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「認知症だから運転やめて」と家族。散歩も禁止? 専門家が助言

認知症と診断された日から別人になるわけではないし、可能な限り自立していたいけれど……。専門家に聞きました。

Q 家族から運転、散歩などやめろと言われています。自分のしたいこともできないのでしょうか?

【答える人】

角田とよ子さん_500
wiwiwキャリアと介護の両立相談室長 角田とよ子(つのだ・とよこ)さん
御茶の水女子大卒。埼玉県立高校家庭科教員、お茶の水女子大学および共立女子短期大学勤務を経て2004年より社会福祉法人浴風会勤務。介護支え合い電話相談室室長として、のべ4万5000人以上の介護家族の悩みに寄り添った。2016年株式会社wiwiwにシニアコンサルタントとして入社、2017年より現職。
高瀬義昌さん_500
たかせクリニック理事長 髙瀬義昌(たかせ・よしまさ)医師
信州大学医学部卒。東京医科大学大学院修了、医学博士。麻酔科、小児科を経て2004年「たかせクリニック」を開業。在宅医療での高齢者医療、認知症のスペシャリストとして、厚生労働省の事業や地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務める。患者だけでなく医療関係者からも好かれる、愛とユーモアがたっぷりのドクター。

A 【角田さんより】認知症の人の運転で大きな事故が起こることが増え、社会問題になっています。家族はすぐにでも運転をやめてほしいと言うでしょう。一度でも怖い思いをした人は運転をやめる気になるようですが、抵抗がある人も多くいます。

自分がしたいことをするのは、生きる意欲につながります。しかし、こと運転に関しては、あなたが危険にさらされるだけではなく、他の人に危害を加えてしまうかもしれません。なにかあったら、責任は家族にもふりかかります。

一人で散歩すると迷子になったり、交通事故にあったりする可能性があります。

ドライブが好きなら、家族に同乗してもらって運転する、家族の運転でドライブに連れて行ってもらう、散歩を続けたいなら迷子になることを防ぐGPS機能がついたグッズを利用する、家族と一緒に散歩する、家族の会などのグループで散歩する企画がないか探してみるなど、100%いままでどおりでなくても、楽しめる方法を家族と一緒に考えてみましょう。

【高瀬医師より】自分のしたいことを制限されるのはつらいことです。しかし運転にしろ散歩にしろ、一人でおこなうには危険をともなうようになったら、やめることを考えましょう。

運転に関しては、みなさんご存じのように大きな社会問題になっています。運転者の危険、同乗者の危険、対人・対物の危険と、いくつものリスクがある運転は、やはり早い段階でやめることを考えるべきだとは思います。しかし、認知症の初期の段階で症状が軽度であれば、同乗して見守りながら続けることも可能だとも思います。

全国には、生活するうえで車が必要不可欠な患者さんがほとんどで、「認知症になったらやめなさい」と言うだけではすまない多くの問題をはらんでいます。ようやく、認知症専門医、自動車メーカー、国土交通省、警察庁、関連する研究者などを交えて、たとえば自動運転システムなどの改善策を模索する動きが出てきています。時間はかかりそうですが、今後の展開に期待しましょう。

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