介護の裏ワザ、これってどうよ?

30年前の浮気に怒り爆発!の場合に「み○もんた」これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母がそろって認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました!

話を聞いているときの気分は、みのも○んた※懐かしの『思いっきり生電話風!!』 「キー!!」「それは本当かい奥さん」

昔を思い出して、怒り狂うばーちゃん!

わたしは怒ったときに「そういえばあのときも!」と、過去の怒りが芋づる式に出てきてしまうことがありますが、ばーちゃんの爆発(怒り)はいつも突然です。蒸気を吹き出す間欠泉のように、過去の怒りがいつも突然大爆発するのです。

居間でテレビを見ながら落花生をむいていたときも、突然「あの人(じーちゃん)は浮気者だ!」「ほとんど家にも帰ってこないし、いつも私が苦労させられているんだ!」と、もの凄い般若のような表情で訴えてくる。怒りにまかせて、割と硬いはずの落花生を何個か握り潰しているし……。
わたしはあっけにとられて思わずぽかーんと放心状態になり、じーちゃんは慣れているのか、いそいそとその場から逃げ出します。その怒りはすぐにおさまることもあれば、30分や1時間近く文句を言い続けて暴れるときもあるのです。

ほかにも、突然「よしこ(ゆずこの母)とルミ子(ゆずこの叔母)は、私を捨てて嫁に行ったんだ! どうせ私は一人だ! みんな私のことを捨てるんだろう!」と大爆発することも。
内容は、大体がこの「じーちゃんの浮気疑惑」と、「娘たちが嫁に行ってしまったこと」でした。レストランでの外食中やスーパーのレジに並んでいるとき、トイレに入っているときなど、いつ大爆発するか予測ができないのでいつもハラハラドキドキしていました。

過去の出来事だって、今起きたかのように話を聞いちゃえ

ばーちゃんのそんな大爆発を何度も見ていると、常に今、浮気が発覚したり逆鱗に触れたかのような、もの凄くリアルで生々しい怒りであることがわかります。そして思わず、「え!? なにそれ! ちょっと話聞かせてよ」「うわ~まじか、それでそれで?」と、身を乗り出して話を聞いてしまいます。

こんな状況になったら、それは過去の話でしょとか、その話はこの前も聞いたよなどと声をかけてしまうのかもしれませんが、わたしはいきなり怒りが頂点に達したような感情むき出しで相手に向かってこられると、「どうした!何があった!?」「おっと今回はいつもより爆発がデカいな!」と、瞬時に受けとめてしまうのです。
そして25歳の孫に、本気で夫の浮気相談をする82歳のばーちゃん。また、娘との同居問題を切実に語るばーちゃん。はたから見るとちょっとシュールな光景で、ちょっと面白い。

爆発して怒涛の勢いで文句を言っているときは、わたしのことも孫とは認識していないかも知れません。むしろ、昔テレビでお昼の生電話相談のコーナーをやっていた、みのも〇たさん的な存在だったりして……やっぱりちょっと面白い。

認知症の人の「今」は「いま」じゃないかも知れない

しかしいつも不思議だったのは、なぜ30年以上前の怒りを、たった今起きたことのようにもの凄い怒りで爆発できるのかということです。大抵は、時間が経つにつれて多少は怒りも半減していくと思うのですが……。
ばーちゃんの突然の爆発のナゾを、東北福祉大学福祉心理学科の教授で日本認知症ケア学会の理事、そして『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新書)の著者である加藤伸司先生にうかがいました。

「じーちゃん、浮気の真相は・・・?」・・・ほぼ、黒だな。※気になったので聞いてみた

「まずですね、認知症の方にとっての“今”は、かならずしも“現在”ではありません。記憶が抜け落ちて、出来ないことや分からないことが増えていくのは相当な不安と恐怖があるはずです。それに、最近のことは忘れてしまっても、昔の記憶は比較的保たれているというのも特徴です。
そして断片的な記憶の欠落によって、過去と現実がしばしば混同してしまうのは『時間軸の混同』が原因です。今回のゆずこさんのおばあさんのように、突然30年前のトラブルを、“たった今起きたことに対する怒り”として表現してしまうことも、本人とってはごく自然な反応なんです」

ではそこで、今起きたことのように身を乗り出して話を聞いたり、井戸端会議をしちゃうわたしの対応はそこそこ合っていたのでしょうか?
「そうですね。相手の世界を否定せずに、共感できるのはいいと思います。さらに言えば、相手(要介護者)が突然暴れ出したり感情的になってしまったときは、何かしらきっかけがあるんです。すべてがそうとは言えませんが、たとえば過去を思い出して暴れてしまうなら、その過去にリンクするきっかけがあったのでしょう。
これはプロの技なのですが、そんな状況になったとき
◆周囲はどんな状況だったか
◆スタッフや周りの人はどんな態度をとっていたか
◆どんな内容を話していたのか
などを記録します。家族はここまでやらなくてもいいと思いますが、なにか本人を刺激してしまった理由が隠されていることもあるんです」

プロのように事細かに記録はできないかもしれませんが、突然の爆発や感情の暴走をなるべく避けるためにも、もっとも自分自身が振り回されすぎて疲れないためにも、過去や暴走に繋がるものがなかったのか、簡単にメモをしておいてもいいと思います。

ちなみに、うちの場合はじーちゃんの浮気(疑惑)相手の名前が「〇池さん」だったらしく、その名前を聞くとばーちゃんはかなりの確率で怒り狂っておりました……。

加藤伸司先生
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科教授。認知症介護研究・研修仙台センターセンター長。日本認知症ケア学会副理事長。近著に『認知症になるとなぜ「不可解な行動」をとるのか』(河出書房新社)、『認知症の人を知る―認知症の人はなにを思い、どのような行動を取るのか』(ワールドプランニング)など

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について