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「要支援」と「要介護」どう違う?専門家が詳しく解説します

要支援とは? 要支援1、要支援2、要介護の違いと保険適用範囲について

「介護が必要な状態になるのを予防したい」「介護が大変になってきたから、プロの力を借りたい」、そんなときに活用できるのが、介護保険制度によるサービスです。サービスを利用するには、要支援・要介護認定を受ける必要がありますが、要支援と要介護はどのように違うのでしょうか。2つの違いや要支援で受けられるサービスについて紹介します。

要支援について解説してくれたのは……

結城康博・淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科教授
結城康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科教授
1992年淑徳大学社会福祉学部卒業。99年法政大学大学院社会科学研究科修士課程(経済学専攻)修了、2004年法政大学大学院社会科学研究科博士課程(政治学専攻)修了。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在は経済学や政治学をベースに介護と医療を中心とした社会保障政策の研究に従事する。著書に『介護職がいなくなる ケアの現場で何が起きているのか』(岩波書店)、共著に『わかりやすい社会保障制度』(ぎょうせい)などがある。

要支援・要介護はどう違うか?

要支援と要介護では、受けられる介護保険サービスが異なります。それぞれ具体的にどのような状態を指すのか説明します。

要支援とはどういう状態?

「要支援状態」の定義は、「身体上、または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事などの日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生労働省が定める期間にわたり継続して、常時介護を要する状態の軽減、もしくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、身体上、または精神上の障害があるために、厚生労働省が定める期間にわたり継続して、日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態」と定義されています。さらに「支援の必要の程度に応じて、厚生労働省で定める区分(要支援状態区分)のいずれかに該当するもの」とされています。

要介護とはどういう状態?

「要介護状態」の定義は、「身体上、または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事などの日常生活における基本的な動作の全部または一部について、厚生労働省が定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態」と定義されています。さらに「その介護の必要の程度に応じて厚生労働省で定める区分(要介護状態区分)のいずれかに該当するもの」とされています。

簡単にいうと、要介護に比べて要支援は介護の必要度が低く、適切な支援を受けることで要介護への予防が期待できる状態を指します。

より具体的な状態については後述します。

要支援・要介護の8つの区分

区分はそれぞれ、要支援1、2、要介護1~5に分けられます。介護にどれくらいの手間(時間)がかかるのかを判断する「要介護認定等基準時間」によって、審査が行われます。

 【自立(非該当)】歩行や起き上がりなどの日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能であり、手段的日常生活動作*を行う能力もある状態。【要支援1】日常の基本動作のうち、食事や排せつなどはおおむね自力で行える状態。立ち上がるとき、起き上がるときなど一部支援が必要。【要支援2】一次判定で「要介護1相当」と判定されたのち、二次判定で「心身が不安定で短期的に要介護度の重度化が予想される」「または認知機能の低下などにより介護予防給付についての理解が困難な場合」を除いたケース。【要介護1】要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要となる状態。【要介護2】要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要となる状態。【要介護3】要介護2の状態と比較して、日常生活動作および手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介助が必要となる状態。認知症の場合には、症状に対応が必要な状態。【要介護4】要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を送ることが困難となる状態。認知症の場合には、昼夜逆転や独り歩きなどがある。【要介護5】要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態。認知症の場合には、理解力が全般的に低下し、意思の伝達ができない状態。※手段的日常生活動作……食事、排せつ、入浴などの基本的な日常生活動作よりも複雑な動作のこと。具体的には掃除、料理、洗濯、買い物などの家事、交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理などの日常生活動作を指す
※ 手段的日常生活動作……食事、排せつ、入浴などの基本的な日常生活動作よりも複雑な動作のこと。具体的には掃除、料理、洗濯、買い物などの家事、交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理などの日常生活動作を指す

要支援1と要支援2の違い

要支援状態は、2段階に分けられます。1と2ではどのように異なるのでしょうか。

要支援1と要支援2の違い

介護保険サービスを受けられる人の区分のうち、最も軽いのが要支援1です。要支援1も2も食事や排せつなどはおおむね自力で行うことができますが、買い物や金銭管理など手段的日常生活動作に関して、一部見守りや支援が必要な状態です。要支援2はそれに加えて、起き上がりや立ち上がりが不安定な状態です。

