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みんなの居場所をつくる~認知症カフェ始めました

「オートロックの街」で新しいつながりを 千葉・ベイタウンかふぇ

みんなの居場所サイト
地元園児にプレゼントするため、折り紙で「吹きゴマ」を作った

JR海浜幕張駅の近く、東京湾に面してヨーロッパ風の街並みが広がる千葉市美浜区打瀬(うたせ)地区の幕張ベイタウン。1995年に入居が始まり、今では1km四方におよそ2万6千人が暮らすニュータウンです。ごみ空気輸送システムを備えた最先端のマンションが40棟以上立ち並ぶ街は、一方で「オートロックの街」とも言われ、住民同士の顔が見えにくいという問題を抱えています。そこで、認知症や介護について気軽に話せる場を作ろうと2016年1月、住民たちが「うたせ認知症を考える会」を結成。そのメンバーが世話人となって、17年4月に「ベイタウンかふぇ」がスタートしました。

住民の平均年齢は36.6歳 でも他人ごとではない認知症や介護

住民の平均年齢は36.6歳、高齢化率8.8%。全国平均より若い街ですが、認知症や介護の問題は人ごとではありません。故郷へ通って親を遠距離介護する人、逆に故郷から親を呼び寄せて介護をする人、配偶者が認知症になった人……。代表世話人の山木則男さん(68)も両親を岐阜県から呼び寄せ、介護しています。

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茶話会には様々なゲームが用意されているので、会話も弾む

「この近くに相談できる人がいなくて、問題を1人で抱えていました。そんな時、民生委員の仲介で、同じ悩みを持つ人と話すことになり、認知症カフェをやってみようと意気投合したんです。徐々に仲間が集まり、今では運営の中心となる世話人が17人、当日の進行を手伝ってくれるスタッフがおよそ15人まで増えました。心強いですよ。『おせっかいになろう』というモットーでやらせてもらっています」

かつて仕事一筋、今コミュニティへの恩返し

共同代表を務める黒澤浩一さん(71)も福島県で暮らす母親の遠距離介護を始めて7年になります。「今年、グループホームに入居するまでは月1回、実家へ通っていました。1999年にベイタウンに引っ越して来る以前は海外赴任が長く、仕事一筋の生活。私を含め、子どもたちが皆離れて暮らしている中でも母親が一人暮らしを続けられたのは、ケアマネジャーさんやご近所のお友達などが親身に見守ってくれたお陰です。これまで故郷に何も貢献できていなかった代わりに、終(つい)のすみかと考えているベイタウンで恩返ししたいと思ったんです」。カフェの運営を通じ、「愚痴を言い合えたり、経験にもとづいたアドバイスをもらえたり、ここでの活動が自分を助けることにもつながっている」と話します。

カフェは街の中心にある地域連携センターで、毎月第2水曜午後1時半にオープンします。11月の開催日に訪れると、すでに80人近い人が集まり、にぎやかな話し声が響き渡っていました。この日のプログラム、音大出身の三人組「安弾手(あんだんて)」による歌と演奏が始まると、「愛燦燦(さんさん)」「ふるさと」などの歌謡曲や童謡に合わせて参加者が足踏みをしたり、手のひらをグーパーと動かしたり、全身を使って楽しみます。

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安弾手の歌と演奏

後半の茶話会では、「ここに来て、知らん人と話すのがうれしい」と96歳の女性がにっこり。娘が暮らす幕張ベイタウンに福岡県から引っ越してきて、なかなか外に出かける機会がなかったそうです。

認知症が普通のことと感じられるように

別の一角では臨床心理士が参加者の相談にのっていました。その中には世話人の1人である70代女性と認知症の夫の姿も。「ここで心理士の先生と話をすることで、夫の病院に対する抵抗感がなくなったんですよ。介護で眠れない日が続くけど、今では電話一本で助けに来てくれる仲間がいるという安心感があります」

2時間半に及んだカフェは大盛況のうちに閉店。片付けの後、世話人らが集まっての反省会では様々な問題が話し合われました。「参加者が多くなり、スタッフの手が足りない」「この会場がいつまで借りられるのか」「若い世代にもカフェの存在を知ってもらいたい」。課題は種々ありますが、代表世話人として山木さんがメンバーにこう語りかけました。「この地域にとって、認知症が普通のことと感じられるように頑張りましょう」。その日が来るまで、ニュータウンの一角で「ベイタウンかふぇ」は続きます。

<カフェデータ> ベイタウンかふぇ

住 所: 千葉市美浜区打瀬2丁目、幕張ベイタウン・コア隣の地域連携センター

連絡先: 電話043-211-0588(中澤さん)

開催日: 毎月第2水曜

時 間: 13:30-16:00

費 用: 無料

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