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「紙パンツ」は「紙オムツ」じゃなかった 拒否感の突破は説得でなく同世代の口コミや共感

吸水パッドや尿漏れパッド、速乾性パンツ、超うす型の紙パンツなど多様な衛生用品や下着が簡単に手に入る時代になりましたが、布パンツから紙パンツへの切り替えに躊躇するシニア世代は少なくありません。紙パンツは介護を受ける人が使う「介護オムツ」というイメージが強く、利用を勧める家族も苦労をしています。トイレに関する悩みは、シニア世代の生活の質(QOL)を下げる大きな課題です。朝日新聞社なかまぁる編集部では、スムーズな移行のポイントについて試行錯誤する利用者の家族に聞いてみました。

ケース① 千葉県の80代と60代の親子

昔の介護経験のイメージを抜け出せない…「紙オムツ」という抵抗感

千葉県で一人暮らしをする母親(80代)の身の回りの世話をするため、長女(60代)は、パート勤務が休みの日に車で20分ほどの距離にある実家に週1回通っています。これとは別に、週5日、料理が得意な長女の夫が夕食を届けています。

母親は現在、ゆっくりですが洗濯をしたり、近くのスーパーに買い物に行ったりすることはでき、自立した生活をしています。

「母はいつまでも一人でがんばりたいと思っています。毎日、散歩をしたり、テレビ番組を見ながら足を動かしたりしていて、フレイル予防を意識しているようです」

それでも、加齢とともに足腰が弱ってきたため、介護保険では要支援2の認定を受けています。トイレに行く頻度も多くなってきました。外出するときにトイレ休憩が気になるようになった2022年、長女の勧めで代用として使っていた生理用ナプキンから軽失禁用の吸水パッドに変えました。長女はそのとき、「紙パンツも試供品を取り寄せられるよ」と声をかけたものの、「(紙パンツは)まだいいわ」と断られてしまいました。

トイレに行けない人が使うものと誤解している当事者世代

「母の頭の中では、祖母(母の親)が寝たきり状態になったときに『紙オムツ』を使っていたイメージが強いのでしょう。何でも自分でやりたいという気持ちがまだある母にとって『紙オムツ』を使うほど老いていないという抵抗感があるようです」

長女の悩みは、今後、吸水パッドから下着のようなうす型の紙パンツへの切り替えについて、どういう方法で母親に受け入れてもらえばいいのかという点です。

ケース② 宮城県の80代と50代の親子

CMや同世代の利用者の言葉がきっかけ…はき心地や温かさ知り普段使いへ

朝日新聞社なかまぁる編集部がインターネットで実施した「シニアのトイレ、排せつ介助、フレイルに関するアンケート」で、主に紙パンツの利用者の家族から声を集めたところ、約260件の回答が寄せられました。この中には、千葉県の長女のように「(紙パンツの使用を拒む)親の説得に苦労しています」という声が目立ちました。

一方、紙パンツに対する抵抗感を上手に乗り越えられた人もいます。

宮城県で一人暮らしをする母親(80代)の家で、身の回りの世話をするため、1週間の半分ほどを過ごしている次女(50代)によると、母親が紙パンツを使い始めたのは2021年秋でした。母親に紙パンツをはいても外出ができ、前向きな生活のために使うものだということを理解してもらえた瞬間でした。

「2年前、すべり症のため介護保険で要支援2の認定を受け、介護ベッドなどを利用していました。ベッドから起き上がるときに時間がかかるようになり、トイレまで5メートルほどですがたどり着くまでに少し漏れてしまうこともでてきました。母は吸水パッドを知らず、生理用品を使っていました」

共感からお試しを経て実感が大切

母親は、介護保険のデイサービスも「お試し」として1度行ってみたものの、プライドからか「私の行くところじゃない」と断ってしまったこともありました。次女は、母親の自尊心を傷つけず、本人が納得して紙パンツを利用し始める方法を考えました。

一つ目は、超うす型の紙パンツをはいたシニア世代の人が歩いている明るいCMが流れた際、母親に自然に声をかけました。紙パンツをはいて散歩するイメージを植え付けていきました。

「たまたま一緒にテレビ番組を見ていて、CMが流れたら『これ見て』、『こういうときに使うんだよ』と声をかけると、『ああ、そういうものなんだ』という反応でした。CMの後、『これってオムツでないの?』、『楽にはけないよね?』といった言葉で、押し付けにならないように丁寧に言葉を選んで会話をしていきました。オムツではなく、お出かけができて、自分ではき替えられるという点がポイントでした」

