~「通いの場」からの便り~ 

地域の支え合いを再構築する蒲郡市の形原一区町内会 一歩踏み込んだ運営がポイント

歩道の除草や清掃をする「お助け隊」=2020年春撮影、形原一区町内会「お助け隊」「まめだ会」提供

~通いの場からの便り~ 蒲郡市 形原一区町内会 お助け隊 まめだ会

全国に約29万団体ある町内会や自治会といった地縁団体は、住民の高齢化に伴い、活動を縮小する団体も出てきています。その中で愛知県蒲郡市の「形原一区」は、町内会を中心に地域コミュニティーの再構築に取り組み、成果を上げています。「お助け隊」と「まめだ会」といった通いの場の活動を通じ、一歩踏み込んだ助け合いや支え合いを実践しています。なぜ、「お助け隊」が始まったのか? 関係者に運営のポイントを聞いてみました。

ポイントチェック

  • 「自分の心と体の健康のためのボランティア」がコンセプト
  • 依頼があっても、やり過ぎないことが大切
  • チラシのポスティングをフル活用し、対面で表情の変化を読み取る
  • 住民へのアピールは参加者のモチベーションにつながる
  • コロナ禍でもできることを考える

たった1人の草刈り、ゴミ拾いから始まった

三河湾に面した保養地として発展してきた蒲郡市。「形原一区」は、形原漁港の後背地に発展した古い街です。約270世帯800人弱が暮らし、人口の7.5人に1人が80歳以上の高齢者です。

町内会の加入率はほぼ100%。9年前から町内会の総代で、「お助け隊」隊長でもある天野忠則さん(75)によると、10年ほど前のふとした気づきから一歩一歩積み上げてきたことがわかりました。

「私も2010年7月に65歳で定年退職しました。9年間、中国の現地法人で会社経営をしてきたので、これから65~70歳の間、何をやっていけばいいのか考えました。そこで自分の健康と人の役に立つことがいいと思いました。ある日、形原漁港をまたぐブルーブリッジ(形原漁港大橋)を歩いていると、橋の排水溝にダンプが落とした砂がたまり、草が生えていました。そこで草刈りや砂の撤去、ゴミ拾いを1人で始めました」

「後日、横浜から引っ越してきた人が『僕もお手伝いしたい』と声を掛けてくれました。それで、近所で関心がありそうな人に『公園の草取りや清掃をしてみませんか』と口頭で誘ってみたんです。すぐ十数人が集まりました」

これが「お助け隊」の始まりです。天野さんが総代になったのはこの後の2012年です。町内会の一つの活動として承認してもらったのは2013年。男性中心の「お助け隊」のコンセプトは、「自分の心と体の健康のためのボランティア」です。つまり、他の人のためにとなると上から目線になってしまうからです。町内会も「我が町は我らの手で」を合言葉に運営がなされてきました。2016年には、女性中心の「まめだ会」も始まり、今に至っています。

町内に配置するプランターに植えるサルビアは、毎年、種から育てている=2016年6月撮影、形原一区町内会「お助け隊」「まめだ会」提供

それぞれの活動に介護予防や高齢者生活支援の視点

60代の男性が中心の「お助け隊」の活動は、四つあります。

  • 公園や道路の除草や清掃
  • 高齢者家庭の支援
  • 町内のイベントへの協力
  • 町内170カ所へのサルビアのプランターの設置(花まちづくり)

こうした活動には介護予防や高齢者生活支援の視点も盛り込まれています。例えば、「高齢者家庭の支援」では、道路にはみ出している庭木の剪定(せんてい)や粗大ゴミの搬出、電球の交換など依頼される内容は多様ですが、天野さんは「やり過ぎないことが大切」といいます。

「依頼があれば何でも受け付けるのではなく、まずは『あなたの健康のために手の届く範囲は自分でやってみてください。手の届かないところがあれば私たちがします』と声を掛けるようにしています」

サルビアのプランター設置も、道路の歩道側に置くようにしてもらっています。子どもの通学時間帯に家の外に出て子どもにあいさつをしながら水やりをする仕組みにしています。

「家に閉じこもるのが習慣になってしまうと、着替えもせずにテレビを見て過ごす日々になってしまいがちです。私たちは、毎日、一歩でもいいから玄関の外に出て人とふれ合う機会をつくるためにはどうしたらいいか考えました」

水やりと通学時間を組み合わせることで、張り合いや生活のリズムにつながります。また、自宅前の道路や歩道は、隣家との境界線より1メートル隣家側に踏み込んで掃除をするようなルールもあります。

インターネット全盛の時代ですが、回覧板やチラシのポスティングをフル活用しています。一人暮らしの高齢者宅などを訪れて手渡しすることで、表情や声から異変を察知したり、悩みごとや困りごとを聞くことができたりするためです。サルビアのプランターを置く家庭には、2カ月後に追肥として巡回し、コミュニケーションをとっています。

