認知症とは? 病気ではなく症状です

病気などが原因で脳が変性し今までの生活が送れなくなること

「認知症」は、病気の名前ではありません。たとえるなら腹痛や頭痛のようなもので、さまざまな病気が原因で起きる「症状」です。その症状はひとつではなく、「もの忘れがひどい(記憶障害)」「今日が何日かわからない(見当識障害)」といったいくつもの症状の集合体です。

原因となる病気は、アルツハイマー病や、脳卒中、ピック病など数多くあり、すべて数えると70種類以上にもなると言われています。そして、症状が多少表れていても、生活に支障がない範囲であれば、認知症とは診断されません。

つまり認知症とは、「脳の病気などによって認知機能が低下してさまざまな症状が表れ、生活に支障が出ている状態」のことをさすのです。

老化だけでは説明できないもの忘れ

では、老化による「もの忘れ」と認知症の違いはどこにあるのでしょうか。

一般的な老化の場合、「食事をした」「旅行に行った」ということは覚えていても、「何を食べたか」「どこを観光したか」を忘れることはあります。それでも「京都でお茶屋さんに行ったよね」と言われると、「ああ、そうだった」と思い出すことも多いものです。しかし認知症にともなうもの忘れの場合、食事をしたこと、旅行に行ったことそのものの記憶がなくなり、忘れた自覚もなくなってしまいます。

記憶とは①覚える、②記憶を保持する、③記憶を呼び起こす、という3つの機能によって成り立っていますが、老化すると③の呼び起こす力が衰えます。しかし、認知症の場合は①②③すべてに問題が起きてくるのです。

このような不具合が、脳のもつさまざまな認知機能(理解、判断、知覚など)の面で起こってくるのが認知症です。

正常な脳とアルツハイマー型認知症の脳の違い
アルツハイマー型認知症の脳には、黒いすき間のような溝があき、脳室が大きくなっていることがわかる。記憶をつかさどる海馬を含む側頭葉の萎縮も目立つ(提供/北村医師)

認知症は4人に1人? 65歳以上の日本人

厚生労働省の調査によると、2012年の段階で日本の65歳以上の認知症患者数は約462万人。認知症の予備軍であるMCI(軽度認知障害)も含めると4人に1人になるとされます。しかもその数は年々増加しているといわれます。

「加齢は認知症の最大の原因です。年齢が上がれば、だれしも認知症になる可能性はあるということです」

というのは、成仁会長田病院神経内科部長の北村伸医師です。

「日本の社会が高齢化すれば、認知症患者が増えるのも当然です。さらに、認知症に関する情報が広がったこともあり、もの忘れが気になった段階で受診したり、検査を受けたりする人も増えています。そのせいで、埋もれていた認知症患者も表面化しているのです」

北村医師の実感として、本人が不安をかかえて来院するケースが増えてきているようです。
「認知症も他の病気と同じく、本人がいちばん先に気がつくものです。認めたくない気持ちは当然ですが、『なんだかおかしい』という段階で診察を受け、治療を開始することで進行は確実に遅らせることができます」

認知症の原因ははっきりわかっていませんが、遺伝傾向はあるので、親が認知症であれば注意が必要です。ほかにも、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、過度の飲酒、運動不足などでリスクが高まることも知られています。

■認知症高齢者の割合

65歳以上の高齢者  3079万人

▼認知症高齢者 約462万人
1990年代に予測されていた数をはるかに上回り、高齢者の7人に1人が認知症と推計されている。2025年には700万人まで増加するとみられている。

▼MCIの高齢者 約400万人
認知症予備軍のMCI(軽度認知障害)は約400万人と推計されている。この人たちがすべて認知症に移行するわけではなく、4、5年で半数程度とみられている。

▼健常者 約2217万人

〈つぎを読む〉軽度認知障害(MCI)とは?

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