 1.申請をすると、2. 認定調査員が申請者宅を訪問。コンピューターによる一次判定の後「介護認定審査会」が実施される。二次判定で要支援・要介護度が判定され、申請から30日程度で判定結果が郵送される
1.申請をすると、2. 認定調査員が申請者宅を訪問。コンピューターによる一次判定の後「介護認定審査会」が実施される。二次判定で要支援・要介護度が判定され、申請から30日程度で判定結果が郵送される

要介護認定の流れ

介護が必要になったタイミングで、役所の介護保険課や高齢者福祉課など介護保険サービスの担当窓口で、要支援・要介護認定の申請をします。本人が申請できない場合は、家族や親族のほか、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護施設(本人が入居中の場合)などが申請を代行できる場合もあります。

認定調査員が申請者の自宅(施設に入居中の人や病院に入院中の人は、その施設や病院)を訪問し、ヒアリングや身体機能の確認をします。さらに主治医に医学的な意見書の作成を依頼します。これらをもとに、コンピューターが全国一律の基準で一次判定を出します。その後訪問調査や主治医の意見書をもとに「介護認定審査会」が実施され、二次判定で要支援・要介護度が判定されます。認定結果は、申請から30日程度で自宅に郵送されます。

要支援1、2の認定を受けると、介護予防のためのサービスを受けることができます。サービスを利用するためのケアプランの作成やサービス事業者との連絡、調整は、地域包括支援センターが担います。このため要支援の認定を受けた場合は、地域包括支援センターに連絡をとります。地域包括支援センターのケアマネジャーなどが利用者の身体状況や生活環境を確認し、本人や家族の希望を聞いたうえで、その市区町村で使える介護予防サービスの中から必要なサービスを選び、介護保険の支給限度額内におさまるように、ケアプランを立てます。

要支援1とは?

要支援・要介護度の区分において、最も軽い要支援1。具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

起き上がり、立ち上がりに支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態

食事や排せつなどの基本的な日常生活動作は自力で行えます。立ち上がり、起き上がりの一部に支援が必要だったり、家事や外出など手段的日常生活動作の一部に支援が必要になったりすることがあります。

さらに予防によって改善や、要介護状態に進まないことが見込まれる状態です。

要支援1の区分支給限度額

介護保険は、要支援・要介護度の区分によって、月額で給付額の上限(支給限度額)が決められています。上限を超えてサービスを利用する場合は、超過分が全額自己負担となります。

要支援1の区分支給限度額は月額50,320円で、1割負担の場合の自己負担額は5,032円、2割負担は10,064円、3割負担は15,096円です。

要支援1で活用可能な介護予防サービス

要支援と認定された人が受けられるサービスが、「予防給付」です。要介護状態になるのを防ぎ、可能な限り自宅で自立した生活を送ることができるよう、利用者の心身機能の維持回復を図り、利用者の生活機能の維持、向上を目指して実施されます。都道府県などが指定・監督を行う「介護予防サービス」と、市区町村が指定・監督を行う「地域密着型介護予防サービス」があります。

要支援1で利用可能な介護予防サービスは、下記です。

  • 訪問入浴
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリ
  • 通所リハビリ
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 短期入所療養介護
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売

要支援1で利用可能な地域密着型介護予防サービスの種類は、次の2つです。

  • 介護予防認知症対応型通所介護
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護

要支援1で施設に入れるの?

福祉施設や医療施設のショートステイ、小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホームなど)は利用できます。ただし、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護療養型医療施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は利用できません。

要支援1で利用できる、施設に通うサービス

通所リハビリ(デイケア)と認知症対応型通所介護を利用できます。
デイケアでは、生活機能向上のための機能訓練や口腔(こうくう)機能向上サービスを日帰りで受けることができます。

認知症対応型通所介護では、デイサービスの施設で認知症の利用者を対象とした専門的なケアを受けることができます。

要支援1の福祉用具貸与・購入費

利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送れるように、指定された事業者が利用者の心身の状況、希望、生活環境などをふまえ、適切な福祉用具を選ぶための援助、取り付け、調整などを行い、福祉用具を貸与します。介護保険の対象となる福祉用具は、要支援・要介護度によって異なります。要支援の人が利用できるのは、「手すり」「スロープ」「歩行器」「歩行補助杖」です。

