かつてジョージ・ルーカスも制作。いまショートフィルムが熱い

『The Right Combination』のワンシーン

2019年10月に開催した「第1回なかまぁるShort Film Contest」で最優秀賞を獲得した、坂部敬史監督の『The Right Combination』。アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」のフェスティバル・ディレクターである東野正剛さんに、この作品の高評価のポイントと、ショートフィルムの魅力を伺いました。観るだけではなく、誰もが作り手になれるというショートフィルムを日本で広める活動をしている東野さんは、この作品をどのように観たのでしょうか。

『The Right Combination』は、アメリカが舞台のショートフィルム。物語は、ある家に忍び込んだ若い泥棒が、住人のおじいさんに見つかるところから始まります。ナイフを手に「金庫を開けろ」と脅す泥棒に対し、認知症であるおじいさんの返事は「息子か?」。噛み合わない二人の会話は、思いもよらない方向へと展開していきます。

『The Right Combination』のワンシーン

東野さんはこの作品の魅力を、「相手が認知症だと分かった泥棒がおじいさんを思いやるシーンで、博愛の精神を感じました。暗い世の中に希望が持てるような作品ですね」と言います。2人が食事をするシーンでは、パンを食べる泥棒を見つめるおじいさんの表情に、「ジーンとしました。本当の息子が幼かったころにも、同じ表情で見つめたのではないかと想像しました」と、一番印象に残ったそうです。

このように、シーンの前後を想像する余白がある構成は、ショートフィルムが得意とする表現方法。「ショートフィルムはもともと若手の映画監督が作家性を試す作品として定着したもの。制作費が多くなくても、監督が撮りたいことを表現できます。商業作品はスポンサーなどの意向を忖度することがありますが、ショートフィルムにはそれがない。すべて自分の好きなように撮れる。そして短いからこそ、凝縮されたストーリーが作られる結果、メッセージ性を高めやすいんですよ」

さらに、繰り返し視聴できることもショートフィルムの良さ。「短いもので1分ほど、長くても30分前後の上映時間だから、何度も観直すことができます」と東野さん。「私は『The Right Combination』を、1度目はストーリーに重点を置いて観ました。2度目は、人物の表情などのディテールや技術的な部分を。観るたびに新たな発見があります」

『The Right Combination』のワンシーン

この作品の舞台は、「おじいさんの家」という1つの建物の中。ロケ地が少なければ制作費も削減できるので、ショートフィルムには今回のように限られた場所で撮影する作品が多いそう。世界的人気のSF映画『スターウォーズ』のジョージ・ルーカス監督も、学生のころに制作したショートフィルムが映画監督としての出発点だったとのこと。「お金がなくても低予算で作れます。今はデジタルで編集できるし、簡単に高画質の4Kで撮れるので誰でも作り手になりえる時代です」と東野さんはショートフィルム制作の手軽さを強調します。

最後に、おすすめの視聴法を東野さんに聞きました。「今はインターネットが普及し、スマートフォンやタブレットなどでも動画が観られるようになりました。ショートフィルムなら通勤、通学、旅行の合間にも気軽に視聴できます。友だちや同僚と一緒に作品を観たり、作品について語り合ったりする楽しみ方もあるでしょう。作ることも観ることも、どちらもすぐに始められるのがショートフィルムの良さですね」

The Right Combination』は、なかまぁるウェブシアターで公開中です。このほか、小野光洋監督の『英爺(えいじい)』や川端真央監督の『介護しよう。MV feat.おばあちゃん』などの受賞作品も2020年10月6日まで視聴できます。ぜひご覧ください。

東野正剛(とうの・せいごう)
1968年生まれ。カリフォルニア州ペッパーダイン大学でジャーナリズムを専攻。卒業後、渡仏。3年間、クレルモン・フェラン市に滞在。以後、ロサンゼルスでショートフィルムの制作、ハリウッド映画の製作に携わる。2000年から、毎年6月に原宿表参道で開催される「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」事務局長。現在は同映画祭のフェスティバル・ディレクター。

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