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認知症の初期症状とは 専門家がチェックリストや診療科を徹底解説

年齢とともに物忘れが多くなると、「認知症かもしれない」と不安になることもあるでしょう。確かに、高齢者の5人に1人は認知症になると推計されている現在、誰が認知症になってもおかしくはありません。認知症の初期症状やチェック方法、不安なときはどこを受診すればいいのかといったことについて、認知症の専門医に教わりました。

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認知症の基礎知識
認知症の初期症状
チェックリスト
認知症の疑いがある時
認知症の予防について
認知症と診断されたら

認知症の初期症状について解説してくれたのは……

和田健二先生
和田健二(わだ・けんじ)
川崎医科大学認知症学教室教授
1992年鳥取大学医学部卒。同大医学部神経内科講師などを経て、2019年から現職。川崎医科大学総合医療センターにて、もの忘れ外来を担当。日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、日本神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医。

認知症の基礎知識

超高齢社会の日本において、認知症は身近な病気ですが、いまだに誤解されていることや理解が進んでいない点も多くあります。認知症とはどんな病気なのか、症状や発症しやすい年代、単なる物忘れとの違い、原因となる病気の種類について紹介します。

認知症とは?

認知症は、一度獲得した認知機能が、脳の病気などによって低下することで引き起こされる症状を総称した言葉です。症状によって、生活に支障が出ている状態を指します。

認知機能を低下させる原因となる病気は「原因疾患」と呼ばれ、最も多いのがアルツハイマー病です。そのほか、レビー小体病、脳血管障害などがあります。

認知症になるとどんな症状が出るの?

認知症は長い年月をかけて徐々に進行しているもので、ある日、突然発症するわけではありません。認知症というと、ひとり歩きをしたり暴言を吐いたり、1人では何もできなったりするイメージをもたれがちですが、こうした状態はある程度進行した段階です。最も多いアルツハイマー型認知症の場合、初期の症状としては物忘れが目立ちますが、生活の中で支援を工夫したり適切な治療を受けたりすることで、ある程度の自立した生活を送ることができます。

高齢でなければ発症しない?

認知症の最も大きな原因は、加齢です。このため、一般的には高齢で発症しますが、65歳未満で発症する場合もあり、「若年性認知症」と呼ばれています。高齢発症の認知症と比べて経済的な問題を抱えやすく、家族への影響も大きくなる傾向があります。また、症状が出ても年齢的に認知症を疑いにくく、受診が遅れやすいのも特徴です。事例は多くありませんが、若い世代でも認知症を発症するケースがあることを理解しておきましょう。

認知症と似ているようで異なる?「もの忘れ」や「軽度認知障害」

アルツハイマー型認知症の代表的な症状である物忘れは、加齢によっても増えていくものです。認知症による物忘れと加齢による物忘れは、どう違うのでしょうか。一般的には、加齢による物忘れは体験の一部を忘れるのに対して、認知症による物忘れは体験全体を忘れると言われています。例えば結婚式に出席したとして、加齢による物忘れの場合は、式場のホテル名や、食事の内容などを忘れるのに対して、認知症の場合は式に出席したこと自体を忘れてしまうといったものです。また、加齢による物忘れであれば、手がかりがあれば思い出せたり、後でよく考えたら思い出せたりすることもあります。

同じ「もの忘れ」でも、加齢と認知症では忘れる内容が違うと言われている
同じ「もの忘れ」でも、加齢と認知症では忘れる内容が違うと言われている

とはいえ、認知症の人でも初期であれば体験の一部だけを忘れることはありますし、物忘れだけで認知症かどうかを判断することはできません。判断基準となるのは、物忘れなどの症状によって生活に支障が出ているかどうかということです。

生活に多少支障は出ているけれど、工夫をすれば1人で生活できるといった状態は、認知症の一歩手前の段階である「MCI(軽度認知障害)」と呼ばれています。認知症になると物忘れが1日に何度も出てきますが、MCIの場合は全く物忘れをしない日もあれば、症状が出る日もあり、日によってムラがあるのも特徴です。

認知症の多くは、発症すると健常な状態に戻ることはできませんが、MCIの段階では、予防に取り組むことで健常に戻る場合があります。

代表的な認知症の種類

認知症は、原因となる病気によってさまざまな種類に分けられます。代表的なのが「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「血管性認知症」です。

なかでもアルツハイマー型認知症が最も多く、認知症の6070%を占めます。「アミロイドβ」というたんぱく質が、脳の神経細胞の外側に蓄積することで認知機能が低下すると考えられています。症状は認知機能の低下による「中核症状」と、それに付随して起こる「行動・心理症状」に分けられます。中核症状は記憶力の低下のほか、時間や場所、人の認識ができなくなる、段取りが悪くなる、場に応じた判断ができなくなるといった症状で、アルツハイマー型認知症になるといずれの症状も表れます。一方、行動・心理症状は、生活環境や人間関係などによって症状の表れ方は人それぞれです。多くみられるのは、怒りっぽくなることや、昼夜逆転などの睡眠障害です。