二つ目は、母親と同世代で紙パンツを使用していて「割と快適」と感じている近所の女性に、母親と会った際に「これいいよ」と勧めてくれるようにお願いしました。

「しばらくしてから、今度は母親が私に『紙パンツっていいんだってよ』と声をかけてきました。私はすぐ『じゃあ、ドラッグストアに行って見てみようか』と行動に移しました。さまざまなタイプが並んでいる棚を見た母は、『こういうものなのか』とやっと理解してくれたようでした」

三つ目は、最初は「お試し」として4種類ぐらいのタイプを購入して利用してみました。

「帰宅してすぐはいてみると、『何か、思っていたものと全然違うんだね』、『もっとゴワゴワしているものだと思っていた』といった感想を話していました。はいて生活をしていても『(綿の下着より)温かいんだね』、『ゆったりしていてはき心地いいんだよね』という感想で、母いわく『オムツじゃなかった』という気づきが大きかったのだと思います」

母親は「お試し」の日から紙パンツを使い始め、これまで使っていた綿の下着を捨ててしまったほどでした。

紙パンツをはいた実感が代理購入者の子世代にも大切

その後は、病院への通院といった少し時間がかかる際は、超うす型の紙パンツとパッドを併用していますが、トイレに自分で行くことは続けていることもあり、日常的には紙パンツをこれまでの下着のように使用しています。

「母の年代は、いろいろなことができなくなってきたと自覚し始める時期。家族にとって、トイレの失敗を回避できたのは良かったです。失敗を繰り返して投げやりになっていた時期もありましたので……」

紙パンツを利用して1年が過ぎ、母親から、代わりに購入している次女へ要望も出てきました。

「夏用の紙パンツを買ってきてよ」

超うす型の紙パンツを利用しているものの、外出時に利用する車のシートや自宅のソファで長い時間座っていると、汗ばむことがあり、気になるからでした。自宅では、布でくるんだ保冷剤をソファの上に置いてその上に座る工夫をしています。訴えを聞いた次女も、実際に同じ紙パンツをはいてみて、車で外出をして使用感を試してみました。

「私は腰回りが暑かったですね。親の代わりに購入する家族も一度使って生活してみることがとても大切なことだと分かりました」

デイサービスや入院きっかけに利用するケースも

紙パンツの利用のきっかけが、入院やデイサービスの利用という人も少なくありません。

沖縄県で長女(50代)夫婦と暮らす父親(90代)は、7~8年前、介護保険で要介護1の認定を受け、デイサービスに通うようになりました。そのとき、職員から紙パンツを持参するように言われたのがきっかけでした。

「すごく違和感があった」という父親は布のトランク型パンツをはき続けていました。母親(70代)が「みんなに臭いと言われるよ」と愚痴を言いながら尿漏れしたパンツやズボンを洗濯していたことを覚えています。

そんな父親が紙パンツを日常的に使い始めたのは、2年ほど前、転倒での入院がきっかけでした。病院では紙パンツを「リハビリパンツ」と呼び、ベッド上ではなくトイレでの排泄を促そうとして利用していました。自宅に戻ってきた後も、そのまま紙パンツをはき続けています。

「紙パンツをはき出すと、トイレに行かなくなると思っている人もいますが、フラフラしながらで手すりや杖を使ってトイレに行く努力をしています」

頻繁な洗濯による家族の負担増か 紙オムツ交換による金銭的負担増か

長女が紙パンツを買う際に重視している点は、1番目に吸収力、2番目に経済性です。

「シニアのトイレ、排せつ介助、フレイルに関するアンケート」でも、紙パンツを利用する際の課題の一つとして経済性、家計の負担を挙げる人が目立ちました。利用している家族に取材をしていくと、少量の失禁でもその都度替えたり、機能として持つ吸収量より早めに替えたりしている人が多くいました。沖縄の家族もその一人です。

「家にいるときは3回分、外出するときは5回分の吸収力があるものを使っていますが、少しでも汚れていたら気持ち悪いかなと思って、父には『変えたら』と声をかけています」

紙パンツは使い捨てのため、家計の負担を考えてしまう家族がいます。一方で、トイレの失敗や介助の頻度が多く、負担に感じている家族もいます。ここをどう考えるのか。使いたくても使えない人の中には、これらの課題が一つの「壁」になっているのかもしれません。

みなさんの感想を募集します

朝日新聞社のなかまぁる編集部では、この記事の感想やみなさんのトイレにまつわる悩み、紙パンツに関する課題等をお寄せください。今後の参考にさせていただきます。

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