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認知症サポーターとは?求められる役割やなるメリット、養成講座について紹介

認知症サポーター

「認知症について知りたい」と思ったときに役立つのが、認知症サポーターの養成講座を受けることです。認知症サポーターになったからといって特別なことをする必要はなく、認知症についての正しい知識や理解を得ることで、認知症の人やその家族を応援できる存在となります。取り組みがスタートした背景や認知症サポーターになるメリット、なる方法などについて紹介します。

認知症サポーターとは

認知症サポーターとは、認知症に対する正しい知識と理解を持ち、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする人のことです。養成講座を受けると認知症サポーターになることができ、現在(2023年12月31日)1510万9658人の認知症サポーターがいます。地域住民のほか、地域に密着した金融機関やスーパーマーケットの従業員、小・中・高等学校の生徒など、さまざまな人が認知症サポーターになっています。

スーパーのレジ係と話をする老夫婦、Getty Images
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認知症サポーターには、次の5つのことが求められています。

  1. 認知症に対して正しく理解し、偏見を持たない
  2. 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る
  3. 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する
  4. 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携ネットワーク、をつくる
  5. まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する
※自治体内のサポーターの活動を把握している自治体(市町村・都道府県)のうち、各活動を実施している割合。カッコ内は実施している自治体数/オレンジカフェの開催または参加 63.7 %(307)、見守り 45.6 %(220)、傾聴 28.2 %(136)、「認知症サポーター養成講座」の開催協力 28.2 %(136)、認知症の人やその家族を対象とするサロンの開催または参加 22.0 %(106)、SOSネットワークなどへの登録 20.5 %(99)、介護予防教室等への協力 17.4 %(84)、認知症サポーターがいる店舗等の登録 15.8 %(76)、通所施設、入居施設などの行事協力 13.5 %(65)、外出支援 7.7 %(37)、キッズサポーター(小中高生)による認知症の人との交流 7.3 %(35)、本人ミーティング開催への協力や本人ミーティングへの誘い・同行 0.6 %(3)、その他 15.8 %(76)
※自治体内のサポーターの活動を把握している自治体(市町村・都道府県)のうち、各活動を実施している割合。カッコ内は実施している自治体数

認知症サポーターが求められる背景

認知症に関する政策において大きな転換点となったのが、2004年12月に「痴呆」という呼称から「認知症」へと変わったことです。当時は認知症に対して誤解や偏見が大きく、また、介護問題などが議論されることはあっても、認知症そのものについて大きく取り上げられることはほとんどありませんでした。認知症への誤解や偏見は、本人や家族の尊厳を傷つけるだけではなく、早期発見や早期診断を大きく遅らせます。

認知症は誰もがなる可能性があること、周囲の適切な対応によって認知症になっても住み慣れた地域で暮らせることなど、認知症に関する正しい知識は、国民全員が知っておくべきことです。そこで2005年には、厚生労働省が「認知症を知り地域をつくる10ヵ年計画」を開始し、認知症の正しい知識を普及させ、自治体、企業・団体などで支援するシステムの構築、つまり認知症サポーターを全国で育成する事業「認知症サポーターキャラバン」をスタートさせます。

講師と受講者、Getty Images
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当初は5年間で100万人のサポーターを養成することを目標に掲げていましたが、4年間で達成し、順調なスタートを切りました。認知症サポーターは日本独自の制度ですが、世界的にも注目され、国際アルツハイマー病協会(ADI)が2012年版の報告書で日本の「認知症サポーターキャラバン」事業を高く評価したほか、英国では2012年から日本を手本として英国版の認知症サポーター制度を開始しています。2015年には「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定され、認知症サポーターの養成と活動支援が国家戦略となったのです。

認知症サポーターになるメリット

認知症サポーターの養成は、認知症についての正しい知識を広く普及することを目的にスタートしているので、認知症サポーターになったからといって特別なことをしなければならないという決まりはありません。最近認知症が気になるけれど病院に行くほどではない、家族や近所の人が認知症になった、仕事で認知症の人の対応に困ったなど、さまざまな立場、属性の人がそれぞれのきっかけで認知症サポーターになっています。

窓口業務、Getty Images
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認知症サポーターの内訳は、地域住民だけではなく地域の金融機関、スーパー・百貨店・商工会・商店会など、警察、薬局・薬剤師会、JA農協、マンション管理、医師会・歯科医師会など、地域で認知症の人と接する機会がある職業の人も多くいます。