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に「レビー小体」というたんぱく質のかたまりができることが原因となり、発症します。実際にはいないはずのものが見える「幻視」が初期からみられるのが特徴です。そのほか手足のふるえや歩く速度が遅くなる、嗅覚の異常、便秘など、パーキンソン病と同じような症状が出ます。

血管性認知症は、脳梗塞など脳血管の病気が原因となって発症します。アルツハイマー型認知症と同様に物忘れや判断力の低下がありますが、アルツハイマー型と違って、一気に症状が進むケースもあります。また、脳の障害を受けている場所によって、しびれや麻痺、嚥下(のみ込む力)障害などを伴うこともあります。

認知症の初期症状

認知症のサインとなるような初期の症状には、どのようなものがあるのでしょうか。アルツハイマー型認知症を中心に紹介します。

認知症の初期症状とは?

アルツハイマー型認知症は、物忘れから始まるのが特徴ですが、初期は記憶の中でも数分から数十日前くらいに覚えた「近時記憶」や、体験した出来事である「エピソード記憶」から失われていく傾向があります。また「今日が何月何日かわからなくなる」といった「見当識障害」も比較的初期から出現します。日常生活では、買い物の際に小銭をうまく出せない、料理をする際に要領が悪くなってきたといった変化も表れやすくなります。こうした症状が毎日のように繰り返される場合、MCIや認知症が疑われます。

行動・心理症状では、以前と比べて怒りっぽくなる、ひがみっぽくなる、やる気がなくなるといった変化が表れやすくなります。

少しでも疑わしい場合は、チェックリストの確認or早期の受診を

今まで当たり前のようにできていたことができなくなった、といった変化があった時点で、一度は医療機関を受診し、認知症もしくはMCIなのか、健常なのか、今の状況を診断してもらいましょう。認知症はゆっくりと進行していくケースが多いので、自分も周囲の人も変化に気づきにくいことがあります。チェックリストを活用すると、認知機能や生活における変化に気づける場合もあります。

チェックリスト

認知症の多くは、治療によって根本的に治せるわけではありません。それでも早期発見したほうがいい理由はどこにあるのでしょうか。早期発見の医学的な効果や初期症状のチェックリストを紹介します。

早期発見の医学的な効果

現在は、アルツハイマー型認知症を中心に、症状を一時的に改善する認知症治療薬が増え、治療の選択肢が広がっています。認知症治療薬で早期に治療すれば、症状を緩和し、進行をゆるやかにすることが期待できるのです。

また、認知症の原因となる病気の中には、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍など、治療によって治る可能性があるものもあります。こうした病気は、早期に適切な治療を受ければ治りますが、治療が遅れると効果を期待できないことがあります。画像検査で発見できるので、こうした面からも早期に診断してもらうことが大切なのです。

早期発見の効果は、それぞれの生活状況によっても異なります。例えば認知症によって生活に支障が出たときに、1人暮らしの人は家族と一緒に暮らしている人に比べて、安心・安全が守られにくくなります。そうならないためにも早期に発見し、介護保険などの情報を得て、認知症への備えをしておくことが重要なのです。

※ 参考 初期症状のチェックリスト「知って安心認知症」(東京都福祉保健局発行)

認知症の疑いがある時

認知症かもしれないと思ったときはまず何をすればいいのか、医療機関を受診する際はどこにかかればいいのか……、認知症の疑いがあるときの対応についてご紹介します。

認知症の可能性を感じたら

まずはかかりつけ医に相談することをおすすめします。近年は、認知症に理解のあるかかりつけ医が増えています。かかりつけ医に相談したうえで、必要に応じて認知症専門の医療機関や専門医を紹介してもらうのがスムーズな流れです。

 どこで診断を受ける?

かかりつけ医による問診や認知機能テストによって診断されることもありますが、原因疾患を特定する場合は画像検査などを実施するため、専門医に詳しく診てもらう必要があります。特にレビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と治療方法が異なります。治療次第で症状が改善する場合もあるので、早めに専門医に診てもらうことをおすすめします。

医師が認知症を専門としているかどうかは、日本認知症学会日本老年精神医学会が認定する専門医資格が1つの目安になります。専門医資格を持つ医師は、それぞれの学会のホームページで検索できます。また、各都道府県には「認知症疾患医療センター」として認定された医療機関があり、専門医が常駐しているほか、介護・福祉施設、自治体と連携しています。お住まいの自治体にある地域包括支援センターの窓口で相談すると、こうした地域の医療機関を紹介してもらえるでしょう。

認知症を診る診療科には、脳神経内科、精神科、老年科、物忘れ外来などがあります。認知症を専門的に診ている医師であれば、どの診療科でも大きな違いはありません。ただし、行動・心理症状が強く出ているような場合は、精神科が向いていることもあります。

認知症の疑いがある人が病院に行きたがらないときには?

