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WATASHI 戸﨑美和が撮る当事者

「NORIKOさん」WATASHI 戸﨑美和が撮る当事者

写真家であり社会福祉士でもある戸﨑美和さんが、当事者の一瞬を切り取りました。どのようにファインダーをのぞいて、どういうタイミングでシャッターを切ったのでしょう。その内側の世界は?

「NORIKOさん」
「NORIKOさん」

わたしが彼女から学んだことは多い。
家族を持たず、ひとりでいたほうがずっと自分らしくいられる、って言葉。出会った頃は確かにわたしもそう思っていた部分があって、未来の自分を見ているような、そんな感じがあったのかもしれない。
この春、彼女はいない。

写真がニガテだったNORIKOさんがこの日、あまりに桜が綺麗だったからかな? 携帯電話しか持っていなかったわたしに、「いま撮ってよ」としっかり言った。言葉は多くないけれど、ここまで来るのに随分時間がかかったねって、そう思えた瞬間だった。

そのときのわたしはフレーミングなんかどうでもよくて、ただ笑顔の彼女と桜が1枚の写真に入ってほしい、その思いだけだった。すると、NORIKOさんが口角をそっと上げた。ほんと? 一瞬、涙がこぼれそうになった。

あのとき、NORIKOさんは未来のわたしだった。桜をみるたびに思い出すだろう。わたしの中にしっかりとNORIKOさんはいる。ふたりだけで話したことや約束は、きっと守っていきます。

「ねぇ、家族みたいにしてくれる?」

そのコトバの意味は、わたしもまだ探しています。NORIKOさんが佐世保で見ていた海、眺めてきましたよ! 佐世保バーガー、思っていた味と違ったけど(笑)。

戸﨑美和さんが、撮影中に交わしたキラリと光る“コトバ”を集めました。

「NORIKOさん」のコトバ

「佐世保っていいとこよ。新宿のほうが長いけど、好きかな」

「ほら、わたしひとりでしょ?  楽なもんよ」

「結婚? 考えたこともないわね」

「仕事は一生懸命やったわよ。歌舞伎町って言ったって、怖くないわよ」

「ギラギラしたのは嫌いよ。そうね、シンプルが一番」

「ウダウダしてるのは好きじゃないのよ」

「ねぇ、家族みたいにしてくれる?」

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