介護の裏ワザ、これってどうよ?

長いものには抱かれろ?じじばばファイトにレフェリーで参戦 これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

その光景はまるでジャイ○ンとス○夫

背中を見せたら最後、暴走は止まらない!

このケンカを初めて見たときは、かなり慌てて二人の間に止めに入っていました。わたしも巻き込まれて、ばーちゃんに何度、肩や尻を叩かれたことか。でも二日に一度という超ハイペースでケンカが勃発していたため、自分がいかに無傷で、なおかつ最もスマートに止められるかというコツが分かってきたのです。

それは「争っている二人のうち、強い方に思いきり抱き着いてしまえ!」ということ。

最初はボコボコにされそうなじーちゃんをかばって、ばーちゃんに背を向ける形で割って入っていたのですが、それだと強い者に背を向けるイコールこちらは完全に防御ゼロの無力状態になってしまうのです。背中はガラ空き、攻撃され放題。尻も叩かれ放題。興奮状態になると、どんな言葉をかけてもまったく聞いてはもらえません。

身をもって学んだわたしは、3回目のケンカからとにかくばーちゃんに飛びつくことにしました。その懐に飛び込んでしまうと相手はなかなか手を振りかぶれません。そして抱き着いた途端、いきなり歌を歌うと相手はさらに混乱して動きが鈍くなります。力で制するのではなく、予想外の行動でばーちゃんの動きを封じることに成功。しかし、わたしも相当動揺していたのでしょう。とっさに抱き着いて歌った歌は、なぜか『ポケモン(151匹)言えるかな?』でした。(しかも、6匹目?のコラッタでつまづいた)

ほかにも、相手を傷つけることなくケンカを止める術として、わたしはよくプロレスのレフェリーの動きも参考にしていました。仕事の合間に動画を見て、力の受け流し方をメモする。力を受け止めてしまっては自分もケガをしてしまうので、受け流すのがポイントです。

もう気分はめちゃくちゃ強いレスラーを止めるレフェリー……!

また、柔道の動画や本を読み漁って、「ケガを避ける受け身の取り方」も自主練していました。あれ、わたしって相当ヒマかも……。

どんな言葉をかけてもダメ。とにかく距離をとりましょう!

こんな、体を張りまくったケンカの止め方ですが、介護のプロからはどう見えるのでしょうか。

東北福祉大学福祉心理学科の教授で日本認知症ケア学会の理事、そして『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新書)の著者である加藤伸司先生にお話を聞きました。

「いやぁ、面白いなあ。と言ったら語弊があるかもしれませんが、その手があったか。勉強になります(笑)。体を張ったなかなか激しいケアですが、一番大切なのはお互いにケガをしないことです。

とっさに言葉で説明したり、なんとかなだめようとしてしまいがちですが、興奮状態になったら何よりもまず距離を取ることが重要です。お互いを別の部屋に連れて、物理的に距離をとる。そうすると次第に、精神的にも落ち着きます。

何らかの言葉をかけてその場をおさめようとしたり、説得して分かってもらうのは難しいですね。例え正論でも、認知症の方を否定してしまうとさらに不安定になる恐れもあります。また、周囲から色々言われると、どんな言葉でも『私の味方は誰もいない』『みんな全員敵だ!』とより興奮させてしまう。だから一番はとにかく距離をとって、落ち着いたところではじめて言葉をかけるのがベストです。

しかしレフェリーや受け身ねぇ……斬新ですね」

取っ組み合いではなくても、「言い合いがヒートアップしそうだな」とちょっとでも感じたら早々に距離をとってしまった方がいいかも。

ばーちゃんのことを心の中で「ブッチャー(伝説の悪役レスラー)」と呼んでいたのはここだけの話……。

加藤伸司先生
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科教授。認知症介護研究・研修仙台センターセンター長。日本認知症ケア学会副理事長。近著に『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新社)、『認知症の人を知る―認知症の人はなにを思い、どのような行動を取るのか』(ワールドプランニング)など

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