歩き方で変わる認知症のリスク

健康のために、誰もがお金をかけずに始められるウォーキング。特に「速歩」は認知症のリスク減少やうつ、生活習慣病の予防など、驚くべき効果があることが最近の研究からわかってきました。健康寿命を延ばす歩き方のポイントを紹介します。

認知症の発症は歩行の状態と関連

長野県松本市のアイさん(仮名・75歳)の日課は、夜の「速歩」。近所を30分かけてスタスタと歩きます。速歩を始めたのは今から13年ほど前で、市の健康診断で「問題アリ」と指摘されたことがきっかけ。速歩を始め、毎日の食事を記録するようになったら、体重は当時より8キロ落ち、健康診断の結果も「問題ナシ」となりました。

「実は1月に雪道でスッテンって転倒しちゃってね(笑)。念のためにお医者さんに診てもらったけれど、大丈夫でした」

アイさんはそう言って笑いますが、高齢者にとって転倒は骨折や寝たきり、ひいては認知症などにつながる重大なアクシデントです。それを軽く笑い飛ばすとは、スーパー高齢者でしかありません。

歩行の状態が認知症の発症と関連

世界的に見てトップレベルの長寿国である日本。ですが、一方で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示す「健康寿命」をみると、男性が71.19歳、女性が74.21歳(2013年)で、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年もあります。

つまり、約10年もの間、何らかの介護支援が必要になるというわけです。ピンピンコロリを実現するためには、できるだけこの差を縮めたいところですがーー。

「健康寿命を延ばす方法が、近年の研究で次々と明らかになってきました」

こう話すのは、東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)研究員の谷口優さんです。気になるその方法とは、〝歩行〞。実際、歩行と健康寿命の関係を示した研究結果が国内外で報告され、エビデンス(科学的根拠)が蓄積されてきたといいます。その一つが、17年1月に海外の科学雑誌に掲載された最新研究で、「歩行の状態が将来の認知症の発症リスクと関連する」という報告。谷口さんらがおこなったものです。

この研究は、群馬県内で毎年実施されている住民の特定健診の受診者が対象。02~14年に受診した高齢者のうち、認知症でない1686人(のべ6509人)について最大歩行速度などの変化と、認知症の発症リスクとの関連を調べました。研究期間中に認知症を発症した人は、対象者の11.6%にあたる196人。受診した高齢者を、「歩く速度が速く保たれる群」「中程度の歩行の速さの群」「歩行速度がどんどん遅くなる群」に分類したところ、速く保たれる群を「1」とすると、中程度の速さの群では1.53倍、どんどん遅くなる群では2.05倍認知症の発症リスクが高くなっていました。

また、歩行速度で重要なのは「歩調(歩くテンポ)」より「歩幅」だと判明。今回の研究でも「歩幅がどんどん狭くなる群」のほうが「歩幅が広いままで保たれる群」より認知症の発症リスクが2.8倍高くなる傾向にありました。

こころがける⑤本
認知症の発症リスクと歩行速度の関係

〈つぎを読む〉認知症になりやすい人は歩行機能が衰えている?

あわせて読みたい

この記事をシェアする