認知症の薬物療法

<*内容は「すべてがわかる認知症2017」に掲載された時点の情報です>

アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果が期待

脳の中で情報伝達物質の役割を果たす神経伝達物質のひとつに、アセチルコリンがあります。記憶や学習にかかわるアセチルコリンが減少することが、アルツハイマー型認知症に大きくかかわっているとされます。このアセチルコリンの減少をくい止める薬が、「コリンエステラーゼ阻害薬」です。

1999年に「抗認知症薬」として認可されたアリセプト(一般名・ドネペジル塩酸塩)がその最初の薬です。認知症のどの時期でも効果が期待でき、発売から10年たったことで後発薬(ジェネリック)も使用可能に。アリセプトはレビー小体型でも使用が認められています。

長年アリセプト一剤の独壇場だった抗認知症薬ですが、2011年にレミニールとリバスタッチパッチが新たに加わりました。同じコリンエステラーゼ阻害薬ですが、それぞれ異なる特性をもちます。コリンエステラーゼ阻害薬どうしの併用はできませんが、一剤ずつ変更は可能。

メマリーは作用するしくみが異なります。アルツハイマー型認知症によって、過剰に増加した脳内のグルタミン酸刺激を抑えて認知機能を改善します。コリンエステラーゼ阻害薬との併用も可能です。

どの薬も、少量からスタートして1〜2週間様子をみます。効果を確認し、副作用に配慮しながら段階的に増量し、十分な効果が出たところで、その量を定量として服用します。

薬の効き方の個人差で医師がさじ加減

中枢神経に作用する薬であるだけに、処方には繊細さと経験が求められます。福井医師は最初に使用する薬を選ぶとき、慎重に患者の症状を確認するといいます。

「アリセプトは意欲が出ない人など陰性症状を主体とする人に、レミニールは興奮しやすいなど陽性症状が出やすい人に効果があると感じます。リバスタッチパッチは貼り薬なので、嚥えん下げ障害がある人、貼ってくれる家族のいる人に処方します」(福井医師)

副作用を恐れて中途半端な量を使い続けるケースも少なくありませんが、「それではもったいない」と福井医師。

「必要十分な量でないと、満足な効果は期待できません。副作用が強くなったら再び量を調節したり、薬の種類を変えたりするなど、こまめな対応が大事です」

認知症に使われる薬

※(2017年掲載時点)

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ドネぺジル塩酸塩には5~3割値段が安い後発薬品(ジェネリック)がある。
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Q.薬をちゃんと飲めるかどうか心配です

A.服薬できているかどうか毎日確認できるのが理想です

理想を言えば、薬は介護者が管理して飲ませたいものです。「1日1回しか顔を出せない」という場合は、1日1回服用の薬に変更するといいでしょう。ある程度は介護者の都合に合わせてかまいません。一人の場合には、飲み忘れないように毎日アラームを鳴らす方法もあります。

嚥下機能が低下して飲めないのであれば、のみ込みやすいゼリー剤や、少量の唾液で溶ける口腔内崩壊錠にし、使い勝手を試してみましょう。

Q.血管性認知症や前頭側頭型認知症に使える薬は?

A.血管性認知症には脳血管障害の改善薬を使用

血管性認知症の場合、次の発作を防ぐことが重要です。脳血管障害の治療薬である抗血小板薬や脳代謝改善薬などが使われます。アルツハイマー病を合併している場合、コリンエステラーゼ阻害薬を用いることも。

前頭側頭型認知症に適した薬は現在ありません。行動障害の改善のため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やトラゾドンなどの抗うつ薬を投与することがありますが根本的治療にはなっていません。

Q.貼り薬は便利そうですが、注意すべきことは?

A.勝手にはいでしまえるので一人暮らしには不向きかも

嚥下が苦手な人も多いので、貼り薬は便利に見えます。でも、飲み薬とは違い、貼り薬は本人が不快になれば取ってしまうこともできるのです。前日のパッチが残ったままもう1枚貼ったり、1日に何枚も貼ったりすることも。一人暮らしで介助が入らない場合には、飲み薬のほうがいい場合もあります。皮膚がかぶれたり、かゆみがでたりしやすい人もいるので、毎回貼る位置をずらすように心がけましょう。

Q.認知症でも入院治療が効果的なのですか?

A.薬や合併症の管理のために有効です

薬物治療を進めるうえで、医師がこまやかに反応を見ながら薬を増減でき、副作用のチェックもそのつどできるよさがあります。また、合併症がある場合には、あわせてその治療や管理も可能です。また、BPSDが強く出ている場合には、原因となる環境から本人を遠ざけることができます。

「入院させるのは家族の手抜き」と思い込む人もいますが、まず何より本人のため、治療効果を上げるためと考えてください。

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