咀嚼チェックと認知症予防

認知症と深くかかわる口の健康。なかでも「よくかむ」ことには大きな注目が集まっています。咀嚼の専門家である前出の志賀歯科医師はこう説明します。

「咀嚼とは、単に歯で『かむ』というだけのことではありません。食べ物をかみ砕き、すりつぶし、だ液と混ぜ合わせてのみ込める状態までまとめる動作です。歯、舌、あごなどが無意識のうちに協調し合うからこそできる複雑な動きなのです」

しっかりかむために必要なものといえば、歯です。「8020運動」の成果で80歳でも歯が20本以上残っている人は半数を超えましたが、「歯が残っているからといって、よくかめるとは限らないのです」と、志賀歯科医師は言います。

「日本人は歯周病が進んでも歯を残したがる傾向がありますが、グラグラした歯では十分な咀嚼はできません。総入れ歯にしている人のほうが、かむ力が強い場合もあります。歯の数より大切なのは、本当にかめているかどうかなのです」

また、抜歯後に義歯を入れることを考えても、歯周病で抜かざるを得なくなった歯を残しておくのはおすすめできないそうです。

「抜くべき歯を残していると、その周囲の歯槽骨(歯を支えるあごの骨)がやせてしまうので、入れ歯やインプラントの装着が難しくなる可能性もあるのです」

咀嚼能力検査でかめているか判断を

自分が「本当にかめているか」は気づきにくいものですが、サインはあります(下の注意ポイント参照)。ひとつひとつは些細なことに感じられますが、これらが咀嚼力低下の始まりなのです。

あなたは大丈夫?日常生活で気づく咀嚼力の低下注意ポイント

  • 生野菜やおひたしなどが食べにくいと感じる
  • 肉や野菜はこまかくしてから口に入れている
  • 「この食べ物は硬い」と感じることが増えた
  • パンやサンドイッチを手でちぎって食べている
  • 食事の時間が以前より長くかかる
  • 昔より軟らかめのご飯を好むようになった
  • あまりかまずに丸のみすることがある
  • 最近やせてきた

客観的に自分の咀嚼力を知りたいなら、歯科医院で「咀嚼能力検査」をしてもらうことも可能です。検査は簡単なもので、グルコース(糖の一種)を含んだグミゼリーを20秒間かみ続けたあと、10ミリリットルの水を口にふくんで吐き出します。その水の中に含まれるグルコースの量によって、かむ力が測定できるのです。

「咀嚼力を調べてみると、かみ合わせが正しく調整されている場合、高齢でも入れ歯でも、うまくかめていることが多いものです」(志賀歯科医師)

〈続きをみる〉正しい姿勢と食べる喜びが脳の血流を増やす

あわせて読みたい

この記事をシェアする