症状の程度や家族との関係などにもよるのでケース・バイ・ケースですが、まずは「本当に心配している」という気持ちを伝えることが大事だと思います。愛情のこもった家族の言葉が、本人の気持ちを動かすというのは、よくあることです。

行動・心理症状が出ていて難しい場合は、「認知症」という言葉は使わないほうがいいかもしれません。夫婦であれば「一緒に脳の検査を受けてみよう」などと誘ってみて、2人で受診するのもいいと思います。家族から伝えるのが難しい場合は、かかりつけ医や近所の人など第三者に伝えてもらう方法もうまくいくことがあります。「この年代になるとみなさん検査しますよ」などと言ってもらうと、スムーズなことも多いようです。

病院に行きたがらない場合には、家族の言葉が本人を動かすことも
病院に行きたがらない場合には、家族の言葉が本人を動かすことも

認知症の予防について

認知症を疑って受診した結果「認知症ではない」と診断されても、この先も認知症にかからないということではありません。これを機会に食生活の改善や適度な運動、禁煙など生活習慣を見直し、認知症予防に取り組むといいでしょう。

認知症と診断されたら

認知症と診断されたら、まずどんなことをする必要があるのか、家族としては何ができるのか、認知症との付き合い方について紹介します。

自分が認知症と診断されたら

認知症と診断されたからといって、日常生活が突然変わるわけではありません。これからどのように生きていきたいのか、ゆっくりと考え、その思いを誰かに伝えておくことが大切です。具体的には、自分にとって何が大切で、誰とどこでどのように過ごしていきたいのか、今後どのような医療や介護を希望するのか、といったことです。将来、病気になったり、介護が必要になったりしたときに備えて、こうしたことを家族や医療・介護関係者と話し合うプロセスのことを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)と言いますが、これは認知症に限らず大事なことです。

もう1つ大事なことは、いろいろな人とつながりを持つということです。地域で開催されている認知症カフェや認知症の当事者が主催している会などに参加して仲間をつくることで、将来的に必要になるかもしれない介護保険サービスなどについての情報を集めることができますし、認知症の先輩の話を聞くことで心が安らぐこともあるようです。

仕事をしている人は、職場にどのタイミングで、どのように伝えるのかということを考える必要があります。認知症に対する理解度には、職場によって差があるのが現状なので一概には言えませんが、立場が不利になるなどの理由で認知症であることを隠し続けるのは難しいかもしれません。職場の人も変化に気づいているケースが多く、認知症であることを伝えると「もっと早く言ってほしかった」と言われることもあるようです。

特に若年性認知症の場合は働いているケースが多いと思いますが、職場に伝える際には、ぜひ若年性認知症支援コーディネーターなど、認知症に対する知識や経験が豊富な人に付き添ってもらい、状況を説明してもらうことをおすすめします。伝え方によっては、職場での立場が悪くなることもあるからです。職場に伝えるのは勇気のいることだと思いますが、どのような形で働いていきたいのかなど、思いを整理して伝えるようにしましょう。

家族が認知症と診断されたら

認知症は特別な病気ではありません。これまで通り、家族の一員として接し、特別視しないことが大切です。前述したACPについても、日常生活の中でさりげなく聞き出せるといいですね。

人とのつながりは家族にとっても大事なことです。本人とともに地域の認知症カフェに行ったり、認知症家族の会などに参加したりして、専門職や認知症の家族がいる同じ立場の人たちとつながりをもっておくことは、今後の支えになるはずです。

認知症との付き合い方

認知症と診断されると頭が真っ白になって、医師の説明も耳に入らなくなるかもしれません。当然のことです。理解できるまで、何度でも話を聞きに行くといいと思います。また、認知症と診断されてどんな気持ちでいるのか、自分の思いを誰かに話すことも大切です。医師でも家族でも、医療を中心にいろいろなところとつながっていく中で、話を聞いてくれる人は必ずいるはずです。

認知症と診断すると、多くの患者さんが「家族に迷惑をかけたくない」と言います。確かに人にものを頼むときは「断られるかもしれない」と心配になりますよね。でも頼まれる側に立ってみると、よほどの無理難題ではない限り、快く引き受けるものです。同じように家族の介護をすることを迷惑だなんて思わないはずです。「迷惑をかけている」と思いながら介護してもらうと、介護する側にもそれが伝わり、ネガティブな関係性になることもあるのです。

長い人生において認知症という段階に入っただけで、その人自身が変わるわけではありません。記憶は失われていっても感情は残りますし、認知症だからこそ研ぎ澄まされる感性もあると思います。誰しも得意なこと不得意なことがあり、だからこそ人と人はつながり、補い合えるのではないでしょうか。人生を月に例えると、これからは満月から少しずつ欠けていく段階かもしれませんが、月は欠けていても美しいものです。毎日を充実させて、これからの人生も輝かせてほしいと思います。

※ アルツハイマー型認知症に関する記事はこちらにも
「アルツハイマー型認知症を専門医がわかりやすく徹底解説します」

※ レビー小体型認知症に関する記事はこちらにも
「レビー小体型認知症を専門医が解説 知っておきたい前兆やなりやすい人など」

※ 血管性認知症に関する記事はこちらにも
「血管性認知症を専門医が徹底解説 原因、治療、知っておきたい“予防法”」

※ 病院に連れて行く方法や相談先に関する記事はこちらにも
「家族の視点」

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