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認知症になったら使える制度 介護保険の手続きやサービスを解説

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認知症と診断されたら生活は……? お金のことも気になります。どういった支援制度があるのでしょう。京都府立医科大学附属病院精神科・心療内科の成本迅先生に聞きました。

ここでは、自立して生活するための三つの制度について解説します。

1.介護保険サービス

認知症は医療と介護の両輪でケアしていく症状です。介護保険サービスは介護を必要とする人の生活を援助したり、介護する家族が休息できる機会を設けたりするためのサービス。主な内容には次のようなものがあります。

  • 介護保険サービスの利用にかかわる相談やケアプランの作成
  • 自宅で受けられるサービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護など)
  • 施設で受けられるサービス(デイサービス、通所リハビリテーション、ショートステイなど)
  • 施設で生活するサービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など)

介護保険料は65歳以上の場合、原則として年金から天引きされています。40歳から64歳までの場合は、健康保険料などに加算されて徴収されています。保険の加入者は、65歳以上になると市区町村から「介護保険被保険者証」が交付されます。これは、介護保険サービスの利用を申請する際に必要になります。紛失してしまった場合でも再交付してもらえるので、市区町村に問い合わせてみましょう。

介護保険サービスを利用するには、市区町村の介護保険窓口に申請書と介護保険被保険者証を提出し、主治医の意見書や訪問調査をもとに要介護度が判定されます。

40歳から64歳の人は要介護と認定されると同時に、介護保険被保険者証が交付されます。

要介護度によって、利用できるサービスは異なりますが、自己負担額は原則として1割で、所得に応じて2~3割となることもあります。

 

2.成年後見人制度

認知症などで判断能力が衰えた人を保護、支援する制度。将来認知症になったときに備えて誰にどのように支援してもらうかを決めておく「任意後見制度」とすでに認知症になっている人が利用する「法定後見制度」があります。法定後見制度は、判断能力の程度によって「補助」「保佐」「後見」の三つに分かれ、保護や支援の内容が異なります。

後見人の業務は「財産管理」と、介護契約や施設への入所契約を結ぶなど本人が適切な環境で過ごせるようにする「身上監護」があります。本人がした契約でも後見人が同意していなければ後日取り消せるため、認知症の人に多いさまざまなトラブルを予防できます。

いずれも住んでいる地区の家庭裁判所に必要書類を持参して申請します。任意後見は自分で後見人候補者を選ぶことができますが、法定後見は申立人が選んだ候補者が必ずしもそのまま選ばれるわけではなく、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれることもあります。その場合は本人の財産から報酬を支払います。後見人には、行った業務を定期的に裁判所に報告する義務があります。

 

3.日常生活自立支援事業

判断能力が低下しているけれど、支援してもらえば自立した生活ができる場合に利用できる、一人暮らしの人にとって役立つ制度です。具体的な支援内容は、福祉サービスの利用や年金をもらう手続きの援助、日常生活に必要なお金の管理、大切な書類の保管などです。申請は、市区町村の社会福祉協議会に。契約締結前の相談は無料ですが、生活支援員による直接の支援は有料です。

 

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