5カ月で10歳若返る「インターバル速歩」とは

歩行と関連があるのは認知症に限りません。速歩をすると血糖値や血圧、コレステロール値などが下がるというエビデンスも出ています。なかでも「インターバル速歩」という方法では、5カ月で10歳以上若返るほどの成果が得られているとのこと。

生活習慣病の指標が5カ月で大きく改善

この速歩の効果を調べる研究がおこなわれたのは、長野県松本市。同市では信州大学が参画して高齢者の運動教室「熟年体育大学」を開催しています。参加者(男性198人、女性468人)を体力別に「低」「中」「高」に分け、インターバル速歩を続けてもらいました。

結果を開始前と5カ月後で比べたところ、5カ月後のほうが体力がつき、生活習慣病指標が大きく改善していました。しかも体力が「低」の群のほうで改善度が高かったのです。なお、生活習慣病指標とは血圧、空腹時血糖値、BMI(ボディー・マス・インデックス:肥満度を示す指標)、中性脂肪(またはHDLコレステロール)の4項目の診断基準をもとに、基準値を超えた(HDLコレステロールは基準値を下回った)項目について1点ずつ加算したもので、すべて該当すれば4点になります。点数が低いほど健康、高いほど不健康という指標です。

さらに熟年体育大学の参加者約4千人分のデータを用いた別の研究では、5カ月間で持久力(心肺機能)や筋力が最大で20%アップし、生活習慣病の症状も20%改善。老年期うつやがんなどの予防効果も期待できたといいます。

通常は、30歳以降は加齢によって10歳で5~10%ずつ体力が低下します。こうした研究から、速歩で「10歳以上若返る」ことが示されたのです。

調査研究にあたった信州大学大学院医学系研究科教授の能勢博さんは、「健診で『問題アリ』と指摘されたら、まずはインターバル速歩を試してほしい」と呼びかけます。

インターバル速歩が、なぜ、生活習慣病やうつ、がんの予防効果をもたらすのでしょう。「速歩は筋肉をつくることに役立つ。筋肉をつけることがさまざまな病気予防のカギになるんです」と能勢さんは言います。

効果を理解するうえで重要になるのは、細胞内に存在するミトコンドリアで、08年に有名な科学雑誌「ネイチャー」に載っていた理論に基づきます。

ミトコンドリアを速歩で回復させる

「ミトコンドリアは車のエンジンのようなもの。車がガソリンを燃やして走るように、ミトコンドリアはブドウ糖や脂肪酸を燃やして生命エネルギーを作り出しています。車も新しいうちは完全燃焼しますが、古くなると不完全燃焼を起こしてたくさんの排ガスを出すようになる。ミトコンドリアも同じで、古くなると機能が低下してより多くの活性酸素を排出するようになります」(能勢さん)

この活性酸素によるダメージが脳の神経細胞に及ぶと認知症や高齢者うつになり、脂肪細胞に及ぶとインスリンの効きが悪くなるため糖尿病になり、血液中にいる免疫細胞に及ぶと動脈硬化が起こって心臓病や脳卒中になり、がんを抑制する遺伝子に及ぶとがんがつくられる……というしくみです。「この理論でいうと、現在、生活習慣病治療で使われている降圧薬や血糖降下薬は、すべて症状に対する対症療法でしかなく、根本的な治療とはいえません。大事なのは、これらの病気に共通するミトコンドリアの機能低下を抑えることだと考えられます」(同)

ミトコンドリアの機能を上げるには「筋肉をつけること」が大事で、簡単でお金をかけずにできる方法が速歩というわけです。

〈つぎを読む〉認知症を防ぐウォーキングは「1日5000歩、速歩き7.5分以上」

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