認知症の病状が進む前にやるべきことは何ですか?専門家が回答
構成/別所 文
認知症と診断されたらーー。何か準備したいと思うもの。こんなときどうしたらいいのか、専門家に聞きました。
Q 病状が進む前にやっておくべきことはなんですか?
【答える人】
- wiwiwキャリアと介護の両立相談室長 角田とよ子(つのだ・とよこ)さん
- 御茶の水女子大卒。埼玉県立高校家庭科教員、お茶の水女子大学および共立女子短期大学勤務を経て2004年より社会福祉法人浴風会勤務。介護支え合い電話相談室室長として、のべ4万5000人以上の介護家族の悩みに寄り添った。2016年株式会社wiwiwにシニアコンサルタントとして入社、2017年より現職。
- たかせクリニック理事長 髙瀬義昌(たかせ・よしまさ)医師
- 信州大学医学部卒。東京医科大学大学院修了、医学博士。麻酔科、小児科を経て2004年「たかせクリニック」を開業。在宅医療での高齢者医療、認知症のスペシャリストとして、厚生労働省の事業や地域包括ケア、介護関連事業の委員も数多く務める。患者だけでなく医療関係者からも好かれる、愛とユーモアがたっぷりのドクター。
A 【角田さんより】自分で判断して意思決定ができるあいだに、自分がこれからどう生きていきたいか、どんな介護を受けたいか、延命治療を希望するかなど、まず自分のこれからの療養生活についてのおおよその希望を家族に伝えましょう。箇条書きでもいいので、記録しておくといいでしょう。快適な介護を受けるために、好きな食べ物、音楽、テレビ番組など、趣味嗜好も記録しておくことをおすすめします。
さらに、年金や資産、重要書類、貯金、契約している保険などを明らかにしておき、残された家族が困らないように、これからのことを任せられる人を探すことが大切です。
信頼できる専門家につながるために、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターに相談することも大切です。
【高瀬医師より】自分で決められるうちに決めるべきことはいくつかあります。しかしあれもこれも決定してしまおうと頑張るのではなく、「今の段階での指針」ととらえるといいでしょう。
ただ、資産や相続の問題、治療費や施設の入所費など、患者本人に必要なまとまったお金については、早めに明らかにして、ある程度の取り決めをしておかないと、大変なことになります。たとえば銀行に認知症のことが伝わると、本人の口座は凍結されて、お金を容易には引き出せなくなり、現金は本人の口座にあるのに、子どもたちが立て替えなければならないという事態に陥ります。判断ができなくなった本人に代わってお金や財産の管理、施設入所の決定などがおこなえる「成年後見人制度」がありますから、早めに調べて手続きをしておくと安心です。とくに認知症の症状として被害妄想があるようなケースでは、早めに後見人をつけることをおすすめします。
銀行に認知症のことを伝えるのは、いろいろな段取りを家族で話し合ってからにするといいですね。
<もっと知りたい>介護保険や成年後見人などの制度を解説