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認知症が血液検査でわかる日は来る? 活用が本格化、専門家の懸念も

アルツハイマー病の早期発見を目指す研究で、採血を受ける市民=2023年9月

 代表的な認知症であるアルツハイマー病の診断に、血液を活用する試みが本格化してきた。原因物質とされるたんぱく質の存在を検知する試薬を米食品医薬品局(FDA)が5月に承認。症状の進行度合いを正確につかめるという別の検査法も論文発表された。将来、アルツハイマー病は採血だけで診断し、治療を受けることになるのか。

■検査の負担、軽く

 FDAが承認したのは、たんぱく質「アミロイドβ」が脳の中でたまっているかどうかを、血中成分の分析によって判断するための検査試薬。富士レビオ・ホールディングスの子会社「富士レビオ・ダイアグノスティクス」(本社・米国)が申請していた。

 認知症の兆候や症状を示している、55歳以上の人が使用の対象となる。

 症状の進行を抑えるとして日本でも2年近く前に承認されたレカネマブ(商品名レケンビ)などの治療薬は、脳にアミロイドβがたまっていることを事前に確認する必要がある。現在はPET(陽電子放射断層撮影)という画像診断や、脳脊髄(せきずい)液の分析によって、アミロイドβの有無が調べられている。

 だが、PETの装置がある施設は限られるうえ、検査費用が高額になる。脳脊髄液を採取するには背中側の腰の部分に針をささなければならず、検査を受ける際の体への負担が大きいのが課題だった。

 FDAは承認にあたって、「2050年までにアルツハイマー病患者は倍増すると予想されており、(血液を用いる今回の手法は)患者にとっての助けになるだろう」とコメントした。

 この検査試薬は、日本でもこの夏の承認申請をめざして準備中だという。

■症状の進行を把握

 論文発表されたもう一つの検査法は、やはり脳内にたまり、神経細胞の死に関わっているとされる「タウ」というたんぱく質の脳内での状態を、血液で調べるというものだ。

 米ワシントン大などのグループが3月末、医学誌ネイチャー・メディシンで発表した。脳から血液中に漏れ出ている特定のタイプのタウを検出する。

 症状が進むのに応じて、血中でこのタウの濃度が高まっていくことを確認した。ワシントン大特任准教授で、エーザイの研究部門の部長でもある堀江勘太さんは「アルツハイマー病の症状が起きてからの進行度合いを、血液を使って客観的につかむことができるようになる」と話す。

■手軽なだけに……専門医の懸念

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(田村建二)朝日新聞(デジタル版)2025年05月31日掲載

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