要支援の人は、介護保険で手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖などが利用できる
要支援の人は、介護保険で手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖などが利用できる

貸与に向かない入浴や排せつに用いる福祉用具は、介護保険を使って購入できます。要支援の場合、「特定介護予防福祉用具販売」というサービスで、腰掛便座、自動排せつ処理装置の交換可能部品、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具の部品が対象です。

購入金額は、福祉用具の種類や事業者によって異なります。いったん購入金額の全額を支払い、申請することで介護保険の支給を受けられます。同一年度で購入できる限度額は10万円です。

要支援1の住宅改修費の支給

玄関や浴室、トイレなどに手すりをつけたり、段差をなくしたり、自宅で安全に暮らすための住宅改修のサービスが受けられます。区分支給限度額とは別に、20万円(区分に関わらず定額)を上限として支給されます。

要支援2とは?

一次判定で「要介護1相当」と判定されたのち、二次判定で要支援2と要介護1に分けられます。要介護1となるのは、心身が不安定で短期的に要介護度の重度化が予想される、または認知機能の低下などにより介護予防給付についての理解が困難である、といった場合です。要支援2となるのは、これらを除いたケースです。

身の回りのサポートが必要になる状態

要支援1の状態に加えて、片足での立位、日常の意思決定、買い物などについて一部介助や見守りが必要な状態です。要介護1との大きな違いは、改善の見込みがあるかどうかです。

買い物などで一部介助や見守りが必要な場合も要支援2に該当する
買い物などで一部介助や見守りが必要な場合も要支援2に該当する

要支援2の区分支給限度額

要支援2の区分支給限度額は月額105,310円で、1割負担の場合の自己負担額は10,531円、2割負担は21,062円、3割負担は31,593円です。

要支援2で利用可能な介護予防サービス

要支援1で利用可能な介護予防サービスに加えて、地域密着型介護予防サービスの「介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」を利用できます。

要支援2で施設に入れるの?

要支援1で利用できる施設に加えて、介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)が利用できます。

要支援2で利用できる、施設に通うサービス

要支援1と同様です。

要支援2の福祉用具貸与・購入費

要支援1と同様です。購入の場合の支給限度額(同一年度で10万円)も同様です。

要支援2の住宅改修費の支給

要支援1と同様です。

状態が進んだときは?

支援、介護が必要な状態が進み、利用するサービスを増やしたいときはどうすればいいでしょうか。区分の変更や再申請の方法について紹介します。

要介護に変更できる?

認定された要支援、要介護度の区分は有効期間がありますが、有効期間内であっても状態が著しく変化した場合は、要介護に変更するための申請ができます。担当のケアマネジャーとよく相談することが大切です。

要支援から要介護になると予防給付から介護給付に変更され、利用できるサービスが増えます。認定は申請日にさかのぼって発効されるので、急を要するときには認定結果が届く前にサービスを受けることができます。ただし、結果的に要介護に変更できなかった場合は、自己負担になるので注意が必要です。

サービスを継続して受けるには再申請が必要。期限が切れる60日前から再申請できる
サービスを継続して受けるには再申請が必要。期限が切れる60日前から再申請できる

再申請の方法

要支援・要介護度の有効期間は、初回認定は原則6カ月、2回目以降は原則1年です。継続してサービスを受けるためには再申請をする必要があります。有効期間が切れる2カ月ほど前に市区町村から再申請の案内が届きます。再申請の手続きができるのは、有効期間が切れる60日前から有効期間の最終日までです。新規の申請時と同様に、役所の介護保険課や高齢者福祉課など介護保険サービスの担当窓口で更新の手続きをして認定調査を受けます。

並行して進める介護予防

要支援と判定されると、地域包括支援センターが介護予防のためのサービスを適切に利用できるようにケアプランを作成します。予防給付のサービスだけではなく、地域の多様なサービスも利用します。要支援の人のケアプランは要介護状態を予防するためのものなので、サービスを提供する側は要支援の人をいつまでに改善、自立させるかという成果が求められます。

※次回、要介護認定の詳細について紹介します

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