認知症予防に最適な睡眠時間は?

睡眠には日中の疲れを回復させるだけではなく、脳の機能を維持するための重要な役割があります。

さらに最近は、適切な睡眠の量や質が認知症予防に効果があることがわかってきました。

脳をメンテナンスする役割がある睡眠

「国民健康・栄養調査(平成27年、厚生労働省)」によると、一日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、約4割。日本人の睡眠時間は短く、その割合はこの10年で増加しています。また、この調査では睡眠時間が6時間未満の群は、6時間以上の群に比べて明らかに入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒を訴える人が多く、睡眠の質が悪いこともわかりました。

最近の研究では、睡眠の量や質は認知症と深く関わっていることが明らかになってきています。

認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症の人の脳内には、「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質が沈着していて、この物質が神経細胞を死滅させることで、発症すると考えられています。

しかし本来、脳には、アミロイドβのような有害な物質を除去して脳機能を保つ働きがあります。その役割を担っているのが、睡眠です。2013年にアメリカのワシントン大学の研究班が「JAMA Neurology」誌に発表した論文によると、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などがある睡眠が不安定な人は、睡眠が安定している人に比べてアミロイドβの蓄積が5.6倍ということがわかりました。また、実験的に24時間覚醒を続けると、通常の睡眠をとった場合と比べてアミロイドβが増加したといった研究結果もあります。

このアミロイドβの蓄積は、認知症発症の20年以上前から始まっているといわれています。久留米大学病院精神神経科教授の内村直尚医師はこう話します。

「人は眠ることで脳内の老廃物を排出し、脳のメンテナンスをしています。慢性的な睡眠不足で老廃物が長期間にわたって蓄積すると、脳の機能が低下し、認知症を発症すると考えられるのです」

さらに、さまざまな研究から睡眠不足は記憶・学習能力を低下させ、糖尿病や高血圧、うつ病になるリスクを高めることがわかっています。これらの病気は、認知症発症のリスクでもあります。

こうしたことから、若いうちから睡眠時間を十分に確保し、質のいい睡眠をとることは、認知症予防につながると考えられます。

では、認知症予防のためには、毎日どれくらいの睡眠をとればいいのでしょうか? 睡眠時間を「6時間以下」「7時間」「8時間以上」の3つのグループに分けて、認知症発症リスクを調べた研究では、7時間の人に比べて6時間以下や8時間以上の人はリスクが高まるという結果が出ています。

「睡眠にはさまざまな役割がありますが、それを果たすには6〜7時間の睡眠が必要でしょう」(内村医師)

とはいえ、高齢になるほど不眠に悩む人は増えていきます。

「40歳を過ぎると、加齢現象で『眠る力』は衰え、睡眠時間は短く、眠りは浅くなります。つまり高齢になるほど自分で眠る力を養うことが必要なのです」(内村医師)

〈つぎを読む〉毎日30分の昼寝で「こまぎれ睡眠」を防ぐ

あわせて読みたい

この記事をシェアする