認知症とともにあるウェブメディア

新しい認知症観へ ネット空間では分からない 歴史発掘の必要性

認知症の歴史を伝える本

■メディア空間考 松浦祐子

 最近、認知症に関する歴史をまとめる仕事に携わっている。その一環で色々と調べものをしていて再認識したことがある。ウェブ上にある情報だけでは、過去の実態を知るのは難しいということだ。

 「認知症 歴史」と検索すれば、わかりやすくまとめられた年表や解説は見つかる。近年の資料や事例も多くある。だが、インターネットが普及する前の時代の実像を伝える記録やリポートは乏しい。当時、秀逸なルポルタージュやドキュメンタリーが生まれているにもかかわらずだ。

 かつての人々の認識やケアの実態を知ろうと、専門家から薦められた数冊の本にも目を通した。そこには、古代や中世までさかのぼって認知症が社会でどのように位置づけられていたか、2004年に厚生労働省が「痴呆(ちほう)」から「認知症」へと呼び方を変更する前の痴呆病棟の様子、家庭で認知症の人が「座敷牢」と呼ばれる部屋に閉じ込められることがあったことなどが記録されている。

(松浦祐子)朝日新聞デジタル2024年10月01日掲載

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