でカロリーとたんぱく質をとることが重要です。脂質も摂取する。しかし、内臓脂肪は落とす。これがロカボなのです。

――アラフィフや50代の男性はどうですか。

山田さん:男性に関しては、LOH症候群(加齢性腺機能低下症)というものがあります。ホルモン値を測らないと診断がつきません。一般的に「自分は男性更年期だ」と自覚できる人はいないと思います。こういう人たちに対しても、少なくとも節制感があって、生活の質が低下するような食事を強要されたら、ますますつらくなってしまうと思います。やはり長い人生を考えたとき、おいしいものをしっかりと食べるということは、非常に重要な価値があると思います。確かに糖質の多い食品でおいしいものは、部分的に量を考えなくてはいけないところがありますが、たんぱく質や脂質でおいしいものは毎食ごとにふんだんに食べる。そうすることで、少なくとも空腹感による糖質が多くておいしいものに対する欲求を管理しやすくなります。

おいしいものと健康はトレードオフの関係だと刷り込まれている

――極端なライフスタイルではなく、人生を楽しみながら食生活をコントロールしていくことですね。健康を害すことにつながるような過度な制限をしないということと、科学に裏付けられた食事を心がけるということですね。

山田さん:できるだけ元来のライフスタイル、食生活はそのままにして、食材を変えるとか、どうしてもこれは変えられないというものについてはボリュームを変えるとか。そして、たんぱく質と脂質に関してはボリュームを増やす。できる限りその人のライフスタイルを維持し、糖質だけをゆるやかにコントロールしていくことです。根底から食生活を変えるようなことはできるわけがありませんし、続くわけがないのです。できる限りその人が食べたいようにして、糖質だけは落とすということを意識したほうがいいと思います。

――山田さんは、よく「日本人はおいしいものを食べたら不健康になっていくと刷り込まれている」とお話されていますが、少し説明をお願いします。

山田さん:今でも、おいしいものと健康はトレードオフの関係だと刷り込まれている人がいますが、何の根拠もありません。おいしいものをしっかり食べながら健康になる、病気を予防することは可能です。その方策がロカボになります。日本が貧しい時代を経験した人たちは、なんとなく「腹八分目」が体にいいと思われていると思います。しかし、「腹八分目」はどう考えても体にとっては単なる飢餓の危険です。だからしっかりと食べたほうがいいと思います。人間には、何のために満腹中枢があるのかということです。満腹中枢は、あなたはここまで食べたらもう充分でこれ以上食べない方がいいですよ、と教えてくれます。こうした満腹中枢の働きがありますので、満腹と感じられるところまで食べること、それがちょうどいい量だということになります。

極端な糖質制限食はリバウンド率が極めて高い

――なぜ、世の中ではトレードオフとして考えるようになってしまったのでしょうか。

山田さん:20世紀の中頃、脂質(油)を食べると心臓病が増えるんじゃないかという説が出ました。あるいは飽和脂肪酸を食べると動脈硬化症が増えるんじゃないかという説が出ました。これについては正直にいうと否定的です。日本の元来の食事は、脂質(油)が少なかったのです。これは貧しい国に特徴的です。「日本の元来の食事が健康的だ」というフレーズは、浸透しやすい特性があります。「日本人は本来すごくいいものを食べているんだ」「本来の日本人のままでいいんだ」みたいな話は、すごく耳障りがいいのです。ところが、洋食が入ってきます。和食もおいしいですが、洋食だっておいしいわけです。もちろん、インド料理だって焼肉だっておいしい。単に食文化が多様化しているだけなのです。そんな中で生活習慣病が増えていくと、「食の欧米化が悪い」と言ってみたくなる人たちが出てきたわけです。本来の医学は多様な食文化を享受しながら健康になるための方法を模索するべきなのですが、「本来の日本に立ち返ることがいいことなのだ」という耳障りのよいフレーズに振り回される人が医療従事者にも一般の方にもたくさんいるのです。そんな保証は全くないにもかかわらず、そして貧困の時代に立ち戻れることなどありえないにもかかわらずです。

――山田さんが「食べて健康になる」というのは、ストレスなく心身健康な状態を作るということなのですね。

山田さん:そうです。そして、実は我慢してストレスフルだけれども健康になるという食生活は続かないのです。だから糖質制限も実は理論的には極端なものの方が効果は大きいのですが、極端な糖質制限食はリバウンド率が極めて高く、実際的には効果がないか弱いのです。ゆるやかな糖質制限の方が長期的に維持できるため、効果はゆるやかな糖質制限の方が高くなります。繰り返しですけれど、「賢い不摂生」もしくは「上手な不摂生」こそ健康への道なのです。

――その「賢い不摂生」や「上手な不摂生」は、ぜひ2月12日のセミナーで詳しくお話していただければと思います。

◆続きはセミナーで

山田悟さんを講師に迎えたproject50sセミナーの参加者を募集しています

○開催日:2月12日 13時~15時
○場所:朝日新聞社東京本社 本館2階 読者ホール
参加申し込み:下記のバナーをクリックし、peatixの「なかまぁる」イベントページから参加申し込みをしてください
○構成:第1部は講演、第2部は質疑応答

山田悟さん(やまだ・さとる)
北里大学北里研究所病院副院長、糖尿病センター長
一般社団法人食・楽・健康協会理事長
糖尿病患者に向き合う中、カロリー制限中心の食事療法では食べる喜びが失われている事実に直面する。その後、患者の生活の質を高められる糖質制限食に出会い、糖尿病治療に積極的に採り入れる。
2013年、食前のみならず食後の高血糖に対する社会的注意の喚起、血糖値測定の普及とその意義の啓蒙、科学的根拠に基づく最新の栄養学についての啓蒙、生活を楽しみながら健康になる社会の実現の4つの普及啓発を目的とした「食・楽・健康協会」を設立し、企業など社会実装にも取り組み始める。
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
主な著書は『世にも美味しいゆるやかな糖質制限ダイエット』(世界文化社)、『運動をしなくても血糖値がみるみる下がる食べ方大全』(文響社)など多数。

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