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高齢社会に広がる「車レス介護スタイル」 紙パンツのネット購入で気になる宅配は無地段ボールや置き配の時代へ

イメージ(イラスト・ゆぜゆきこ)

親を介護したり生活サポートしたりしている50代の子世代は、今、コストパフォーマンス(コスパ)とともにタイムパフォーマンス(タイパ)を大切にしています。「通い介護」や働きながら在宅介護をするこの世代にとって、日用品から高齢社会の消耗品である大人用紙パンツなども、AmazonなどのECサイトを使って代理購入するライフスタイルが広がってきているようです。朝日新聞社なかまぁる編集部と花王「リリーフ」の共同プロジェクトでは、紙パンツの利用者に代わって購入する家族に聞いてきました。

紙パンツ拒否の父親 10カ月で受け入れられた長女のテクニック

ケース① 青森県の父親の介護のため実家に戻った東京都の女性

2022年9月、自宅がある東京から青森県内の実家に戻り、父親(90代)と暮らし始めた長女(60代)は、今、近くの介護施設で働きながら介護をしています。父親は介護保険の要介護認定では要介護1です。もともとスポーツをしていたこともあり、今でも調子がいいときは自転車で近所を走っているほどです。介護保険で自宅に手すりなどをつける工事はしていますが、デイサービスに行くことは拒んでいます。「ちいちいぱっぱは、死んでもやるものか」と長女に話しているぐらいです。

頑固な父親も、少しずつ老いてきていることには親子共に気づいてはいます。

「布パンツに尿漏れがあるんです。そうすると股引(ももひき)や寝間着にも色がついちゃう。私も仕事をしながら食事もつくるので何度も紙パンツを使うようにお願いしました。父親はトイレには自分で歩いて行けるし、尿漏れなどないと思っているので、昨年9月に薦めてまともにはきだしたのは今年の7月からです」

頻尿で尿漏れがあり、長女にとってもトイレの介助の負担や尿漏れの臭いを感じているものの、代表的な企業でサラリーマンをしてきた父親にとって、介護されている姿を周囲にさらすことは「沽券(こけん)に関わる」と思っているのかもしれません。

長女はどのように工夫したのでしょうか。まずは、カラーボックスに、シャツ、股引、ソックス、紙パンツを棚に見えるように置くことにしました。タンスの引き出しは出しにくく、分かりづらいからです。入浴は導線が分かりやすいように色で統一して浴室へ誘導。自立支援のため、面倒くさいな、拒否したいなと思われる要因を極力排除して、安心して過ごせる空間として演出しました。

「認知症でなくても、年相応のもの忘れにより、できなくなることが増えてきて悩む人もいます。たぶん、父も悩んでいるんだと思います。『一つ一つのことに時間がかかって、時間がいくらあっても足りないんだよ』と泣きそうに話していたことがありました。父親がへこまないように、悲しまないように工夫しています」

高齢者は誰でも加齢とともに認知機能が落ちてきます。面倒くさくなることもあります。だから、シンプルに行動できるように変えました。紙パンツも専用のゴミ箱に捨てることを求めるのではなく、長女は「(布パンツのように)洗濯機に入れていいからね」と声をかけ、後で取り出して処分するようにしてきました。できるだけ父親のこれまでのルーティンを変えないように工夫しています。

「『長距離で飛行機に乗るときは紙パンツをはく人がたくさんいるんだよ』『オムツを当てているわけではないので気軽に使うもの』といっても理解してくれませんでした。それより生活の中に落とし込んで簡単なメッセージを伝える方がいいようです。私の場合は『素材とはき心地が違うだけ』といって、毎日の着替えを並べておく中で、パパも材質が違うだけで同じパンツなんだと捉えるようになりました」

イメージ(イラスト・ゆぜゆきこ)

介護する側の家族の人生も考えるとネットスーパーを使わない手はない

老いを隠せない父親ですが、長女が仕事にでているときは、宅配便の受け取りをしてくれることもあります。その中には無地の大きな段ボール箱に入った父親用のかわいいパッケージの紙パンツのセットも含まれています。

