「ぼけ」や「うつ」も多様性の一つ 溶け込む街を映す 孫大輔医師が語る

認知症や「うつ」を病気とだけとらえるのでなく、多様性の一つとして周囲の人が受け止め、支える街がつくれたら。そんな思いで地域で映画を制作した家庭医の孫大輔さんが、7月15日に開催されたオンラインイベント「映画とヘルスケア、認知症」(なかまぁる編集部主催)で語りました。

ゆるい繫がりで地域豊かに

認知症フレンドリーな取り組みがさらに広がっていくことを目指して、ショートフィルムを広く募集するコンテスト「なかまぁる Short Film Contest 2021(なかまぁるSFC)の関連イベント。

孫さんは、家庭医(総合診療医)として診療を続けるかたわら、「はっきりした目的はないけど、みんなが集う銭湯のような場所があれば、ゆるい繫がりができて地域が豊かになり、ウェルビーイングも目指せる」と活動をするなかで映画を制作。当時住んでいた東京の下町・谷根千(谷中・根津・千駄木)を舞台にメンタルヘルスと地域との関わりを描いた短編映画「下街ろまん」を2019年に制作し各地で上映しています。

講演で孫さんはまず、「下街ろまん」の舞台になった東京の「谷根千」について、「ちょっと怪しい人も普通に街に溶け込んでいる」と紹介。いろんな人の話を聞くうちに、この地域にたくさんある「銭湯」が人々のゆるい繫がりに大きな役割を果たしていることに気がついたといいます。「はっきりした目的はないけど、みんなが集う場所。そんな場所があれば地域が豊かになり、ウェルビーイングも目指せる」と地域活動を始めたといいます。「偶然の出会いや地域の繫がりで仲間が増え、一緒に映画をつくってみようということになりました」 

病気ではなく個性としての「ぼけ」

そのなかで、「認知症」についても「種類によっては診断や治療をしっかりする必要があるけれど、ただ『病気』と考えるのは浅いのではないか」と考えるようになったと言います。

「覚えておく」という能力が落ちていくときに、本人が対処するのではなく、周りにどんどん言うことで事前に備えることができる。メモを使ったり、会う人にお願いしたりすることで支え合うという考え方を紹介。

なかまぁるSFCの目指す「認知症フレンドリー」な映画のヒントとして、かつて「痴呆症」が「認知症」と名前を変えるときに語られなくなった「ぼけ」という言葉をあえて使うことで、「病気とは違う状態」を視野に入れるという、「宅老所よりあい」代表の村瀬孝生さんの考えを紹介。こうした視点がヒントになるのでは、と話しました。

ニューロダイバーシティー(神経多様性)というムーブメント

最後に孫さんは発達障害の研究分野で提唱されている「ニューロダイバーシティー」という言葉を紹介。

コミュニケーションは相互作用の問題なので、どちらか一方アスペルガーや発達障害を持つ側が悪いということはあり得ないこと、持ち方のどこからが正常といったことは言えず感覚や認知の持ち方の多様な個性の一つというもので、「基本的な人間観を変える力を持つ考え方」だと言います。

そして、老化の一種としての認知症もこの神経多様性の中に入る可能性もあり、変わるべきは認知症の人たち、彼らを治療したり、なってはいけないと予防するのではなく、それも多様性として考えて社会が備えていくげきものでは、と講演を締めくくりました。

孫さんのお話はこちらからご覧いただけます(Facebookグループへの参加が必要です)

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