新たな地に理想のグループホームをつくる【その後の偕老ホーム】
取材・編集/Better Care 編集部
その後の偕老ホーム
偕老ホームではいま、現在のところから5、6分の場所に、新しい建物を建設中だ。女性の設計士さんと、いままでの困りごとの解決策を一緒に考え、話しあいながら理想のグループホームつくりをめざしているのだという。たとえば、現在の建物では、2つのユニットのつくりが同じで区別がつきにくく、各個室もすべて同じデザイン。認知症をもつ人には、自室が分かりにくく、間違いやすかった。そこで新しい建物では、それぞれの区別がつくように、ユニットごと、個室ごとに少しずつ異なる設計にし、壁紙やカーテンも同じものはないようにした。
開設から15年を経て、修繕の必要な個所が増え、家賃も高かったので、いっそ建設をという声が高まったのだ。後押しをしてくれたのは、地域の自治会や、入居者・元入居者の家族、地域のひとなど。理事会メンバーとして、また応援団として、偕老ホームの運営に力を貸してくれている人たちだ。
地域とのつながりを大切にしている偕老ホームでは、「地域の集い場・ワンデイサロン」を開いているが。次第に地域での認知度も上がり、記事では2か月に1度の開催としていたが、今年4月からは毎月1回開催になった。さらに、偕老ホームを会場に、地域の人に向けて開催しているオープンカフェ「すまいるカフェ」も同じく開催回数を増やし、いまでは毎週開かれている。公園に集まって体操をしている仲間が、体操のあとそのまま「すまいるカフェ」に立ち寄るなど、常連さんも増えているという。
偕老ホームでは、折にふれて懐かしい遊びや、つるしびななどのイベントを数多く開催しているが、「どれも、地域の方が積極的にしてくださっているので、職員が動き回っているわけではなりません。地域資源を活用して、居場所づくりを進めているんです」と施設長の熊谷眞理子さんは語る。
偕老ホームを、地域の人が気軽に立ち寄れる「居場所」とする取り組みを進める一方、入居者が地域に出ていく活動も相変わらず活発。現在、毎朝、御所見(ごしょみ)小学校の校門前に入居者やスタッフが立って、登校してくる児童に「おはよう」の挨拶を行なっているが、移転先の近所にも小学校があるのでそちらでも行いたいという。「でも、1か月に1度くらいは、御所見小学校でも挨拶を続けたいですね」と、熊谷さん。
地域に溶け込んで15年。いまでは地域内からの入居者が増えている。その方に会いに、地域の顔見知りが訪れたり、直接は知らない同士でも共通の思い出を語り合ったりもする。
「認知症をもつ方も、なにもできないということはありません。そこにいてくださることで社会貢献をしていらっしゃるんです」
何気ない日常を重ねることが何よりの介護という偕老ホームの目標は、来年春にオープンするという新たな地で、さらに花開きそうだ
偕老ホームの紹介記事本編はこちらです。