「紙パンツの利用を始めたといっても、紙パンツが描かれたパッケージの袋が居室にあることにはまだまだ抵抗があるようです。身近なところにあると父親も落ち込むのでしょう。今は押し入れに段ボールを入れています」

公共交通機関が不便な実家のある地域では自動車は不可欠ですが、この長女が事故を起こすようなことがあると父親の毎日の生活に支障が出ることが懸念されます。長女は車を手放し、インターネット上のスーパーやECサイトを駆使して買い物をするように変えました。時間もコストも事故のリスクも抑えられるからです。

「股引やステテコ、トイレのスリッパ、カーテン、植木鉢……。何でもネットスーパーで買い物し、週1回届けてもらっています。東京の有料老人ホームで暮らしていたおばにも、青森からネットスーパーを利用してお菓子を届けていました。これからの時代、自分の時間を削って親の介護をどこまでやるのか悩む人も多いでしょう。それなら、ネットスーパーなどは必須のツールであると思います。今は置き配もあるので」

こう考える長女の夢は、介護施設でキャリアを積み、たくさんの臨床事例を学びながら、いずれは音楽療法士の資格も得ることです。夕暮れ時に晩酌をする父親にも、『浜辺の歌』や『ふるさと』をピアノで弾き続けています。

老人ホームのママに毎日会うため パンツのようにうすい紙パンツを望んだパパ

ケース② 兵庫県から東京都まで父親の遠距離介護に通う長女

兵庫県に住む長女(50代)は、4~5年前から月の半分ほど上京し、東京都内のマンションで暮らす認知症の母親(80代)を父親(80代)と一緒に介護してきました。しかし、病気の進行もあり、母親は今、近くの有料老人ホームに移りました。父親は、同時に、仕事をできるだけ長く続け、外に出て、人と話をして、頭を動かすことが健康に大切だというライフスタイルを貫いてきましたが、足腰も弱くなり、1年ほど前、母親のケアマネジャーに勧められて介護保険の要介護認定を受けたところ「要支援2」でした。

訪問介護員に週2回来てもらい、近くの公園を1時間ほど散歩したり、トレーニングマシンを使うスポーツジムに似た機能特化型デイサービスにも週2回通ったりして、フレイルやサルコペニアによって筋力や体力が落ちないように努力しています。そんな父親が紙パンツを使うようになったのは2023年3月からです。男性の高齢者に多い、前立腺肥大による尿の通過障害とみられる症状で頻尿や残尿などでトランクス型の布パンツを汚してしまい、吸水パッドを使っていてもずれてズボンまで尿がしみてしまうからです。

「提案があるんだけど」「嫌だったらいいよ」とやさしく声をかけました。尿取りパッドと紙パンツを併用すれば、ズボンまで尿がしみてくることがなくなるし、尿取りパッドだけを取り換えればいいと説明しました。周囲の人のサポートを受けながらも「仕事が生きがい」と考え、母親も介護してきた父親には落胆もあったようです。

「『ママと一緒のものを付けることになってしまったのか……』といっていましたね。父親は要介護3の母親が利用するゴワゴワしている紙パンツを連想したようです。私に『パンツのようなうすいのないかな』と聞いてきました」

インターネットでAmazonのサイトを検索すると、下着のような超うす型の紙パンツがでてきました。

イメージ(イラスト・ゆぜゆきこ)

買い物はネット 理由は介護する家族も楽をしたいから

父親が歩きやすい超うす型の紙パンツを望むもう一つの理由があります。

「近くに住む兄が車で送り迎えしますが、近くの老人ホームで暮らす母親(父親の妻)に毎日歩いて会いに行き、個室で日中を一緒に過ごしているからです。『ママのためにあと2~3年は生きたい』ともいっています」

両親が暮らす自治体では、要介護3以上で寝たきり状態の人には、紙パンツを支給する制度がありますが、多様なタイプやメーカーの紙パンツや尿取りパッドがメニューにあるのは、その一部です。長女は母親のときも要介護3になる前は、Amazonで紙パンツを購入していました。