養成講座では認知症の種類や症状、経過など基本的な知識のほか、認知症の人との接し方や声がけのポイントなども学ぶことができます。「金融機関編」「スーパーマーケット編」「交通機関編」「マンション管理編」「訪問業務編」など、職場別に事例学習ができるテキストもあるので、企業や職能団体が主催する場合は、業務に即した適切な対応を習得することもできます。

※自治体が行っている講座の受講者数と全国的企業が独自に行っている養成講座の受講者数を合わせた数値(全国キャラバン・メイト連絡協議会提供)/【職業別サポーター内訳(主なもの)2023年9月30日現在】金融機関(郵便局・保険会社含む)1,041,439人、スーパー、百貨店、商工会・商店会等245,937人、警察180,131人、薬局、薬剤師会145,561人、JA農協142,099人、マンション管理137,787人、医師会、歯科医師会等87,025人、交通機関(鉄道、バス、モノレール、タクシー等)63,613人、消防44,917人、電力会社・ガス会社・水道検針28,550人、理美容25,885人
※自治体が行っている講座の受講者数と全国的企業が独自に行っている養成講座の受講者数を合わせた数値(全国キャラバン・メイト連絡協議会提供)

また、養成講座の場は、地域連携の場にもなっています。講師役のキャラバン・メイトは医師や専門職などが担うことが多く、養成講座の場では心配なことを気軽に相談することができます。その場では特に心配なことはなくても、いざ困ったときに必要な支援につながりやすくなるというメリットもあります。養成講座の主催者側にとっては、支援を必要としている人を把握する場にもなっています。

養成講座を受けることで認知症サポーターになれる

90分間の「認知症サポーター養成講座」を受講すれば、誰でも認知症サポーターになることができます。養成講座は自治体(市町村、都道府県)が地域住民に対して、または企業や職能団体が従業員に対して開催しています。養成講座の受講を希望する場合は、役所の福祉課や地域包括支援センターなど、自治体事務局に問い合わせましょう。

※全国の自治体事務局自治体事務局連絡先
https://www.caravanmate.com/office/

受講資格

養成講座を受講するための条件は基本的には設けられていないので、希望すれば誰でも受講することができます。ただし、主催者によって対象が限られている場合もあります。自治体が主催している場合は地域住民、企業などが主催している場合はその組織内の職員が対象になります。

受講費用

原則として無料です。自治体によっては、テキスト代(1冊105円)として費用が発生する場合もあります。

講座内容

所要時間は90分が目安で、全国どこでも下記の基本カリキュラムに沿った内容で開催されます。

  • 認知症サポーターキャラバンとは
  • 認知症を理解する(症状、診断・治療、予防、認知症の人と接するときの心がまえ、当事者の気持ち、家族の気持ちを理解する、など)
  • 認知症サポーターとは
  • 認知症サポーターのできること

オンラインで受講できる場合がある

オンライン講座を受けるひと、Getty Images
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養成講座は企業主催の場合、オンラインでの開催を取り入れて場合も多くあります。自治体主催の場合でもオンラインを導入しているケースがあります。ただし、オンラインの受講に必要なカメラ付きのパソコンやタブレットなどの機器は参加者が用意する必要があります。

認知症サポーターとキャラバン・メイトの違い

キャラバン・メイトとは、養成講座の講師役を担う人のことです。自治体や企業・職能団体が実施するキャラバン・メイト養成研修を受ける必要があり、受講には次の条件が必要です。

  • 認知症介護指導者養成研修修了者
  • 認知症介護実践リーダー研修修了者
  • 介護相談員
  • 認知症の人を対象とする家族の会
  • 上記に準ずると自治体や企業・職能団体が認めた者(行政職員、地域包括支援センター職員、介護従事者、医療従事者、民生児童委員など)

さらに年間10回程度を目安に(最低実施数3回)、認知症サポーター養成講座を原則としてボランティアの立場で実施できるということが条件となります。

ステップアップ研修を受ければチームオレンジに所属できる

2019年からスタートした「チームオレンジ」は、近隣の認知症サポーターがチームを組み、認知症の人や家族に対する生活面の早期からの支援などを行う取り組みです。チームには認知症の人も含まれます。

