認知症への理解を願って、咲かせた相合い傘の花
岩佐まり
フリーアナウンサーの岩佐まりです。重度のアルツハイマーの母と一緒に参加した「認知症の人と家族の会」の韓国研修ツアーの参加レポート3本目。傘を差して、世界遺産の敷地内を練り歩く行事をご紹介します。韓国では、相合い傘は友好の象徴なのですが、なんと当日は大雨!!さて、どうなることでしょう……。
日韓共同相合傘歩き(ゴッキ)に参加
10月6日、韓国は台風の影響で朝から大雨が降っていました。
そんな中、ユネスコ世界文化遺産に登録されている昌徳宮で「日韓共同相合傘歩き(ゴッキ)と文化探訪行事」が行われました。
これは、認知症の人と家族、そして高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を願って、みんなで傘を差して歩く認知症の啓発イベントです。相合傘は「友好」を象徴するということで、行事にこの名前が付けられていましたが、実際に雨が降ったため、本気の相合傘でともに仲間を雨から守りあう場面がありました。
当初は、母の車椅子は私が押すつもりでしたが、昌徳宮内は坂が多く、体力のある韓国の男性ボランティアの方が押してくれました。日本語も大変お上手で、昌徳宮について解説してくださったり、日本に滞在していた時の話などを聞かせてくださったりしました。
また、歩きゴッキの最中に、韓国から参加した97歳の女性とお話しする機会もありました。その方は流暢な日本語で私に「日本人ですか?」と話しかけてくれ、中学校を卒業するまで日本の神奈川県横須賀市で家族と暮らしていた思い出を熱く語ってくれました。そして日本が好きで、第二の故郷だと思っていると目に涙を浮かべ話してくれるのです。80年以上も前のことなのに、ずっと日本の思い出を胸に日本語を忘れずにいてくださったのです。
母の手を握ってポロポロと
私は母を紹介し、認知症であることを伝えました。するとその方は母の手を握り、意思疎通が難しい母にポロポロと涙を流されて、私にこう言いました。
「あなた、頑張りなさい」
その言葉には、ただ認知症という残酷な病と向き合うことへのエールだけでなく、「親子の絆を忘れずに、これからも仲良く幸せに暮らしなさい」というメッセージが込められているような気がしました。
私にとって、この相合傘歩きゴッキは、認知症への理解の啓発のみならず、韓国の皆さんの愛を知り、ともに助け合う気持ちを感じたイベントでした。雨が降っていたからこそ、雨のおかげで、より強く友好関係を結べたように思います。
このような機会をくださった「認知症の人と家族の会」代表理事の鈴木森夫さんには、研修旅行の最後まで、明るく元気にみんなを引っ張っくださり、参加した全員にこれからの活力を与えてくださったことにも感謝いたします。
この相合傘歩きゴッキをもって、研修ツアー全てのプログラムが終了です。
救急搬送から始まり、一時はどうなることかと思いましたが、振り返れば韓国の病院のシステムや国境の壁のない医療を知り、車椅子の母のために皆さんから力をお借りし、人一倍に多くのことを学んだ研修でした。
皆で食べたサムギョプサルも
皆で食べた朝食も
車内で過ごした移動時間も
ホテルの部屋から眺めていたこの景色も
全て私の宝物です。
悩んでいる人こそ、勇気を出して
母を連れてはもう無理だと思っていた海外旅行を、なんとか成功させることができました。勇気を出して一歩外に出てみると、社会の問題に気づいたり、人の温かさに気づいたりするのです。この記事を読んでいるなかに、介護で悩んでいる方もいらっしゃると思います。どうか苦しいだけの介護生活で終わらせずに、いろいろな機会が得られる介護生活にぜひ挑戦してみてください。私のように「旅行へ行きたい!」という方は、環境が変わることで、より慎重な介護が必要になることは忘れないように(救急搬送されないように)気をつけながら、でもぜひ、行ってみてください。
認知症になっても障害をもっても、海外旅行や普通の暮らしが実現できる社会はもうすぐそこまで近づいており、私もその支援者の一人として、これからも歩んでいこうと思います。
今回の研修で学んだことは、これからの介護生活だけでなく、人生の糧にしていきたいです。皆さん、ありがとうございました。カムサハムニダ。
【番外編】おまけの韓国ぐるめ情報?です
ちょっと街をブラブラしてみると、日本の商品やお店がたくさんありました。
スーパーの売り場のお菓子コーナー。
25かつ? かつが食べられるお店のようです。
どうやら、日本食は韓国で注目されているグルメのようです。
韓国人の友達いわく、ビールは韓国産よりも日本のが美味しいとのこと。
アサヒ!サッポロ!と叫んでいました。
辛い物が好きという方にぜひ試してもらいたいカップラーメンがこちら。
お湯を捨てて食べるので、焼きそばという感じですね。
辛いを通り越して、本気で痛いです。完食できる日は私には訪れそうにないです。
(終わり)
【岩佐まりさんの記事はこちらにも】