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免許返納前にドライブがしたい、認知症でも消えなかった恋心と友情

イラスト・ふくいのりこ

 認知症になると、それまで抱いてきた関心が弱まることがよくあります。しかし、誰もがそうなるとは限りません。認知症になっても若い頃のときめきを忘れずに持ち続ける人はたくさんいます。今回はそんな血管性認知症の男性と、友人の話です。個人情報保護のために事実の一部を変更し、仮名で紹介します。

■続いた友人関係

 長縄省吾さん(68)は小中学校を卒業し、大阪市南部の高校、大学に進学しました。中学1年の時に同じクラスとなり親友になった鈴木三郎さんは高校、大学は父親の赴任先であるシンガポールで過ごしましたが、帰国後は関西の会社に勤務し、今もかつての実家に家族と住んでいます。

 鈴木さんが休みに帰国するたびにふたりは会い、長縄さんが運転する車で様々なところに出かける付き合いが続きました。

 私も彼らと中学校からの同級生ですが、高校からは別々の人生を歩んできました。

 10年前に彼が私のクリニックに受診してきたのが、思いがけない再会でした。

 外来予約表に「長縄」という珍しい名前を見つけた私は、同級生の長縄君だとは気づかず、妻と鈴木さんと共に診察室に入ってきた彼を見て驚きました。

■自主返納の前にしたいこと

 彼はその時、まだ現役でしたが血管性認知症になっていて、私の診断次第で自動車の運転免許を自主返納するために受診してきたのでした。

 長縄さんは若いころから車マニアで、外国産のGTIというスポーツタイプの「ぶっ飛ばせる」車に乗っていました。

 一連の検査が一段落して血管性認知症初期の診断がついたころ、彼の妻が席を外した際に長縄さんが私に話しかけてきました。

 「なあ、まっちゃん、診断を受けて車の免許は諦めることにした。でも、返納する前におれな、やりたいことがあるんや。鈴木とドライブしたいけど、許してくれるか」

■妻には内緒にしてほしい

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(精神科医・松本一生)朝日新聞(デジタル版)2026年04月01日掲載

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