薬剤師が認知症を「自分事」として学ぶ機会に 和歌山県薬剤師会
朝日カルチャーセンター(共催・朝日新聞社)は認知症の人への理解を含め、ともに暮らす社会を考える「認知症フレンドリー事業」を展開しています。自治体や企業、学校などから依頼を受け主催者のみなさんと啓発活動に取り組んでいます。その取り組みの一端をご紹介します。
和歌山県薬剤師会は、県内の薬剤師を対象にした2025年度開催の「薬剤師認知症対応力向上研修会」で、「認知症フレンドリー講座」を採用しました。
「実は導入を決めたきっかけがあった」と、県薬剤師会の坪山晃大さんは話します。それは23年11月のことでした。紀の川市と岩出市を拠点に活動する那賀医師会在宅医療サポートセンターが、多職種連携強化を目的に岩出市で研修会を開きました。研修会に参加していた坪山さんは、そこで初めて「認知症フレンドリー講座」を受講したといいます。
「それまでは認知症の人に対するイメージは、漠然としたものしかなかったと思います。本人のお気持ちを考えるまでにはとても至っていなかった。でも、認知症になったとしても、私たちと何ら変わることはない。そう実感できたことが、とてもよかったです」
翌年に県薬剤師会の薬局機能向上委員会委員長に就任した坪山さんは「県内の薬剤師には、そういうところをまずは知ってほしい」と思い、年度の最初の研修として「認知症フレンドリー講座」の導入を決めました。
25年2月23日に田辺市、24日には和歌山市で開いた「薬剤師認知症対応力向上研修会」には県内から計90人の薬剤師らが集まりました。
研修会は3時間半以上の時間枠で実施することが求められているため、まず坪山さんが薬剤師を巡る社会情勢などの講話をした後に「認知症フレンドリー講座」を150分枠で実施し、さらにグループディスカッションを30分加えました。
認知症の人の気持ちを理解することが、「本当の対応力」につながる
これまで県薬剤師会が開く研修は医師や、地域で対応する専門職の講演などが中心で、どうしても医療的な観点からの内容になりがちでした。
「薬剤師にとって専門的な話はもちろん重要です。しかし、『本当の対応力』を考えた場合、それだけではどうしても表面的なものになりがちです。やはり、ご本人の気持ちを考えることができて、きめ細やかに接することができるようになることが大切ではないかと思います」
講座の進行は講師の話の組み立て方に加えて、認知症の人の視点を体験するVR体験などもタイミングよく位置付けられており、「参加者は引き込まれている様子だった」と坪山さんはいいます。
「私は那賀医師会在宅医療サポートセンター主催の講座から計3回受講しましたが、毎回新たな発見がありました。1回目は、認知症のご本人の視点や気持ちを知りました。2回目には、24年1月に施行された認知症基本法の趣旨は、本人の気持ちを考えれば当然のことが書かれていると理解しました。そして3回目は、この課題は社会全体で考えるべきものなのだと腑に落ちました。繰り返し受講することも必要だと思います」と坪山さんは語りました。
■開催日:2025年2月23、24日
■イベント名:令和6年度 薬剤師認知症対応力向上研修会
■実施内容:認知症フレンドリー講座
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