多彩な出演者が登壇、県民400人が参加「くまもとオレンジフェスタ」 熊本県

朝日カルチャーセンター(共催・朝日新聞社)は認知症の人への理解を含め、ともに暮らす社会を考える「認知症フレンドリー事業」を展開しています。自治体や企業、学校などから依頼を受け主催者のみなさんと啓発活動に取り組んでいます。その取り組みの一端をご紹介します。
認知症に対する新しい見方や考え方の理解を深め、認知症の人に寄り添う気持ちを育もうと、熊本県庁は2024年度に県内各地で啓発イベントを開催しました。
メインイベントは熊本市内で25年1月30日に開いた「くまもとオレンジフェスタ」。登壇者のダンス&ボーカルユニット「TRF」のダンサーSAMさんや認知症の専門医である松本一生さん、そして認知症の当事者のみなさんらが、それぞれの立場から自らの思いを語り、集まった約400人の県民が聴き入りました。
還暦を超えても第一線で活躍を続けるSAMさんは、「シニアの健康寿命を延ばすためにはダンスが役立つと考えている」と話し、途中に簡単なストレッチを採り入れるなどしながら、来場者とともに体を動かしました。「体を鍛えるのに遅すぎることはない。頭も体も使うダンスは認知症に備えるためにも有効」と運動の大切さを訴えました。

その後、朝日新聞(デジタル版)で「認知症と生きるには」を連載中の精神科医の松本一生さんが講演し、父親が認知症だというフリーアナウンサーの本橋馨さんの司会で、前出の松本さん、認知症の当事者である写真家の下坂厚さん、くまもとオレンジ大使の松本力さんと妻の和子さんによるトークセッションがありました。松本夫妻は自身の経験を語り、認知症について前向きに捉え、時に冗談を交えながら話す姿に、会場は笑顔に包まれました。
また会場となったくまもと森都心プラザ・プラザホールのロビーでは認知症に関する相談ブースが設けられ、認知症VR体験会も行われるなどして終始活気に満ちた様子で幕を閉じました。
「新しい認知症観」を県内に広めていくきっかけに
認知症の親の介護で定期的に天草市に滞在するという埼玉県在住の松浦久美さん(64)は、介護のヒントがほしくて参加したそうです。「やはり無理せず、たまには肩の力を抜くことも大事なんだと学べました」と感想を述べました。
県認知症施策・地域ケア推進課長の永野千佳さんは、イベントを振り返り、「いま提唱されている『新しい認知症観』を県内に広めていくきっかけをつくることができました。認知症のご本人が自分らしく生活を続けている姿なども伝えることができ、希望を持って暮らしていくにはどうすればいいのか考えることができました」と語りました。
熊本県は24年の10月には県北の山鹿市と、県南の芦北町の2所でも「認知症フレンドリー市民上映会」と「認知症フレンドリー講座」を開催。全県的なイベントになりました。
■開催日:2025年1月30日、2024年10月
■イベント名:くまもとオレンジフェスタほか
■実施内容:認知症VR体験会、認知症フレンドリー市民上映会、認知症フレンドリー講座
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