こみあげる怒り、なぜ抑えられない?血管性認知症男性が見つけた目標
脳内にはたくさんの細かな血管があります。その細い血管に血液のかたまり(血栓)や脂がつまると(塞栓(そくせん))、その先の血管には血液が流れず、酸素が運ばれなくなり脳細胞は活動しなくなります。それが「微小脳梗塞(こうそく)(ラクナ梗塞)」といわれる小さな脳梗塞です。たくさん集まることで脳の働きが低下する血管性認知症の多発梗塞性認知症は、このようにして発症します。今回も個人情報保護のため事実の一部を変更し、仮名で紹介します。
■暴飲暴食やめられず 45歳をすぎ糖尿病、高血圧症…の診断
橋端保さん(68歳、男性)は、50歳を過ぎたころから内科かかりつけ医に通院しています。若いころは剣道の選手として活躍してきましたが、体格や体力に自信があったことが災いして、学生のころからの暴飲暴食をやめられませんでした。入社した商社も(当時は)体育会気質で、何かあると先輩と飲み明かしました。45歳を過ぎた頃には、糖尿病、高血圧症、脂質異常症の診断がつき、内科かかりつけ医から食事に気を付けるよう指導されました。それでも「体力には自信がある」と医師の言葉を無視してきました。
そんな彼が、定年後に嘱託勤務となり66歳を過ぎたある日のこと。取引先との電話でのやりとりがこじれ、先方が会社まで謝罪のためにやってきました。先方が非を認め詫(わ)びに来たのですから、笑って許すはずです。ところがその日、橋端さんは自分でも(後から振り返ってみると)、おかしいと思うほど自分の感情が抑えられなくなってしまい、謝罪する相手に暴言を吐き続けました。
■大学病院を受診、血管性認知症と判明
それを見ていた同僚や上司が、感情のコントロールを失っている彼に驚き、会社の産業医を通して大学病院を受診するよう勧めました。その結果、「血管性認知症(多発梗塞性認知症)」との診断を受けました。生活習慣病のために脳内にたくさんの微小脳梗塞ができ、それが血管性認知症の原因となりました。
妻は、会社の人事からの連絡、そして医療機関の説明を受けて愕然(がくぜん)としました。50歳を過ぎてから頑固になり、怒りを出すようになった夫に気づいていましたが、それはあくまでも中年以降の男性が「くどく」「怒りっぽく」「考えを変えなく」なる、といった年齢なりの変化だと思っていたからです。大学病院で認知症と告知を受けた時も、同伴していた妻は担当医に「普段からの性格です」と反論したぐらいでした。
■「怒りの暴走を止めて」悲鳴のような訴え