進行に応じて変化する症状に臨機応変に対処しよう

一人ひとりの背景を考慮して対応する

認知症は、進行の程度により表れる症状は変わる。本人の性格や生活環境など、さまざまな要素にも影響されるため、一人ひとりの背景を考慮して、対応していくことが大切だ。

「もの忘れ」のイメージが強い認知症だが、実は表れてくる症状はさまざまだ。「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」があり、BPSDでは、徘徊や抑うつ、攻撃的な言動、もの盗られ妄想、嫉妬妄想、異食(食品以外のものを口にする)、不潔行為などの症状が表れる。

中核症状とBPSDの違いについて、『よくわかる認知症Q&A』(中央法規)などの著書がある国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の遠藤英俊医師(長寿医療研修センター長)は、こう解説する。

「中核症状は脳の認知機能をつかさどる部分がダメージを受けることで生じるため、認知症になると誰にでも表れます。一方、BPSDは、ご本人がもともと持っている性格、取り巻く環境や人間関係などが関係していると考えられていて、すべての方に同じような症状が出るわけではありません。BPSDがほとんど出ない方もいます」

認知症もほかの病気と同様、進行の程度によって症状が変わってくる。在宅医療を中心に認知症診療に関わる、たかせクリニック(東京都大田区)理事長の髙瀬義昌医師は、「症状の経過は大きく3つの相に分かれる」と話す。

「まず中核症状によるもので、半年から1年かけて徐々に進行していきます。2つめはBPSDによる進行。3カ月ぐらいの周期で出たり消えたりします。そして3つめは「せん妄」によるもの。せん妄とは急性の意識障害で、不随意運動(意図しないけいれんに似た動きなど)の症状のほか、集中力の低下、幻覚や妄想などの症状も起こります。ご家族は「病気が急に悪化した」と思いがちですが、基本的に中核症状は急には進行しません。そのようなときは、まずはせん妄を疑うべきでしょう」

アルツハイマー型認知症の経過(東京都福祉保健局資料を改変)
アルツハイマー型認知症の経過
(東京都福祉保健局資料を改変)

認知症は図のようなパターンで進行していくが、その時々の症状の出方も一様ではなく、「個性」があるという。「個性をつかむことが、認知症の対応のポイントになる」と話すのは、元ケアマネジャーの柴山志穂美さん(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)だ。

「個性を理解しようとしないで、教科書どおりにケアをしようとすると、うまくいかなくなることが多いんです。それが介護をされるご家族の精神的、肉体的な負担につながってしまいかねません」

宝探しのように、個性をつかむ

では、この個性をどうつかめばいいのか。柴山さんはその作業を「宝探し」にたとえる。

「宝とは、ご本人がもともと好きだったことやもの、すてきな部分を言います。この宝を見つけて、ご家族が共有すれば、症状への対応の負担が軽減されますし、自然と心地よい接し方、対応ができるようになります。見方を変えると、その宝ではないことをされると、不快に思うのです」

こうした宝探しの作業は、認知症の早期から始めたほうがいい。コミュニケーションが問題なくできたり、自分の気持ちを伝えられたりするときならば、自分が「快」と思うことを適切に表現できるからだ。介護する家族も、この時期に積極的に「何が好きか」「何が嫌いか」「何をしたいか」「何をしたくないか」を、本人から引き出す時間を持っておいたほうがいいという。

「たとえば、人と会うことが好きだった方が外出を嫌がるようになった場合、それが『外出が面倒になった』のか、『外出して嫌な思いをした経験がある』のか、『着る洋服が選べなくなって外に出なくなった』のか、なにか理由があると思います」(柴山さん)

こうした理由に思い至らず、「散歩は気分転換になるし、外出が好きだったから」と、家族が無理にすすめれば、良かれと思ってしたことでも、結果的にストレスを与えてしまうかもしれない。

〈つぎを読む〉夜中の徘徊、入浴拒否のワケを知ろう

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