「兵庫から東京に通って介護をしているので、新幹線に乗っている時間さえもったいないと感じています。買い物も同じ。時間を取られたくないし、自宅に配達してくれるのでありがたいです。介護する家族も楽をしたいのです。ネットで購入しても、ポイントが多くたまるキャンペーンがあるし、買い物をすればポイントがたまっていきます。Amazon定期おトク便を使えば、それだけで割引になります。スマートフォンでの買い物は欠かせません」

使う人の生活を考えて上手にチョイスすることが大切

ケース③ 大病院近くのマンションで暮らす自家用車がない夫婦

60代の夫と妻の日課は、丘の上のバス停まで歩き、路線バスに乗って駅前のカフェに通うことです。夫婦にとってのリハビリです。夫は病気の後遺症で障害を抱え、新たな病気も見つかり、体が動かしにくい状態です。要介護1です。

夫は今、日中は「ちょい漏れパンツ」(吸水パッド付き布パンツ)を使い、夜は紙パンツと尿取りパッドを使っています。寝室からトイレまで5メートルほどですが、焦ると小刻み歩行になって間に合わなくなってきたからだそうです。訪問介護員として働いた経験のある妻は、こう考えています。

「ぬれた布パンツをそのままはいていると肌が荒れますよね。年を取ってくるとズボンがぬれていても気づかなくなってしまっている人もいます。紙パンツはお金がかかりますが、頻繁に替えられるのがいいところです」

子どもがいない夫婦のため、大病院に歩いて行けるマンションに引っ越しました。そのため、自家用車の必要性は感じていません。買い物は、パソコンで利用するECサイトを通じて注文し、宅配してもらうのが基本です。

「日用品は生協の宅配でお願いしています。Amazonは私が使うものが主ですが、クーポンがあると介護用品も買っています。お酒はたまたま安かったのでYahoo!ショッピングを使っています。重い物、かさばる物、すべて運んでくれますので近くにスーパーがなくても車がなくても不便は感じません」

ただ、紙パンツを宅配してもらっていますが、購入するのはお徳用パックを2~3個です。マンション生活は収納の問題があり、生活空間に紙パンツの袋を出しておきたくないからです。

「動けるっていううちはなるべく動く方が良いと思うんですね。紙パンツも今、どんどん新しい、いいものが出てきているから、使う人の生活を考えて上手にチョイスすることが大切です」

イメージ(イラスト・ゆぜゆきこ)

高齢社会は家族の買い物サポートが重要な時代

高齢社会が進み、住民の購買力が落ちた地域ではスーパーや商店が閉店し、かつ運転免許の返納もあり、「買い物弱者」が大きな社会課題になってきています。介護で利用する紙パンツや洗剤などの消耗品はかさばるため、家族の買い物サポートが重要になってきています。

ドラッグストアやホームセンター、ショッピングセンターなどの棚にあるものから探す人もいれば、インターネットの特性を生かし、検索で利用者に合った最適なタイプを選んで商品購入する人もいます。介護の洗濯の負担が重くなることを避けるため、厚めで吸水回数が多い紙パンツを選んでしまう家族も少なくありませんが、歩きやすい紙パンツを選んで日常生活動作(ADL)の低下をできるだけ防ぐという視点でも考えてみませんか。

「ECサイトを利用したことがない」「日用品はECサイトで買わない」という人のほか、「ネット購入は配送料も含めると高いのではないか」と感じている人もいますが、今回取材したケースで分かるように、親の介護から子世代の買い物の負担を軽くすることも大切な点です。また、紙パンツの購入を周囲に知られたくないという高齢者も少なくありませんが、シンプルな段ボールだったり、置き配があったりする時代になりました。「通い介護」や「共働きで介護」という子世代が多くなってきている現在は、ポイントや割引の定期便なども上手に使うと、タイパを含め、やりくり上手な介護や生活サポートができます。

おことわり

なかまぁる編集部と花王「リリーフ」では共同プロジェクトを実施しています。この記事で登場する方々は、6月16日~8月20日にかけて実施した「親や配偶者の尿漏れ・トイレの悩み解決に関する意識調査」の回答者の中から、追加取材にご協力いただける方にご協力いただいたものです。意識調査、追加取材ともに、花王「リリーフ」に限らず、大人用紙パンツを利用されている方に広くご協力いただきました。インタビュー内容は取材時点の状況です。

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