便がなかなか出ない…排便を楽にする工夫は?認知症ケアの知恵

トイレのイメージ
認知症の人を介護する家族やケアマネジャー、訪問看護師、医師には、ケアについての多様な経験があります。そんな経験が生かされたケアの知恵(コツ)をお伝えします。

Q.便がなかなか出なくなっている。食事や薬など排便を楽にする工夫は?

A.腸の動きをよくするための工夫を、いろいろな角度から試してみましょう

  • 便意の訴えを見逃さない
  • 家族が便秘に気づくことが大切

高齢になると腸の動きや腹圧が弱まっていきむ力が低下するので、便秘になりやすくなります。また、ストレスや薬の副作用も便秘の原因になります。便秘によって認知症のBPSD ※が目立ってきたり、精神状態が不安定になったりするなど、心身の異変につながるケースも少なくありません。

また、認知症の人は自分で便秘による不快感を訴えることができませんから、周囲の人が気づく必要があります。最近、排便がないようだと気づいたら、おなかを触ってみましょう。硬くなっていれば便秘であることはすぐにわかります。体重の変化も判断の目安になります。

※ BPSD……Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia の略で、認知症に伴う行動・心的症状をいいます。徘徊や興奮などの行動面の症状(behavioral symptoms)、不眠や知覚などの精神面の症状(psychological symptoms)に分けられます。

家族が便秘に気づくポイント

  • おなかを触ると硬い
  • トイレに行く回数が少ない
  • 体重が増えている
  • トイレからなかなか出てこない

便秘と同時に嘔吐や激しい腹痛がある場合は、何らかの病気の可能性があるので、すぐに受診しましょう。

  • 食事・運動・生活習慣を見直してみる

便秘解消のポイントは、食事と運動と生活習慣です。薬を使いたい場合は、かかりつけ医に、認知症の程度やほかの疾患の状態などから判断してもらうようにしましょう。市販薬の使用はお勧めできません。

◆食事

海藻や野菜など、食物繊維の多い食品も取り入れるようにしましょう。米などの穀類に含まれている不溶性食物繊維は水に溶けないので、水分を吸収してふくらみ、便の排泄を促進します。精米していない玄米やブラウンパンだと、食べる量は同じでも確実に食物繊維量を増やすことができます(食欲がない場合は避けたほうがいいでしょう)。

水分をとると便が柔らかくなるため、水分摂取は便秘解消の大切なポイントです。夜中にトイレに起きるのを嫌がって水分をとることを控える高齢者もいますが、脱水を起こしやすいうえ、便秘も解消しません。具だくさんの汁物やおじやだと、いろいろな栄養をとれると同時に水分もとることができます。

◆運動

運動不足で活動量が下がると、腸の動きが鈍ったり、食事量が低下したりして、便秘になりやすくなります。しかし、運動能力が低下している人に、無理に体を動かすことを強制はできません。歩ける人は歩き、歩けない人は温かい手でおなかをさするマッサージをします。理学療法士による手足の関節運動も運動の効果があります。

◆生活習慣

毎日、規則正しく同じ時間に食事をとるだけで、胃腸の動きがよくなります。一定の生活リズムを維持するようにしましょう。その人が一日のうちいつ排便をしていたのか、家族が知っておくことも必要です。これまで習慣になっていた時間にトイレに連れていきましょう。

こんな意見も

入浴時、温かいシャワーでおなかや肛門を刺激すると出ますよ。肛門の周囲が洗えるシャワーベンチが便利です。デイサービスの職員と便秘情報を共有し、排泄ケアをしてもらいましょう。(家族 男性)
高齢になるとのどの渇きを自覚しにくくなるので、水分摂取量が減ってしまいがちです。本人のそばに常に水のペットボトルを置いておくようにしましょう。訪問看護師は摘便や浣腸など、排泄ケアの高度なスキルをもっているので、相談してください。(看護師)

この記事は、『認知症の人と家族のための「地元で暮らす」ガイドブックQ&A』から許可を得て転載しました。

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〈つぎを読む〉認知症の人にイライラしてしまう…どうすればいい?認知症ケアの知恵

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