認知症の非薬物療法 本人が好きなことを、仲間とともに

薬を使わずに認知症を改善 本人が好きなものを選ぼう

薬を使った治療は、アルツハイマー型認知症はもちろん、ほかの認知症にとっても有効である場合が多いのですが、一定期間をすぎると薬の効果は落ちてきます。認知機能を少しでも高いままで保つためのもうひとつの方法、それが「非薬物療法」です。その名のとおり、薬を使わない治療法の総称です。

全身や手先の運動、音楽を聴く、絵を描く、過去のできごとを思い出す、工作するなど、実践内容はさまざまです。認知症の治療を実施している施設の多くは、これらの非薬物療法を治療の一環として取り入れているのです。

なぜこのような行動が治療になるのでしょう。それは、人と話したり、からだを動かしたり、何かを思い出そうとするとき、脳が活性化されるからです。とくに、知的な活動をつかさどり、脳の指揮系統にかかわる前頭前野の働きが向上することで、脳全体の働きが活発になります。それが認知症の進行を遅らせ、症状を改善させるのではと考えられています。

しかし、その有効性は科学的には証明されていません。

イヤイヤやるのでは逆効果になりかねない

「いわゆる『○○療法』をやったとしても、施設や担当者によってやり方もレベルも違います。また、入院中には続けられていても、自宅で継続できているかというと難しい。もし続けていたとしても、やり方を勝手に変えてしまうこともあり、効果が証明しにくいのです」(福井医師)

それでも、非薬物療法を試すこと自体は決して悪いことではないと福井医師は言います。

「非薬物療法のほとんどは、脳の前頭前野の働きを高めるための活動です。前頭前野の働きがよくなると、意欲が出るし、興味の範囲も広がってきます。さらに、音楽療法や芸術療法、アロマセラピーなどは精神を安定させる効果もあります」

ただし、「治療だから」と、嫌いなこと、つまらないと感じることをイヤイヤやることはおすすめできないと言います。

「嫌いなことは長続きしないし、失敗することも多い。失敗すると自信もやる気も失い、逆効果になりかねません」

福井医師は、いわゆる「脳トレ」にはこだわらなくていいと言います。たとえば旅行好きなら、旅行を計画することから参加してもらうこと、お芝居や映画が好きなら、見終わったあとで仲間と感想を話し合うこと、それらがすべて脳トレになるのです。

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