チームオレンジの輪、Getty Images
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以前から「せっかく認知症サポーターになったのだから、より実践的な支援をしたい」と自発的にチームを組んで活動していた地域は、点在していました。例えば京都府綾部市は認知症サポーターの人がさらに講習を受けると「シルバーサポーター」「ゴールドサポーター」になれる独自の認定制度を設けています。ゴールドサポーターの人たちは地域の社会資源を高齢者が集う居場所にするなど自発的な活動を広げています。こうした自然発生的な取り組みが各地であり、厚生労働省は認知症サポーターの活動促進事業として「チームオレンジ」をスタートさせたのです。

このため活動内容は地域の実情などに合わせてさまざまですが、認知症の人の見守りや話し相手になるなど生活に根差した活動、高齢者の居場所づくりといったことが中心となります。また、認知症サポーターはシニア層も多いことから、メンバーの介護予防という側面も期待されています。

チームオレンジのメンバーになるには、認知症サポーター養成講座を受講したうえで、ステップアップ研修を受講する必要があります。ステップアップ研修の内容や時間は自治体ごとに決められています。

認知症サポーターに関するよくある質問

認知症サポーターや養成講座に関してのよくある質問について回答します。

オレンジリングがもらえないのはなぜ?

2020年までは養成講座を受講すると、認知症サポーターの証としてオレンジリングが全国一律無料で配布されていました。現在はオレンジリングの代わりに主催者である自治体や企業・職能団体が作成する認知症サポーターカードが渡されます。

養成講座を受講する人が増え、全国一律無料でオレンジリングを配布するのが難しくなったというのが実情です。自治体などによっては独自にオレンジリングを購入し、受講者に配布している場合もあります。

認知症サポーターに年齢制限はありますか?

講座を受ける学生たち、Getty Images
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ありません。認知症サポーターの年代(令和4年度)を見ると、10代以下が半数を占め、学校での講座開催が普及していることがわかります。高齢者も多く、60代以上が21%を占めます。特に認知症に対して誤解や偏見を持たない10代以下に対しては啓発の効果が大きく、学校での養成講座の開催には大きな意義があります。

少人数でも認知症サポーター養成講座を開催できますか?

人数に決まりはありません。実際にマンツーマンの講座も開かれていますし、例えばキャラバン・メイトである地域包括支援センターのスタッフが、相談にきた認知症の人の家族に向けて講座を開くこともあります。ただし自治体が参加者を公募する場合は、開催の条件として5人以上、10人以上などと決めている場合もあります。

まとめ

厚生労働省は2025年までに1500万人の認知症サポーターを養成することを目標に掲げていますが、この目標は間もなく達成される見込みです。もともと認知症についての正しい知識を広めるために医師や介護従事者、家族などによる講演会などは各地で開催されていましたが、認知症サポーター養成講座は全国どこでも同じ内容で、大きな予算も必要なく開催できるといったことが普及の観点から評価されています。世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本において、認知症サポーターが普及していることは、世界的にも関心を集めています。

認知症サポーターについて解説してくれたのは……

土屋純子さん/特定非営利活動法人 地域共生政策自治体連携機構 全国キャラバン・メイト連絡協議会事務局
特定非営利活動法人 地域共生政策自治体連携機構 全国キャラバン・メイト連絡協議会事務局 土屋純子(つちや・じゅんこ)さん
全国キャラバン・メイト連絡協議会事務局
2005年から認知症サポーターキャラバン事業を推進している。教材作成や自治体(都道府県、市区町村など)や全国規模の企業・団体などと共催で認知症サポーター養成講座の講師役(キャラバン・メイト)を養成するなどしている。

認知症フレンドリー講座

認知症への理解を深める講座は、認知症サポーター養成講座以外にも開催されており、朝日新聞社では「認知症フレンドリー講座」と題して、認知症とともに生きるご本人の思いを知り、認知症VR(バーチャルリアリティ)体験などを通して、地域でともに暮らす共生社会のあり方を考える出張講座を全国展開しています。認知症サポーター養成講座の開催や受講をした後に、ステップアップとしてこの認知症フレンドリー講座を開催したり受講したりするということも多くみられます。

認知症フレンドリー講座のVR体験風景
認知症フレンドリー講座のVR体験風景

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