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年末年始 コロナとインフルの同時流行に備える 飲んでいい解熱剤は?

体調管理のために備えておくべきこと。ワクチン、薬、検査キット

いよいよ年末年始。帰省をするなどして、久しぶりに家族や親族、友人たちと会うことを楽しみにしているかたも多いことでしょう。ただ、依然としてコロナ禍は続いていますし、インフルエンザの流行も心配されます。楽しい時間を過ごすためにも、体調管理には万全を期したいものです。救急医療に詳しい志賀隆・国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)に、特に年末年始を控え、備えておけばよいこと、体調が悪化した際の対処法について教えていただきます。

年末年始の体調管理について執筆してくださるのは……

志賀隆医師
志賀隆(しが・たかし)医師
1975年、埼玉県生まれ。千葉大学卒、米ハーバード大学大学院卒、医学博士、公衆衛生修士、日本救急医学会救急科専門医・指導医。米メイヨー・クリニック、同ハーバード大学マサチューセッツ総合病院、東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て21年4月から国際医療福祉大学医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)。救急や医学教育関連の著書・論文多数。

新型コロナやインフルに備えるためには

みなさん、年末年始はゆっくり楽しく過ごしたいですよね。医療関係者も同じです。こうしたことから、多くの医療機関では年末年始の態勢が減員となって運営されることになります。そうするとどうなるか……。体調が悪くなって受診しようと病院に行くと、「もれなく長~い待ち時間が待っている」ということになりがちです。
体調もつらいのに長く待たされるとさらにつらいところです。これを避けるためにみなさまには以下の3つをお願いしたいです。

・新型コロナワクチン、インフルエンザワクチンの接種
・自己検査キット(新型コロナウイルス用、手に入ればインフルエンザとの同時検査用)
・解熱剤(アセトアミノフェンやイブプロフェン)の準備

では、それぞれについて、詳しく解説していきます。

新型コロナワクチン、インフルエンザワクチンの接種

医学の発展や社会の対応のおかげで、新型コロナウイルスはワクチンを複数回打っていれば、重症化する可能性がかなり減ってきました。現在、コロナウイルスの複数のワクチンがありますが、いずれも「感染予防効果には限界があるが重症化予防効果は期待できる」という状況です。

当初の武漢株のためのワクチン接種が始まった頃には感染そのものを予防する効果も確認されていました。しかし、その後、アルファ株、ベータ株…オミクロン株など様々な変異株が出てくる中で重視すべきなのは感染予防効果よりも重症化や入院予防効果の方ではないかと考えられるようになっています。

※新型コロナワクチンの効果については、こちらをご参照ください。

実際、5人家族でコロナが猛威を振るったときに、4回ワクチンを打ったおばあちゃんはのどが少し痛い程度で、そのほかのワクチンを接種していなかったお父さんお母さん子ども2人は高熱で大変だったという事例を聞いたこともあります。

新型コロナとインフルエンザの同時流行も心配されます。この2つのワクチンの接種時期は、間隔をあける必要はありませんので、打てるときに、それぞれ接種しておけばよいでしょう。

集団免疫について

新型コロナでもインフルエンザでもワクチンの接種が進み、人口の一定割合以上の人が免疫をもつようになると、感染症が流行しにくくなることが分かっています。これを集団免疫と言います。何度もワクチンを接種している人の中には「もうそろそろ、集団免疫ができているのではないか」と期待されるかたもいると思います。けれど、残念ながら、新型コロナワクチンの接種で、集団免疫の効果があるのかどうかは、まだ、分かっていません。
年末年始の後には、入学試験や卒業式、入学式といったことも控えています。社会全体に感染が広がってしまうと、どうしても、そうした人生における大切な行事なども控えるということにつながりかねません。会合や会食、旅行などが制限されるようになると、さまざまな職種のみなさんにも影響が及びます。そうした人々を守るためにも、ご家族・ご友人・ご職場を守るためにも推奨されるワクチンを接種していくことをお願いしたいところです。

オミクロン対応ワクチンについて

特にオミクロン株対応ワクチンについては直近のファイザー社の発表で「BA.4」「BA.5」について抗体価(感染予防や重症化予防につながる抗体の量)がもともとのワクチンと比べると多く作られるということが分かっています。当初使用されていた武漢株対応のワクチンでもオミクロン株に対応する抗体の上昇が確認されてはいます。ただ、「BA.4」「BA.5」対応のワクチンが打てるのであれば現在の流行に合致するので、そちらの接種をご検討いただけたらと思います。

自己検査キット(新型コロナウイルス用、手に入ればインフルエンザとの同時検査用)

東京都や千葉県などでは市販の検査キットを用いて自己検査をしたあとに専用のウェブサイトを使用することによって新型コロナウイルスの陽性者であることをシステムに登録することができるようになっています。寒い年末年始に医療機関の救急や時間外外来に行って体調不良の中、不安を抱えて長時間待つのはつらいものです。医療関係者も人数が少なくなっていて、温かい声掛けを受けることもなかなか難しいかもしれません。それらを一気に解決するのが自宅での検査です。12月には新型コロナとインフルエンザの感染を同時に自宅で検査できるキットの一般販売が開始されました。備えとして、こうしたキットを準備しておくことをお勧めします。

解熱剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)

重症化リスクがなく、ワクチンを接種している人については、自己検査をして新型コロナやインフルエンザの陽性疑いとなった場合には、自宅療養となる可能性が高いです。その際には解熱剤を使いながら過ごすことになります。成分としては、アセトアミノフェンでもイブプロフェンでも問題ないですのでご自宅にご用意いただけると備えになると思います。

当初、イブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)は新型コロナウイルスに対しては危険なのではないか?と考えられた時期もありましたが、その後、問題はないという論文が複数でています。

※英文となりますが、こちらをご参照ください。

またWHOも新型コロナになった際にイブプロフェンなどのNSAIDsを飲んでも大丈夫という声明を出しています。

WHOの声明(英文)はこちら

解熱剤を使用しなくてもつらくないのであれば内服をしない、という選択肢はあります。ただ多くの場合は熱がでるとつらいものです。発熱のコントロールをした方がいい、しなくてもいいというのは複数研究がされていますが、はっきりとした結論は出ていません。適宜上記のお薬を服用していただければと思います。

自宅療養中の悪化について

「顔色が明らかに悪い」「唇が紫色になっている」「急に息苦しくなった」
「ぼんやりしている」といった状況になったらすぐに救急車を呼ぶ必要がある。

ワクチンを複数回打っている方が重症化する可能性は高くはありません。しかし、肺の病気、糖尿病、透析治療中、がんの治療中、免疫抑制剤を飲んでいるなどリスクとなる病気の方は悪化しやすいので注意が必要となります。

特に、下記の項目に該当する場合は毎日の健康観察連絡を待たずに、病院や保健所へ連絡や119番通報をしてください。

【表情・外見】
顔色が明らかに悪い
唇が紫色になっている
いつもと違う、様子がおかしい
【息苦しさ等】
息が荒くなった(呼吸数が多くなった 1分に20回を超える)
急に息苦しくなった
日常生活の中で少し動くと息があがる 胸の痛みがある
横になれない、座らないと息ができない
肩で息をしている ゼーゼーしている
パルスオキシメーターの数値 (SpO2) 90 以下
【意識障害等】
ぼんやりしている(反応が弱い)
もうろうとしている (返事がない)

楽しい年末年始には、良い体調管理が必要です。感染予防、自己検査、自宅療養の備えをどうぞよろしくお願いします。それでは、適切な体調管理をして、楽しい年末年始をお過ごしください。

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