居場所づくりとして始まった「まめだ会」は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前までは月2回のペースで開かれてきました。体操や小物づくり、茶話会などをしてきました。女性の参加者が37人で平均年齢は79.7歳、男性の参加者が7人で平均年齢は82.7歳です。このうち1人暮らしの高齢者が11人います。こちらもスタッフがチラシを配りながら声を掛けています。代表の松下幸代さん(66)は、運営のポイントについてこう話します。

「スタッフも無理をせず、楽しむことが大切です。参加者はスタッフの表情を感じ取りますから。嫌なことがあったらストレートにスタッフに伝えられるような雰囲気や関係づくりに気をつけています」

共通のベストを着て行う海岸清掃=2019年10月撮影、形原一区町内会「お助け隊」「まめだ会」提供

参加者が達成感を得られるような活動の工夫が継続につながる

こうした活動は、住民や地域にどのような変化を与えてきているのでしょうか? 天野さんは2021年1月にあった一つの出来事を話してくれました。

ポストに新聞がたまり、昼間でもカーテンが閉まったままの住宅があったそうです。一人暮らしのため、近所の住民が機転を利かせておにぎりや手料理を持って訪ねてみると、倒れていました。救急車を呼び、住民から報告を受けた総代は防災カードの緊急連絡先にあったいとこにスムーズに知らせることができたそうです。

「東日本大震災で『絆』という言葉が意味を持つ言葉として語られるようになりました。それまでは日常生活で『絆』という言葉をあまり使ってきませんでしたよね。でも、日ごろから『絆が強い町』は南海トラフ地震のような災害が起きても強いと思うんです」

天野さんは、毎回、参加者それぞれが達成感を得られるような工夫や準備をすることが継続につながるといいます。また、スタートアップについてはこうアドバイスします。

「まず同じような考えを持った同心を集めることです。町内会の役員だから『お助け隊』の役員をやってくれ、というのには無理があります。周囲が自然と認めてくれるまでは同心で活動すべきです。私たちはチームワークと住民へのアピールのため、共通のベストを作りました。これは参加者の意識向上にもつながりました」

また、松下さんはこうアドバイスします。

「単独の団体として活動するのではなく、町内会の活動の一つとして取り組まれた方がいいと思います。町内の住民に広く活動を周知できるからです」

体操をする住民=2020年11月10日撮影、形原一区町内会「お助け隊」「まめだ会」提供

閉じこもりで怖いのは要介護認定寸前の高齢者が増えてしまうこと

新型コロナウイルス感染症の感染対策でも独特な発想で活動をしています。室内での活動が多かった「まめだ会」は2020年12月、「青空まめだ会」を開催しました。松下さんは、その理由をこう説明します。

「コロナ禍で室内がダメなら外でやればいいんです。保健センターからは、コロナ禍で家の中に閉じこもっていると足腰が弱くなってしまうので(マスクなどの感染対策をしたうえで)住民が外に出るようにして欲しい、という話を聞いたからです」

同じ日の午後1時30分から午後3時の間にみんなが散歩に出て、決められた公園をコースに入れてもらうように呼びかけました。間隔をとりながら、一緒に体操をしました。

「コロナ禍でもできることはあります。より怖いのは介護保険で要介護認定寸前の人が増えることです」

一方、「お助け隊」は、感染対策に気をつけて活動を続けていますが、作業後の飲み会を中止しています。ざっくばらんに話せる機会は、建設的な意見が出てきたり、町内の異変を情報共有できたりするメリットがありましたが、感染対策を優先しています。

活動を見守る蒲郡市協働まちづくり課の尾嵜翔一さん(32)はこう話します。

「介護保険制度は20年が経ち、介護保険サービスがあたりまえになりました。一方で課題も出てきたと感じています。友人との井戸端会議に来なくなったと思ったら、デイサービスに通うようになったからだという話も聞きます。地域の支え合い、助け合いが弱まってきてしまっていると懸念しています」

市では「形原一区」をモデルに他の町内会に横展開してもらえるように取り組み始めています。2020年度には3町内会で同様の活動が始まりました。尾嵜さんはこう話します。

「『第2の天野さん』を各町内会につくっていけたら、蒲郡市がもっと暮らしやすい地域になっていくと思います」

青空音楽会「大学生によるミニコンサート」=2020年12月8日撮影、形原一区町内会「お助け隊」「まめだ会」提供
形原一区町内会
町内会が承認した団体として、「お助け隊」と「まめだ会」がある。町内会加入率が100%近く、緊急連絡先を記入した「防災カード」の提出も100%近い。民俗芸能の「七福神踊り」があり、その年の出来事を脚色して演じるなど、住民参加型のイベントが多くあります。65歳以上の人がいる世帯の割合は、蒲郡市内全体が41%なのに対し、形原一区は48%と高い。
厚生労働省「第9回 健康寿命をのばそう!アワード」(介護予防・高齢者生活支援分野) 厚生労働省大臣 優秀賞 団体部門受賞。

おことわり

記事は2021年1月27日にオンライン取材したものです。新型コロナウイルス感染症の流行状況によって活動内容が変わることがあります。

「地域がいきいき 集まろう!通いの場 厚生労働省」

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