超党派の議連で認知症基本法案まとまる 認知症とともにある社会を目指す
取材/松浦祐子
認知症とともにある社会の実現に向け、認知症基本法制定の議論を進めてきた国会の超党派による議員連盟が5月9日、同基本法案をとりまとめました。「全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全かつ安心して自立した日常生活を営むことができるようにする」ことなどを基本理念として掲げ、国と地方自治体が総合的な認知症施策を計画的に行っていける態勢を整えるのがねらいです。今国会での法案提出を経て、成立を目指していきます。
法案の名称は「共生社会の実現を推進するための認知症基本法案」となりました。
2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人(約700万人)が認知症になると推計されています。誰にとっても認知症が身近になる社会を見据え、基本法案では、認知症施策の基本理念として、全ての認知症の人が自らの意思によって日常生活や社会生活を営めるようにすること▷国民が、認知症や認知症の人に関する正しい知識や理解を深めることができるようにすること▷認知症の人が意見を表明したり、活動に参画したりする機会を確保すること▷認知症の人だけでなく、その家族らへの支援も適切に行われること――など7項目を明記しています。
法案の内容を議論する過程で、認知症当事者らから、認知症に対して根強くある「“なってはいけない病気”とのイメージを強化しかねない」などと懸念の声が上がっていた“予防”に関しては、認知症に関する研究推進の理念の中で位置づけ、医学的な研究だけでなく、社会参加のあり方や社会環境の整備に関する研究も進めていくことでまとまりました。
こうした理念を実現していくために、政府は、認知症の人や家族らの意見を聴いた上で認知症施策推進基本計画を策定することとなりました。すでに政府には2019年に策定した認知症施策推進大綱がありますが、それを引き継ぎ、改定した上で、より推進力を高めることが基本計画には期待されます。
一方で、都道府県や市町村に対しては、認知症施策を実施していく責務があるとしたものの、計画策定については、自治体側の負担などを考慮し、努力義務にとどまりました。法律が施行された5年後をめどに行われる見直しの際の課題となりそうです。
法案をとりまとめた議連で事務局長を務める鈴木隼人衆院議員(自民)は、基本法が制定される意義について「認知症施策全般を取りあげ、方向性を示すもの。今後、認知症施策を進めていく上での旗印のようなものになる」と話しています。